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慶応義塾大学(慶応大)は9月8日、計測時間が0.1秒と極めて高速なテラヘルツ電磁波のベクトル時間波形計測装置を開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 理工学研究科の安松直弥氏(2014年修士課程修了)、笠谷敦修士課程1 年、小口研一修士課程2年、および理工学部物理学科の渡邉紳一准教授らによるもの。詳細は、応用物理学会誌「Applied Physics Express」のオンライン版に掲載された。

近年、可視光領域の光とは周波数が異なるテラヘルツ電磁波を用いて、プラスチック材料を透過して非破壊検査する方法が検討されている。その中でも、特にテラヘルツ電磁波の偏光情報を用いることで、透過光の偏光回転の度合いによって内部応力をモニタする試みが世界中で進められている。しかし、一般にテラヘルツ電磁波の偏光計測は測定に時間がかかるため、実用化に向け大きな課題となっていた。

研究グループは、2012年にテラヘルツ電磁波の検出に用いる非線形光学結晶を高速回転させることで、素早くその偏光状態を計測できる装置開発に成功したが、従来手法では1分間に6000回転程度という結晶の回転速度が偏光計測の速度を律速していた。また、装置に機械的な回転機構を含むため、振動の大きい工場などの環境下では安定した計測が難しいなどの問題があった。

そこで今回、機械的に検出結晶を回転させる方式ではなく、電気光学変調器を用いた偏光変調方式を採用した。具体的には、テラヘルツ電磁波を印加した検出結晶を透過する際に、検出用パルス光が受ける偏光状態の変化を、電気光学変調器を用いて変調計測する。その結果、テラヘルツ電磁波のベクトル情報(ベクトルの大きさと向き)を、従来技術よりも約20倍速く計測することができるようになった。さらに、時間波形を取得するための高速ステージと組み合わせることによって、テラヘルツ電磁波のベクトル時間波形を0.1秒(100ミリ秒)で計測することが可能になった。

今後は、開発した装置をイメージング装置に組み込むなどの工夫を行い、プラスチックの残留応力検査装置など実用的な装置開発を進めていくとコメントしている。