真面目な研究です。先日、米国感染症関連専門誌に英国の大学からの興味深い報告が掲載された。“グータッチ”は握手やハイファイブ(手のひらを頭の高さでパチンと打ち合わせる挨拶)より、細菌やバクテリア感染の拡大を9割軽減できるらしい。

 実験では、挨拶をする被験者はあらかじめ滅菌手袋をはめたうえで病原性がない細菌が入った容器に手を浸し、乾いたところで同じく滅菌手袋をはめた相手とグータッチと握手、そしてハイファイブを繰り返した。三つの方法とも接触時間や握る(タッチする)強さに変化をつけて、試みている。

 挨拶が終了した後で、相手の滅菌手袋を特殊な溶液に浸して移動した細菌数を計測してみると、握手で相手に移った細菌数は、ハイファイブの約2倍。グータッチはそれよりもさらに有意に少ない1割程度、という結果が示された。当然だが3方法とも接触時間が長く強いほど、細菌数が増加した。

 近年はカジュアル感を演出するためか、スポーツシーンだけでなく、政治家や著名人もグータッチをする場面がちらほら見られる。とはいえ、初対面の相手や商談の場面でいきなり拳を突き出すのも難しい。幸いなことに、わが日本では名刺交換と頭を下げる習慣があるので悩まずに済むけれど。

 ちなみにこの研究は、米国医師会発行の「JAMA」に掲載された「医療機関では握手を禁止すべき」との提言を受けたもの。提言者らの主張によれば、ヒトの手指が細菌感染源になることはよく知られており、特に医師や看護師の手は細菌汚染を媒介する確率が高い。医療関連の感染症を防ぐには、「握手禁止」が簡単かつ有効で効果に優れる、というのだ。

 提言では院内に「握手禁止ゾーン」を設置し、握手の代わりに手を振る、日本人のように(!)おじぎをする、胸の前で合掌する等々、代替案も示されている。

 ただ一方では診療前の医師、患者間の握手は患者の不安を軽減し、信頼関係を築くのに不可欠との声もある。インフルエンザの流行期など緊急時ならまだしも、果たして普段の診察でまで、握手禁止にする必要があるのかどうか……。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)