代表初ゴールをマークした、武藤嘉紀 (撮影/岸本勉・PICSPORT)

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 横浜国際競技場のピッチに、鮮烈なインパクトが刻まれた。

 4日前のウルグアイ戦で国際Aマッチデビューを飾ったばかりの武藤嘉紀が、代表初ゴールをマークしたのだ。

「前半を見ていて、ちょっと、1本のパスで深い位置へ蹴り込み過ぎてて、真ん中でもらったりタメを作ったりするプレーが少なかったので、自分は間に入って攻撃をすればいいかなと思いました」

 自陣右サイドで相手FWからボール奪った水本が、最前線へロングボールを蹴り出す。ベンチで見ていた前半の攻防から感じたものを、武藤は迷わずピッチ上で表現する。ロングボールの落下先を見定めて加速した。

「あそこでサポートがないと攻撃が流動的にならないので、(ボールが)真ん中に入ったときにこぼれ球だったり、サポートだったりを意識していました」

 岡崎と相手DFが空中戦を競り合ったボールを、武藤はセンターサークル付近で支配下に置く。ファーストタッチで前への推進力を生み出すと、背後からのタックルを力強く振り払う。ゴール左へ逃げていく岡崎が作り出すスペースへ、爆発的な加速で突き進んでいった。

「自分には45分しかなかったので、やってやろうという気持ちはありましたけど、得点を取れるなあという気持ちは正直、あまりなかったです。何ていうか、決めようっていう気持ちはあったんですけど、決まっちゃったというか……」

 無理もない。後半から出場した武藤は、まだほとんどボールに触っていなかった。岡崎が競ったあとのセカンドボールを受けた51分のシーンは、この試合初めての仕掛けだったのである。

 それでも、迷いはないのだ。

「前の試合でだいぶ硬さっていうのも取れたので、今日はスムーズに入ることができました。パスの選択肢もあるなかでシュートを打つことでGKも迷うと思うので、そこは思い切って打ちました」

 ペナルティエリアの直前で左足を振り抜くと、すぐに岡崎が駆け寄ってきた。柴崎、吉田、本田が加わり、歓喜の輪が出来上がる。ハビエル・アギーレ新監督就任後の初ゴールを、武藤が叩きだしたのだ。

 代表入りが決まった直後は、期待よりも不安が先行していた。言葉を探しながら語るところに、感情の揺れがにじむ。

「何ていうか、発表されたときはまだ不安だったり、どっちかって言うと、何て言うのかな、自分を出せるのかなとか、プレーは通用するのかなとか、不安な気持ちでいっぱいだったんですけど」

 ウルグアイ戦に続いて、ベネズエラ戦にも出場したいまは違う。初々しいメンタリティに、逞しさが芽生えてきた。

「こうやって出場機会をいただいて、その不安というのを払しょくすることができましたし、逆に自分のプレーをもっと出してやろうという気持ちになったので、自分としては成長できたんじゃないかなと思います」

 6万人を超える観衆の前で決めた一発は、かつて味わったことのない爽快感を運んできた。だが、満足感はない。手ごたえと課題が、胸中でくっきりと輪郭を帯びている。

「ドリブルだったり緩急で相手を抜くことに関しては、まあ、通用するんじゃないかなと思います。けどやっぱり、さらにレベルが上がるとどれだけ通用するのかまだ分からないですし。自分の良さが出ない相手になってきたときに、どうやって対応するのかが大事になってくると思うので。最後のパスの正確性は、まだまだ積み上げていかなきゃいけないところですし。そこはもっともっと落ち着いてプレーすることで、パスミスは減らしていかなきゃいけないです」

 8月下旬のメンバー発表当時は、「一度は見てみたい選手」のひとりだった。途中出場ではなくスタメン出場で、どれぐらいできるのか。迷いのないドリブルが、ブラジルにどこまで通用するのか。ベネズエラ戦を終えた武藤は、「次も見てみたい」選手である。