ミニバンはかっこ悪い?

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休日は家族でミニバンに乗って大型ショッピングモールに出かける――地方都市でよく見る光景だ。日本で人気がある自動車のタイプはセダンから「ミニバン」に変わり、実用性が何より重視されている。

だが、ミニバンの利用者が増えたことに自動車メーカーの元デザイナーが「ミニバンばかりの自動車の風景は美しくないし、乗っている人もかっこよく見えない」と苦言を呈し、ネット上で物議を醸している。

「お父さんが子どもたちの運転手」

注目されているのは2014年9月12日に公開された、日経ビジネスオンラインの連載「『ダサい社長』が日本をつぶす!」に登場したカー&プロダクトデザイナー・和田智さんのインタビュー記事だ。和田さんは日産自動車とアウディを経て、現在デザインスタジオ「SWdesign 」の代表取締役を務めている。記事では日本とドイツの両方でデザイナーを経験した立場から、日本のデザインの問題点を語っている。

連載2回目で日本の売れ筋の車種が「ミニバン」ばかりという話題になったときに、和田さんはこう訴えた。

「僕は言いたいんです。『日本のみなさん、ミニバン乗るの、やめませんか?』」

その理由について和田さんは、近所の少年野球の子どもらが父親の運転するミニバンでグラウンドに送られてくる様子を見て、「お父さんが子どもたちの運転手に成り下がったように見えた」という。

そこには幼少時に自身が父親の運転するスポーツカー「べレットGT」を目にしたときのような憧れがなく、「今のミニバンには、『かっこいい』という原風景を子どもたちに与える力はない」としている。

さらに、車を公共的な存在でもある「動く建築」として捉え、街の風景を構成する一部と考えると、ミニバンばかりが走る都市は美しくないと言い、

「クルマに乗っている人間の意思が見えない。多様性がない。なにより幼稚に見える。ミニバンって、結局『子どもが主人公』の車種だったりしますから。セダンが走っていたりクーペが走っている町並みのほうが美しい。多様性がある。なによりオトナの社会に見える」

などとこき下ろした。

「お前のノスタルジーを他人に押し付けたらアカンよ」

これらの発言がミニバン利用者らの怒りを買ってしまった。ツイッターなどネットには、

「お前のノスタルジーを他人に押し付けたらアカンよ」
「ユーザーのニーズに真摯に寄り添ってるメーカーに何言ってんの??」
「地方住まいで子供2人(以上)、買い物は週末に大型スーパーやモールでまとめ買いというスタイルでは、ミニバンしか選択肢がない」

といった批判が大量に書き込まれた。

記事中では、アウディが整然としたミュンヘンの街並みに合わせてデザインしている一方で、日本のデザイナーは「クルマのデザインの公共性、歴史性を意識している人って皆無に等しい」「街や社会から遊離したデザインになってしまう」と問題点を指摘していたが、最終的にミニバンを購入する消費者に責任を求めているように読まれたのが、反発を招いた原因のようだ。

「『ミニバンに乗るの、やめませんか?』と消費者に言うんじゃなくで『かっこ悪いミニバンつくるの、やめませんか?」とメーカーに言ったらいい』」

などの声が出ている。

ちょっとした「炎上」状態を受けて和田さんは

「日経ビジネス記事を読んでいただきありがとうございます。ご批判も真摯に受け止め精進していきたいと思います。よろしくお願いします」

とツイートした。