最終ラインやアンカーがボールを持った時、もう少しインサイドハーフが顔を出し、彼らを経由した攻撃の形も構築していかなければ、リズムも、変化も生まれない。
 
 興味深いのは、2試合連続でこの位置に細貝が入っていることだ。球際に強い守備のスペシャリストであり、イメージ的にはアンカーの候補者である。時にトップ下然とした振る舞いが求められるインサイドハーフはミスマッチのように感じられるが、そこは高い位置でのボール奪取と、アンカーの森重がサイドに流れた際の守備のバランス保持を期待しているのだろう。
 
 ただ、アギーレ監督が試合後の会見で、「ボールをもっと速く回さなくてはいけない」とビルドアップ時の課題を挙げていることを考えると、今後はもう少しボール捌きに長けた人材も試されそうだ。
 
 ブラジル・ワールドカップで軸となり、攻撃的MFでもプレーできる山口蛍や、Jリーグで評価を高める米本拓司(FC東京)など守備力の高さをベースとした適任者の名前は挙がるが、4か月後のアジアカップを見据えると、個人的に興味深いのは長谷部誠だ。
 
 彼自身のコンディション次第だが、従来のポゼッションスタイルにおける2ボランチより、上下動が求められるアギーレ流4-3-3のインサイドハーフのほうが、その能力が活かされそうな印象がある。球際に強く、高さもあり、自らドリブルで前へと運べる。その豊富な経験は柴崎のような若い選手にとって、結果の求められる国際舞台で大きな力になるはずだ。
 
「どういうスタイルを求めるかと言えば、上位に行けるスタイル。重要なのはよりプレーし、勝ち、上位に行くことです」
 アギーレ監督となり、目指すサッカーの内容は明らかに、「対世界」を意識したものに変わった。
 
 守備の陣形は崩さず、リスクマネジメントを徹底しながら、鋭く相手ゴールに迫っていく。しかし当面の相手がアジア勢であることを考えれば、もう少し中盤でボールを落ち着かせながら、ゲームの主導権を握る形も見出したい。
 
取材・文:谷沢直也(週刊サッカーダイジェスト編集長)