電光石火の先制ゴールを含む2得点で、チームを勝利に導いた高瀬。充実ぶりが際立つ新エース候補が、アジア大会連覇に挑むなでしこの命運を握る。 (C) Getty Images

写真拡大

 9月13日、アジア大会初戦を2日後に控えたなでしこジャパンの国内壮行試合が、佐々木則夫監督の故郷・山形で行なわれた。雨の中、NDソフトスタジアム山形に足を運んだ1万2000人を超える大観衆の前で、なでしこはアフリカの強豪ガーナを5-0と粉砕した。
 
 ゴールラッシュのきっかけは、高瀬愛実のゴールだった。ガーナ最終ラインの裏に抜け出しパスを受けると、飛び出したGKの動きを見極め頭越しにループシュート。試合開始のホイッスルからわずか15秒で、鮮やかに先制点を奪ってみせた。
 
「(あれだけ早い時間での得点は)記憶にありません。自分でもびっくりしました。試合開始早々で、相手のラインがいつも以上に整っていない状況でした。まずFWがアクションを起こしていかないと、ラインの裏やバイタルエリアでチャンスが生まれないと意識していました。取れたら取れたでグッド。取れなくてもそのチャレンジを続けていけばいいと」
 
 岩清水梓が体調不良で欠場した最終ラインの経験不足など、この日のなでしこジャパンには不安が少なくなかった。その意味でも、高瀬の電光石火のゴールは大きかった。早い時間の先制点でチーム全体がリラックスし、積極的にゲームを進めることができたのだ。
 
「最初の1点で勢いづくか、停滞してしまうかは自分たち次第。あそこで満足せずに、さらにゴールを目指したのは、チームとしてやってやろうという気持ちの表われだと思いますし、気迫が感じられました」
 高瀬はそう振り返った。
 
 前線でコンビを組んだ増矢理花(これが代表デビュー戦だった)に、両サイドハーフの川澄奈穂美と中島依美は、いずれもINAC神戸レオネッサのチームメイト。高瀬が躍動したのは、周囲との連係がスムーズだったからでもある。下がってクサビを受けたかと思えば、一瞬の動き出しでマーカーの裏をとる。18分にも、DFを出し抜き、川澄のパスからネットを揺らした。フル代表では自身初となる1試合2ゴールの活躍だ。
 
 なでしこリーグでは、ここまで17ゴールで得点ランクのトップに立っている。この好調をそのまま持ち込んだ格好だ。充実は精神面の成長に依るところが大きいだろう。得点できない自分にイライラし、一つひとつのプレーが雑になる悪癖は、もはや過去の話だ。ゴールだけを求めすぎず、チーム全体がスムーズに機能するよう心掛けることで、おのずとシュートチャンスも増えるという好サイクルを生み出した。ガーナ戦の3日前に組まれた男子高校生(今夏のインターハイ山形県代表の日大山形)との練習試合でも、高瀬は得点を挙げている。ゴールの量産は、決してフロックではない。
 
「もう少し厳しいギリギリのところでのプレーはイメージとしてつけたかった。フリーのところでのミスも多かったし、そういった自分の課題を大事にしながら、気持ちも含めて整理して、明後日の試合に臨まなければいけないと思います」
 
 高瀬はそう言って、アジア大会に向けて気を引き締め直した。前輪駆動が予想される今回のチームでは、背番号10番を背負うこの新エース候補の出来が、勝敗の行方を大きく左右するだろう。
 
取材・文:西森彰(フリーライター)
 
【なでしこジャパン アジア大会日程】
9月15日(月)中国戦
9月18日(木)ヨルダン戦
9月22日(月)チャイニーズ・タイペイ戦
9月26日(金)準々決勝
9月29日(月)準決勝
10月1日(水)決勝/3位決定戦