1997年、香港返還時に中国が約束した「民主選挙」は風前のともしびだ。当時の約束では、2017年の香港特別行政区の行政長官選挙で普通選挙を実施することになっていた。

 だが中国全人代常務委員会の先月末の発表では、誰でも投票できる普通選挙は認めるものの、立候補者は「指名委員会」の過半数の支持を得た2〜3人に絞られる。委員会の多くは親中派の香港財界人で占められ、民主派の立候補は事実上不可能だ。

 民主派団体「オキュパイ・セントラル(中環占拠)」はこれに反発し数千人規模の抗議デモを行った。民主選挙が認められなければ、金融街を人で埋め尽くす抗議行動を行うと宣言した。

 返還以来「一国二制度」を尊重してきた中国政府が露骨に香港に介入した背景には、中国の成長とともに金融ハブ・香港の存在意義が薄れ、これまでのように配慮する必要がなくなったという現実がある。

 中国のGDPに占める香港の比率は返還時の15.6%から2.9%へと縮小し、中国共産党は公然と、金融ハブ機能を上海に集約する意向を示している。

 大陸も香港には手を出さない、という希望は幻想だったのか。

[2014.9.16号掲載]

マット・スキヤベンザ