『「たった3分」からの大逆転 男の「早い」は才能だった!』(講談社)

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「早漏」。男性の性の悩み相談などで必ず出て来る単語であり、年齢をとわず、これに悩まされている男性は多い。世に蔓延する早漏対策の広告を読むと、薬を飲んだり体質改善に励んだり器具を使ってペニスを刺激したりと、切ないほどに努力されているようで、女性である筆者としては「大変だなあ...」と思わず頭を垂れてしまう。

 そんな中、このテーマに関して、熱い支持を得ている書籍がある。『「たった3分」からの大逆転 男の「早い」は才能だった!』(アダム徳永/講談社)だ。

 アマゾンレビューのおすすめ度は、14年9月現在のところ星4.5とかなりの高得点をマーク。感想は熱烈なものでは「日本男性全員がこの本を読んでいれば日本はもっと幸福に満ちた国になっていると思う」「他の人には読んで欲しくない。ただ、自分だけの秘策として取っておきたい。悪い男が悪用しないように願います」など、まるでこの本をバイブルのように扱っている。本当だろうかと、やや疑問を抱きつつ、同書を手に取ってみた。

 アダム徳永氏といえば、1954年生まれの御年60歳。"スローセックス"を提唱して一躍有名になった、日本一有名なセックスセラピストである。どんな秘策を悩める子羊たちに伝授しているのだろうか。

 まず、氏は「早漏は素晴らしい才能だ」と断言する。なぜなら、早漏とは「性的感受性に優れている」から。「感じるエネルギー(=性エネルギー)」が敏感であり、その性エネルギーが強ければ強いほど、セックスには圧倒的に有利なのだという。早漏とは、アダム徳永に言わせれば「優れた資質がいたずらに咲かせてしまったあだ花」なのだとか。

 氏は、自分が生み出したトレーニングさえこなせば、長持ち&強力なパワーを操れるようになると説く。かく言うアダム氏も37歳までは超のつく早漏で、たったの1分も持たず、三こすり半も日常茶飯事だったが、今では1時間も2時間も女性と愛し合えるようになった、と。

 そして、こうも言う。早漏の克服の肝は"我慢力"ではなく、"長持ち力"でもなく、好きなタイミングで射精できる"コントロール力"なのだと。さらに、射精は「気のスパーク」であるから、気をペニス一箇所に集中させず、気を分散させるとスパークが起こりにくくなるから、長持ちに繋がる。つまり「射精の原因は気だから、気をコントロールすれば早漏は克服できる」というのだ。ちょっとというか、大分アヤシイ感じがしてきたが、氏はかまわずこの論をベースに「早漏克服トレーニング」法を展開していく。

 そのトレーニング法で氏がまず強調するのは「鍛えるべきはペニスでなく脳だ」ということ。昨今、世には「ペニス本体を鍛えれば長持ちする」という迷信が蔓延しているが、どんなことをしてもペニスの皮は厚くはならない。「物理的な刺激に強くなるのでなく、快感という感受性に耐えられる脳神経を作り、長持ち力をアップさせる」ことがペニス強化トレーニングの目的なのだという。
そのために「射精にいたる前に快楽を楽しむ"快感ゾーン"をできるだけ長くする」。つまり、男性は射精前に快楽ゾーンで快楽を楽しみつつ、射精ラインをこえると射精まで一直線になるので、その射精ラインを見極める練習をしろ、と言うのである。

 その練習とはすばり、マスターベーション。マスターベーションをしている途中で、イキそうになったら、パッとペニスから手を離す、俗にいう「寸止め」を繰り返し行うことで脳は鍛えられるらしい。つまり「15分こすってイク」という時間を設定すると、その15分をクリアするまで、10回でも0回でも寸止めを繰り返さねばならないのである。氏によると、この射精ラインは寸止めトレーニングを繰り返すたびに、よりはっきり見えるようになるので、くじけずに繰り返し行え、とのこと。

 客観的に見ると、なかなかの苦行(笑)であるが、この「射精ライン」を見極めることができなければ、具体的な「早漏克服トレーニング」が生きてこないというから、頑張るしかない。

 氏は脳神経と同時に具体的な「ペニス強化法」も紹介している。といっても、先述したように、ペニスの皮をいくら鍛えても意味はない。快感を感じてもすぐに射精しないペニスにするためのポイントは「亀頭」だという。

 ほとんどの一般男性はマスターベーションの際に竿の部分を握って皮と一緒に亀頭を擦る。これは「快感を得る為の行為」でなく「ひたすら射精に突き進む行為」でしかない。これは「ジャンクマスターベーション」に当たるので、今すぐやめるべきだと氏はいう。

 氏が奨める「亀頭強化トレーニング」は次の3つ(本書ではもちろん分かりやすいイラスト入り)。1つめは「ローリング愛撫法」(手のひらと亀頭の密着面積がなるべく大きくなるようにして、手首を使って手のひらをローリングさせて亀頭全体を愛撫)。2つめは「指しぼり愛撫法」(片方の手でペニスを固定し、もう片方の手を女性器に見立て、ペニスをぴったりサイズの膣に挿入してるイメージで包み込み、ゆっくり上下させる。親指と人差し指で作った輪の内側でカリを引っ掛けるようにしながら引き上げる。そのまま亀頭を手のひらで摩擦しながら上げるが、中指、薬指、小指の純に指を絞り、ギリギリまで亀頭を締め付けるよう愛撫)3つめは「亀頭エッジ愛撫法」(ペニスを片方で固定し、親指と人差し指の間にできた薄い皮の部分で亀頭のエッジ(カリ)をやさしく丹念にこする)。

 そして、この3つの方法で亀頭を愛撫し、射精ラインを見極めつつ出そうになったら寸止めし、射精欲が収まるまで呼吸法を行いペニスを萎えさせ、落ち着いたら再開、というのを延々続ける。う〜ん、ますます大変そうだ。

 亀頭と寸止め練習を繰り返したら、いよいよ本丸の「気のコントロール」の訓練。氏はこの「気」というものを「肉体と精神の中間に位置するエネルギー体」だと定義付け、早漏になるのは気の滞りが原因だという。「性エネルギー」は女性の裸を見たり、喘ぎ声を聞いたり、オッパイを触るという性的情報を脳が受信することでどんどん増える。そして増幅する性エネルギーがペニスに集中するのがまずいのだ。

 氏は気をコントロールするには「気を溜めて」→「気を動かして」→「気を循環させる」ことだといい、「小周天呼吸法」なる気功術をマスターすることだと説く。そして、これさえマスターすれば早漏どころか、指先から気が出るため女性も昇天確実なのだという。で、この「小周天呼吸法」というのは......。

 ち、ちょっと待った! 「オナニー寸止め」「亀頭強化」だけでも大変なのに、気功法までマスターしなきゃいけないのか? ここまで過酷な修行を積む精神力があるなら、何か他のもっと偉業をなしとげられる気がするんだが......。
 
 でも、男性諸氏にとって早漏とか短小とかの性的コンプレックスはそれくらい重大な問題ということなんだろう。ああ、同書に啓蒙されて、亀頭をいじりながら「スーハー」と呼吸法を繰り返している姿が目に浮かぶ。でも、私はそういう男性、いじらしくってキライじゃないですけどね。
(岡崎留美子)