お笑い界の大御所・志村けんは現場でどういう態度をとっているのか?

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週休2日という嘘。残業代を支払うという嘘。結果がすべてという嘘。我々を取り巻く環境は"嘘"で塗り固められている。何よりも、「早く帰りたい」「土日は休みたい」「報酬を沢山もらいたい」といった欲に対して嘘をつき、今日も黙々と残業に精を出す・・・ハードワーカーほど自分に嘘をついて頑張っている人種はいない。

見渡す限り嘘に囲まれて、時には心が折れそうになるハードワーカーズに、ちょっといい話をお届け。

モーニング娘。やAKB48の振り付けを担当する「怖い夏先生」と言えば、ダンスプロデューサーの夏まゆみさん。数多くの著名人と接してきた夏氏が、書籍『エースと呼ばれる人は何をしているのか』のなかで、大物芸能人・志村けんさんのいい話を紹介している。

あるCM撮影で一緒になった夏さんと志村さん。夏さんが振り付けを行い、それを踊るのが志村さんだった。芸能界の大物とあって、撮影場所の雰囲気は緊張感が張り詰めていた。みんなが志村さんの顔色をうかがいながら神妙な顔つきをしている中、撮影がスタート。

何度目かのテイクでOKが出たのだが、実は志村さんは小さなミスをしていた。ほんの少しステップを間違っていたのだ。しかし、目立たないものだったため、皆、気づかなかったのか、それとも、気づかないふりをしていたのか、「素晴らしかったです!!」などと口々に言い、スタジオが盛り上がっていたという。

ただ、その間違いに気づいていた夏さんは、振り付けを担当している身として見過ごすことはできなかった。

「志村さん、あそこ右足じゃなくて左足だったんですけど......」と指摘した夏さん。皆が、気を遣う空気の中、思い切った指摘をしたのであった。皆の前でそう指摘された志村さんは......。

「バレたか」と言ってニヤリ。ディレクターに「お前、ちゃんと気づいて言えよな〜っ」と注意したうえで、自ら「よしっ、もう一回いくぞ!」と言ったのであった。

「これが若手なら当たり前のことですが、人は偉くなればなるほど、自分の非を認めたり、目下の人の意見に耳を貸したり、自分から努力することを忘れてしまいます。とくに志村さんほどの大御所になればいつも周囲から気を遣われているので、自分を見失ってしまう人のほうが多いのではないかと思います」(同書より)

指摘する夏さんの姿勢も素晴らしいことだし、それを受け止め、周囲を楽しませながら自身のやるべき仕事を全うする志村さんも凄い。
俺たちには縁のない話かもしれないが、同じ仕事人だ、そう他人事とばかり思ってはいられない。まずは自分への嘘を少し開放してみてはどうだろうか。

【書籍データ】
『エースと呼ばれる人は何をしているのか』(サンマーク出版) 夏まゆみ著