奥深い“長大橋”の歴史や成り立ち

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 世界の長大吊り橋のランキング(2013年8月現在)の1位は、最大支間長1991mで日本の明石海峡大橋。ちなみに、2位は中国の舟山西候門大橋、3位はデンマークのグレートベルト・イースト橋となっている。日本の吊り橋技術の発展は世界的に見ても目覚ましいが、ヨーロッパ、中国、韓国なども独自に発展し続けている。
 では、この吊り橋は、どんな歴史を辿って発展してきたのだろうか。

 『長大橋の科学』(塩井幸武/著、SBクリエイティブ/刊)は、人類の歴史とともに歩んだ橋の発展を、技術的な観点からまとめ、歩道橋から長大橋まで橋の魅力を紹介する一冊だ。

 日本で最初の吊り橋は、深い谷を人が渡るために架けられた。徳島県の祖谷渓に残る「かずら橋」は、そんな吊り橋のルーツを思い出させてくれる橋だ。文字通り、かずら(葛)をより合わせてロープ状にしたものに割り木をつなぎ、はしご状にした吊り橋。この橋の記録は17世紀の文献に残されているが、伝承では平安時代にさかのぼると言われている。現在は、かずらのロープに鋼製のワイヤーを通して補強している。
 明治時代になると、国内でも鋼製ロープを使った吊り橋が架けられるようになる。1925年に福井県の勝山橋、1927年に徳島県の三好橋、1930年に千葉―茨城県境の栄橋が完成したが、現在はいずれも架け替えられている。このなかでも注目されるのが三好橋で、吊り橋の補剛トラスの下にアーチ橋を架設し、当時、東洋一といわれた姿を残すことに成功した。

 海外でも吊り橋は紀元前後から、インカ帝国、中国、チベットで人と家畜の通行のために存在していたと言われる。欧米で最初にできた本格的な吊り橋は、1826年にイギリスのメナイ海峡に架けられた中央径間177mのメナイ橋と言われている。
 最初は木の蔦類が使われ、次第に麻や鉄製のロープに代わり、さらには鉄板に穴を開けてつないだ吊り橋になって、現在は鋼線をまとめて束にしたケーブルの長大吊り橋へと進化してきたのだ。

 安全性、機能、環境、耐久性などを考慮し、必要な条件を満たした上でコストが最小限になるように、最大限の設計努力がなされ、高い技術のもとに橋が作られている。
 住んでいる街や旅行先などで何気なく橋を見かけたり、渡っているかもしれないが、こういった橋を造る技術や構造、歴史を知ると、また違った見方ができるはずだ。
(新刊JP編集部)