今シーズンはふた桁ゴールを目指すという遠藤。ミドルシュートにも磨きをかけた。 (C) SOCCER DIGEST

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 21歳とは思えぬ風格を漂わせるこのディフェンスリーダーは、J2を独走する湘南にとって不可欠な存在だ。DFながら圧巻の攻撃センスを身につけ、リオ五輪を目指すU-21日本代表では複数のポジションへの対応に自信を見せる。遠藤航は、常に新しい自分を追い求めて進化している。
 
【写真】U-21日本代表 アジア大会メンバー
 
――昨シーズン怪我で離脱した反省を踏まえ、オフに下半身の強化に取り組んだそうですね。30節終了時点で全試合に出場。成果が出ているのでは?
「そうですね。フィジカル面の向上は、自分のなかでひとつの課題でした。怪我が完治した後も自主的にトレーニングを続けていますし、怪我をしない肉体を作るうえで筋肉量の増加や身体の使い方には成果を感じています。『身体が大きくなった』と言ってくださる方も多いですね」
 
――山形戦の勝利で、2012年に昇格した時の勝点75を超えました。ここまでの戦いぶりを振り返って率直な感想は?
「まだ1敗しかしていないのは、素直に凄いなと。ここまでの成績を残せるとは、僕たちも予想していませんでした。3年前から者さん(監督)の目指すスタイルを始めて、ブレずにクオリティーを突き詰めてきたからこその結果だと思います」
 
――「継続と深化」というチームテーマのなかで、遠藤選手自身はどんな意識でゲームに臨んでいますか?
「今シーズンは3バックの右で使われることが多いので、オーバーラップのタイミングや、最後をクロスやシュートで終わらせるといった、攻撃のバリエーションをテーマにしています。DFとして守備には自信を持っている分、今は攻撃に関する運動量とかに気を配っていますね」
 
――センターと右の違いは大きい?
「ボールを受けたり、攻撃参加する回数は確実に増えました。昨シーズンは上がるというよりもバランスを取るイメージが強かったんですけど、今は後ろにマルくん(丸山祐市)が1枚いるので、球際やクサビに対してボールを奪いに行きやすいですね」
――遠藤選手の武器であるビルドアップも、右のほうがより活きている印象です。例えば3節・札幌戦の先制点の場面(注/遠藤のクロスにウェリントンがヘッドで合わせ得点)。
「より高い位置でボールを受けられることが多く、ビルドアップやクサビを入れる際にやりやすさを感じます。僕のところでボールを奪えば、チャンスにもなりますから」
 
――今シーズンはシュート数も41本と、例年と比べて3倍近くに増えています。
「シーズン当初はシュートをどんどん打って点を取ろうとはイメージしてなくて、セットプレーで自分の良さを生かして得点に絡めればいいなと考えていました。でも、流れのなかで得点を取るのはチームとしても、個人としても成長するうえで必要になる。(24節の)福岡戦あたりからミドルシュートに手応えを感じ始めて、(27節の)栃木戦でゴールを決められた。これも自分の武器にできればいいなというところで、少しずつシュートに対する意識が上がってきています。ただ、重心が攻撃に行き過ぎたと、後で反省することもまだまだあります。監督が『ミスを恐れずにやれ』と言ってくれているので、まずは自分で考えて判断してみて、それでダメだったら課題を修正する。その繰り返しで成長が生まれると思うし、そこで消極的にやるのではなく、どんどんチャレンジしていきたいですね」
 
――自身初の3戦連続ゴールを含め、ここまで7得点。早くも自己記録(12 年の7点)に並んでいます。
「自己記録は絶対に更新したいですね。今シーズンはふた桁得点をひとつの目標にしていますし、クロスからのアシストも5本を狙っています。もちろん守備でしっかり無失点に抑える、1試合1失点以下に抑えるのが大前提ですけど、それらをクリアしながら攻撃でも10得点・5アシストを残せたら、自分も少しは成長できたと思えるシーズンになるかなと」
――では、リーグ最少失点を誇る守備に対する手応えはいかがですか?
「セットプレーでの失点の少なさは自信を持っていい部分ですし、チーム全体の守備意識の高さが、失点の少なさを物語っていると思います。前線のウェリントンから僕らDFまで、奪われた後の切り替えや守備に帰るスピードはどこにも負けない。ただ、13失点は数字としては悪くはないですけど、欲を言えば、自分たちのミスで失点をしている場面を限りなくゼロに減らしたいです」
 
――リーダーシップも遠藤選手の大きな魅力だと思います。19歳の時にも副キャプテンを務めていますよね。
「中学の頃からキャプテンを任されることが多かったですね。自分の成長にも間違いなくつながるし、リーダーシップは常に意識してきました。今シーズンも(永木)亮太くんが怪我で離脱していた間、キャプテンマークを巻かせてもらいましたけど、副キャプテンとしての責任感やリーダーシップは、任されている以上は年齢に関係なく発揮しないといけない。特に流れが悪くなった時に、いかに声をかけてチームを盛り上げていくのか。そこで真価が問われると思うし、課題はまだたくさんあります」
 
