日本は堂安ら技術に長けたタレントを抱えながらも、決定的な仕事ができる飛び抜けた個がいなかった。 (C) Takahito ANDO

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 U-16アジア選手権で、吉武博文監督率いる98ジャパンは、準々決勝の韓国戦に敗れ、アジア予選で敗退。5大会連続のU-17ワールドカップ出場はならなかった。果たして98ジャパンは、いかなる戦いぶりを見せ、敗れ去ったのか。
 
1)大会を通じての日本の戦いぶりを振り返って
 
 結果的に、日本は4試合を戦って、2勝2敗の成績で終わり、世界への切符を逃した。2敗の相手はオーストラリア(2-4)と韓国(0-2)。アジアの覇権を争うライバルに2敗するという厳しい現実だった。
 
 日本は4試合すべてでポゼッションで相手を圧倒的に上回った。そういう点では、吉武博文監督が狙いとするサッカーはできたと言える。だが、やはり試合を決定づけられる強烈な個がいなかった。
 
 FW佐々木匠、杉浦文哉、MF菅大輝、藤本寛也、DF堂安律と、各ポジションに核となるタレントはいたが、強烈なインパクトを残した選手は、菅と堂安くらいで、佐々木はコンディション不良、杉浦も高いスキルは見せたが、ゲームを動かすまでには至らなかった。
 
 菅と堂安のふたりも出場権が懸かった準々決勝の韓国戦では、決定的な仕事ができなかった。たしかにチーム全体の選手の質は高かった。ボールコントロールも、ボールの動かし方も、日本は他チームより頭ひとつ抜けていた。しかし、問題は最後の一手、二手で決定的な仕事ができる選手がおらず、逆にオーストラリアにはFWジョイス、韓国にはFWイ・サンウというストライカーがいた。この差が顕著に結果として表われた。
 
 吉武監督は、「ボールに向かって強いアクションを起こせ」という意味で、選手たちにしきりに「刺せ」と言っていたが、肝心の刺すボールに対して、最後まで「刺し切れる選手」がいなかったことが響いた。
 
2)出場権を懸けた韓国戦の敗因はどこにあったのか?
 
 一言で言えば、韓国の強烈な個に負けた。日本が警戒すべきだったのは、韓国というチームそのものというよりも、極端に言えば、バルセロナ下部組織に所属するFWイ・サンウ、MFチャン・ギョルヒのふたりだった。
 
 このふたりを抑え、あとは点を奪えば勝つことができた。実際に、内容的にもほぼこのふたりにやられたという印象が強い。特にイ・サンウはこのチームの「王様」で、前線に残ってほとんど動かない。守備にもまったくというほど関わらず、ただボールを待っているのみ。他の選手が一生懸命にボールを運んで、あとはイ・サンウの個の力に任せる。
 
 この単純な図式を日本は崩せなかった。エースに決定的な仕事をさせ、あとは10人で守る。そうした韓国に組織力では凌駕したが、致命的なダメージを与え、打ち崩すだけの個の力がなかった。それが敗因だ。
3)吉武監督の戦略(采配)はどうだったのか?
 
 立ち上げ時から、吉武監督がやっていることはまったくぶれていなかった。今回の98ジャパンでも、これまでの94、96でやってきたことの質を上げ、全員で共有するという絵は描けていた。この大会で組織としてのパス回し、技術は間違いなくナンバーワンだった。
 
 オーストラリアの監督も「日本のポゼッションは素晴らしかった。あの質の高さは見習わないといけない」と絶賛していた。ただし、結果は伴わなかった。質は高くなったものの、各チームが「研究しやすくなった」のも事実だ。
 
 現に韓国とオーストラリアは闇雲にボールに食いつかず、『回させている』時間を多く作り出した。「まだまだ回されている時間が多い」と、吉武監督も理解していたが、そこを打開する切り札や積極性に欠けたように見えた。