資質から逆算した「理想のスタメン」を送り出したウルグアイ戦は惨憺たる内容に終わった。今後は現実と折り合いをつける作業が進むはず。(C) SOCCER DIGEST

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 アギーレ新体制の船出は、1分け1敗という結果に終わった。4年後を見据えたスタートを切ったばかりの新生日本代表だが、この2連戦からチームはどのような歩みを見せていくのだろうか。スポーツライターの加部究氏が、日本代表の未来図を探る。
 
【写真で振り返る】日本 2-2 ベネズエラ
 
 今回招集された新鮮な顔ぶれは、そのままハビエル・アギーレ監督の募集要項とも見て取れる。すでに就任に際して「責任感」「走れる」などのキーワードは提示されていたが、実際に23人の顔ぶれやウルグアイ戦のスタメンを確認し、どんな人材を求めているかが具体性を帯びた。来日後十分な視察の機会を持てていないことを考えれば、新戦力の大半は技術委員会等の助言に基づく人選だったことは容易に想像がつく。つまりウルグアイ戦でスタメン出場を果たした皆川佑介、田中順也、細貝萌、森重真人、坂井達弥には、こんなタイプが必要だというメッセージが込められていたに違いない。
 
 そして改めてキーワードを加えるなら「高さ」「レフティー」「若さ」だ。4-3-3をベースに考えるアギーレ監督は、CF、アンカー、CBに高さを、またピッチの左半分にはレフティーを求め、さらに前体制からの変化(代謝)を図った。必然的に人材難なポジションほどサプライズが大きかったわけで、特に長身で左利きという条件を満たす選手が乏しいCBは、今年はリーグ戦でも4試合しか出場していない坂井が抜擢された。
 
 つまりアギーレ監督は、就任初戦では資質から逆算した理想のスタメンを送り出しわけだが、案の定、机上の論理は空回りして内容は惨憺たるものだった。相手がウルグアイでなくても、ほとんど見せ場は作れずに終わっていた可能性が高い。そこで4日後のベネズエラ戦では、スタメンを5人入れ替えてきたが、今後はさらに現実との折り合いをつける作業が進むことになるはずだ。
 
 例えばベネズエラ戦では、左CBに入った吉田麻也が左足でフィードを繰り返していた。オランダ時代は対戦相手に「左利き」と勘違いされた経験もあり、指揮官が敢えてレフティーに固執するより有効だと判断すれば、坂井より水本裕貴の優先順位が上がる。CFも186センチの皆川より、182センチの大迫勇也の方が機能すると考えれば、4センチの違いには目をつぶるだろうし、それ以上に高さにこだわるならハーフナー・マイクの招集が検討されるはずだ。
 
 高さへのこだわりは、森重のアンカー起用にも見て取れる。アギーレ監督は、CBと同様にアンカーにも高さを求めている。183センチの森重の高さはCBには不十分だと考え、構成力などの適性も考慮して1列前に配した。FC東京戦は二度視察しているので、最終ラインでの森重のプレーぶりも確認した上での判断だろう。一方で細貝をアンカーではなく、攻撃的MFとして使うのも、同様に高さが足りないと考えているに違いない。
 アギーレ監督は、スペイン時代のオサスナ、エスパニョール、あるいはメキシコ代表にしても「弱者の論理」でチーム作りを進めてきた。基本的に同監督の歴史は、積極的に勝点を奪いに行くより、堅実に拾い集める作業が中心で、今後も「堅守の部分を強化していきたい」と語る。
 
 ただし今回の連戦では、負けないことに軸足を置いた結果、逆に大半がミス絡みで4失点した。フィリップ・トルシエからアルベルト・ザッケローニまでが指摘してきたように、日本には守備から逆算する文化は馴染まない。やはりゲームを支配することで、守備に回る時間を減らしていく。それは継続していくべきテーマであることを、早晩アギーレ監督も悟ると考えたい。
 
 選抜チームだから資質から人材を募ったが、逆に代表では条件を満たす素材を熟成させていく時間は確保できない。結局ウルグアイ戦では大胆な代謝を図ったものの、指揮官自らが「日本の特徴」だと認めるスピーディーな展開は実現できなかった。4-3-3で日本らしさを追求するなら、2枚の攻撃的MFが生命線になるはずだが、このポジションでプレーをしたのが、本来FWの田中順也とボランチの細貝。2戦目で柴崎岳が特に攻撃面で鮮度を加えたことで、指揮官は再考を迫られたはずだ。
 
 今後チーム作りのカギを握るのは、香川真司をどこで使うかだろう。もし2列目ではなくサイドアタッカーに回せば、マンチェスター・ユナイテッドやザック体制の二の舞になる。一方で長身CFの適材発掘が難航し、重要な得点源となる岡崎慎司の起用法なども考えれば、4-4-2など別のフォーメーションへと傾いていく可能性もある。
 
 いずれにしても2列目は日本の宝庫なので、武藤嘉紀が鮮烈なアピールをしたウイングは、故障中の原口元気も加えてポジション争いは激化しそうだ。またサイドアタッカーの台頭が顕著なら、所属のミランと同じく右サイドで使われている本田圭佑のポジションも、再考の必要が出てくる可能性もある。
 
 4年後のロシア・ワールドカップを目的地とする航海に出た新体制だが、まずは年内の残り4試合でアジアカップを勝ち抜くメドを立てなければならない。柴崎、武藤と新しい収穫を得た新チームも、とりあえずは代謝を一時停止し、常連組の組み替えや融合を優先する必要がある。
 
 本格的にアギーレ色が強まるのは、アジアカップ後と考えるべきかもしれない。

文:加部 究(スポーツライター)