――8月の天皇杯3回戦・大宮戦は、今シーズン初となるJ1クラブとの対戦でしたが、結果は1-2の敗戦でした。
「内容自体は悪くなかった。でも最後、相手が引いてきたなかでの崩しに関しては、J2のチームよりも大宮のほうが堅かったし、ボールの奪いどころや予測、球際の強さは、これがJ1なんだと痛感しましたね。失点シーンはズラタンの個の力にやられたという言い方もできると思いますけど、1点目のクロスからの失点は、自分たちがちょっとしたラインコントロールを怠ったミスが原因。そういう細かい部分で、J1は隙を突いて確実に点を取ってくるので、あれを基準にすることが大事だし、J2でも意識して臨まなきゃいけないと思います」
 
――80分、86分と失点するまで、J1とJ2の差を感じさせない、互角以上の戦いだったと思います。
「内容的には、ある程度はJ1でも通用するのかなとは思います。でも大事なのはやっぱり結果なので。昨シーズンも内容が良くて、結果が出ないということを散々言われてきた。今シーズンは内容の質を上げながら結果にもこだわることをテーマにしてきたので、あとはJ1でもJ2と同じ結果を残せるかどうか。そこに向けてやることはブレないし、努力するしかありません」
――日本代表が新たなスタートを切りましたが、「身長180センチ」「左利き」が新監督の好むDF像としてフォーカスされました。
「大きさだけが勝負を分けるわけじゃない。この身長(178センチ)でもCBができるとプライドを賭けて証明したいです。攻撃の起点になるビルドアップでも誰にも負けたくないし、『なんでもできる』じゃないですけど、ポジショニングとカバーリングが良く、しっかりボールも動かせて、身長はそれほど高くないけどヘディングも強い、そんな選手を目指しています。それをCBだけじゃなく、SB、ボランチでも同じようにプレーできるようになったら、これ以上ない強みになる。手倉森さん(U-21代表監督)の下でも、4バックの中央、3バックの右、SB、ボランチでのプレーが考えられるので、ポジションによって自分の引き出しを変え、臨機応変に特長を出していけたら、A代表に入れる可能性はあると思います」
 
――小学校の時はFW、その後トップ下とボランチでプレーした経験も自信につながっている?
「はい。特にCBになって最初に感じたのは、ビルドアップの面ではボランチやトップ下をやっていたからこそ、自分の良さを出せているなと。小さい頃からいろいろなポジションを経験したことで、サッカーの感覚が身についたと思うし、それが今の自分の特長にもなっています」
 
――「リオデジャネイロ五輪経由、ロシア・ワールドカップ行き」の青写真を描くファンも多いと思います。
「カテゴリーを問わず、代表には常に入りたいですね。A代表の試合も、もし自分が入ったらどうなるかなと考えながら観たりしますし、実際J1で対戦した選手がワールドカップメンバーとして出場している姿を見ると、そこを目指さなきゃいけないと感じます。そういう意味で、今回のアジア大会で結果を残すのも大事なミッション。その先の五輪出場権の獲得を含め、すべてがつながってA代表に辿り着くと思うので、代表への想いは強く持っています」
 
――『週刊サッカーダイジェスト』の選手名鑑アンケートでは、ライバルの項目に挙げている松原健選手が今回A代表に選ばれましたね。
「悔しいという意識はなくて、純粋に凄いなと思いました。新しい選手が最初に選出されたほうが、みんなにチャンスがあるんだと思える。だから健が入ったことは嬉しかったですし、メールもしましたよ」
 
――「近いうちに、A代表で一緒にやろう」と約束したり?
「いえ、してないです。そこまで熱く語るタイプではないので(笑)」
 
――次回の代表活動は、湘南のJ1昇格決定の時期と重なる可能性があります。遠藤選手は12年の昇格時も、代表活動で不在だったんですよね?
「こればかりは仕方ありません(苦笑)。ある程度は自分でも覚悟していましたし。決められる時に決めてほしいのが本音で、僕がいなくてもしっかり結果を残してくれると信じています。僕は僕で代表に集中するだけ。前回昇格した時はU-19代表で結果を残せずに帰ってきてしまったので、今回はただひたすら勝利を目指してやればいいのかなと考えています」
 
――来シーズンを見据えて、残りのシーズンをどう戦っていきたいですか?
「監督がこれまでのアプローチを変えるはずはありませんし、今まで自分たちがやってきたこと、大事にしてきたことをもう一回気を引き締めてやって、積み上げていくしかないと思います。そのクオリティーを、残りの試合でJ1でも戦えるレベルに引き上げる。優勝して昇格するのが目標ですけど、監督も『最短で優勝する』『過去最強の湘南を目指す』と燃えているので、できるだけ早く昇格と優勝を決めたいですね」
 
――「過去最強」に対する感触は?
「開幕の連勝記録などを踏まえると、それに近づいてきているのかなとは思います。でも今の時点で過去最強かと言うと、まだシーズン途中なのでなんとも言えない。シーズンが終わった時に、サポーターの皆さんから『過去最強だった』と言ってもらえるように、頑張っていきます」
 
取材・文:小田智史(週刊サッカーダイジェスト)

プロフィール
えんどう・わたる/ 1993年2月9日生まれ、神奈川県出身。178センチ・75キロ。南戸塚SC-南戸塚中-湘南ユース-湘南。J1通算23試合・4得点、J2通算96試合・15得点(9月7日現在)。絶妙のカバーリングと空中戦の強さ、精度の高いフィードで攻守にチームを統率する「若大将」。類まれな強心臓はベテランの風格さえ感じさせる。各世代の代表にも選出され、U-21代表ではリオデジャネイロ五輪出場を目指す。