マキロイ、プレーオフシリーズでは勝てず年間王者にはなれなかった(Photo by Chris Condon/Getty Images)

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 ツアー選手権を制し、年間王者のタイトルと10ミリオンのビッグボーナスを手に入れたのが、ローリー・マキロイではなくビリー・ホーシェルだったという結果を「意外」と感じた人は多かったかもしれない。

 そして、全英オープン、ブリヂストン招待、全米プロを続けざまに制し、世界ランク1位の王座に上り詰め、最高のシーズンを過ごしたはずのマキロイと、メモリアル・トーナメントを制し、ルーキーにして早々に初優勝を飾った松山英樹が「どちらも負の連鎖の中にいる」と言ったら、「意外」と感じる人は多いに違いない。
 だが、プレーオフ4連戦におけるマキロイと松山は、どうやら2人とも、ちょっとした負の連鎖の中にあったようなのだ。もちろん、深刻なスランプの類ではないのだが、本人たちにしてみれば身も心も疲弊し切ってしまうような状況だったらしいのだ。
 だからなのだろう。ツアー選手権の最終日を終えたとき、松山は「しばらくは練習しないで休みます」。マキロイも「しばらくゴルフクラブを見たくない」。なんだか2人はよく似ているなあと思わず苦笑させられた。
 2人が陥った負の連鎖とは「栄光のあとに反動的に陥る落ち込みのようなもの」だ。マキロイは今夏、ビッグ大会3連勝を遂げ、世界一に輝き、キャリアで最高の栄光を掴んだ。だが、向上心が尽きないトッププロゆえ、そこに満足し切ることなく「もっともっと」と欲を出す。4試合に渡るプレーオフを迎えたときも、マキロイは「総合優勝を果たして10ミリオンを手に入れるんだ」とさらなる意欲を燃やしていた。
 だが、夏のころはあんなに強くて無敵だった自分が、その後に続くプレーオフ4試合では、どうして勝てないんだろうと首を捻り始め、その「なぜ?」が翌週には「なぜ?なぜ?」と倍増し、そのまた翌週には「なぜ?なぜ?なぜ?」とさらに増幅されていく。そして「まだ1度もベストゴルフができない」と感じたまま最終戦最終日を迎え、6番では池ポチャを喫し、9番からは信じがたき3連続ボギーを喫し、「そこから巻き返すエネルギーも沸かなかった。いいショットを打っても、ひどいパットをした」という負のスパイラルに陥った。とはいえ、終盤に結局は巻き返し、2位になったのだから、名付けるなら「負のプチ・スパイラル」ぐらいが適切なのかもしれない。
 松山も初優勝という栄光以後が「もどかしい」と唇を噛んだ。「結果だけ見れば満足のシーズンかもしれないけど、そのあとはトップ10は1回もない。そんな終わり方では満足できない。体の状態が良くなかったころは上位に入れていたのに、体の状態がいい今、上位に入れないのは何でなんだろう?」
「7連戦やっても元気でモチベーションも低くなかったし、やってやろうという気持ちは強かったけど、技術が伴わなかった」。それは、なぜなのか?「ケガの影響があって、知らぬ間にかばって打っていたのかも。でもケガが治ってきてもその動きが入っているのが、すごくショック。その動きを直そうとしても、うまくいかない」。それは、なぜなのか?そうやって「なぜ?」が重なっていき、松山も負のプチ・スパイラルに陥った。
 だが、どちらもすでに出口を見つけかけている。マキロイはゴルフクラブを視界から遮って数日を過ごしたら「気持ちを切り替え、ライダーカップに挑む」つもりだという。松山はスイングやフィーリングを「戻すことが一番大事。いい課題だと思う。それをやらずして、求めてばかりだと、もっと悪い方向へ行く」と、対症療法ではなく根治を心に誓っている。
 優勝したビリー・ホーシェルは、マキロイや松山とは対照的に、何もかもがいい方向へ作用する究極の正の連鎖の中で好成績を挙げていった。プレーオフ第2戦で2位、第3戦で優勝。さらには最終戦も優勝し、総合優勝も手に入れた。
 第2戦で惜敗したときのミスショットが「臆病者」とSNSで批判され、その批判の嵐の中で迎えた第3戦の72ホール目ではティショットの直後にトイレに猛ダッシュする姿を世界に晒しながら優勝した。そして「僕がギャンブラーだったら、今の僕に少々のお金を賭けるね」なんて自信に溢れる言葉を口にしながら最終戦で勝利。紛れもないポジティブ連鎖を彼は自力で作り出し、そこに自ら身を置いてビッグな栄光を掴んだ。
 けれど、ホーシェルも、この先は要注意だ。栄光のあとには大なり小なり反動的な落ち込みに襲われる。なぜならば、彼らには向上心があるから――。1つ栄光を得れば、彼らは必ず「もっともっと」を欲するから――。その繰り返しの中で米ツアー選手たちは徐々にビッグになっていく。
 ちょっぴり落ち込みながら最終戦を終えたマキロイや松山は、さらなる飛躍のために今回はしゃがみ込んだ。でも、だからこそ彼らは、やがて曲げた膝をピンと伸ばし、一層高く飛ぶ日を迎えるに違いない。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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