「月刊コミックフラッパー」10月号から、新連載「姫と呼ばないで」が巻中カラーでスタートした。作者は地下(@chocolateheaven)で、テーマは「オタサーの姫」。表紙のアオリ文は「可愛くなくても許される!? オタクサークルの紅一点、『オタサーの姫』を大胆に描く!」。

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漫画雑誌「月刊コミックフラッパー」10月号から、新連載「姫と呼ばないで」がスタートした。テーマは「オタサーの姫」。オタサーの姫を、姫側の視点で描いたお話だ。

「オタサーの姫」とは、男女比が9:1くらいの文化系サークル(オタク系サークル)に所属し、「姫」のようにサークル内の男性からちやほやされる女性のこと。漫画研究会、アニメ研究会、特撮研究会などのサークルがよく例に挙げられる。
この言葉の初出はわからないが、2014年になってインターネット上(特にTwitter上)で多く見られるようになった。かなり近い意味を持つ「サークルクラッシャー」(サークルの人間関係をおもに恋愛事件で壊していく人物)とともに、ここ数年で急激に普及した言葉と言えるだろう。

「オタサーの姫」という言葉は、基本的には悪口だ。具体的にはどういう人物なのだろううか? 「姫と呼ばないで」の主人公・前園美也子の特徴を列挙することで、オタサーの姫の説明としたい。

・顔はあんまり可愛くない(ひどい言い方をすると「ブス」)
・服のセンスが独特(流行とはズレた格好)
・だいたいメガネ
・髪型にあまり気を使っていない
・女友達が少ない
・基本的にコミュニケーションが得意ではない
・オタクサークルの紅一点ポジション
・オタクサークルではうまく話せる
・Twitterではよく喋る
・オタクサークルの男子から好意を寄せられている
・好意の存在に気づいているが気づかないふりをしてかすかな喜びを感じている

これらをベースにして、さらに「中肉中背」「すぐに異性と関係を持つ」「女に意地悪」「黒髪ツインテール+触覚」「ニーソックス」などの特徴が並ぶこともある。
美也子の場合は、特撮研究会に所属。髪を雑な一本結びで、そばかすに太眉が目立つ。クラス内では「いっつもビクビクしてる」「私あの人と喋るときに目あったことないよ」と囁かれているが、サークル内では「みやや」と呼ばれトッポを差し入れされている。

何はともあれ、オタサーの姫はネット上では大喜利ないし叩きの対象になる。たとえば2ちゃんねるでは、可愛くないオタサーの姫に美人のギャルをぶつけ、オタサーの姫の居場所が崩壊するような話が投稿され、非常にウケた。

オタサーの姫は、男性からも女性からも叩かれる。
男性から叩かれるのはまだわかる。オタサーの姫は自分をもてあそぶ存在であるし、わかってはいても好きになってしまう(そして苦しめられる)可能性のある存在だ。もしかしたら姫に翻弄された過去を持つ人もいるかもしれない。
でも、なぜ女性が姫を叩くのだろう? 人によって理由はさまざまだろうが、その中でも大きなものは「容姿」にまつわる嫉妬にも似た反発だ。

現代社会では、「容姿」はどうしても大きな評価ポイントになる。男性の行動と顔の関係を揶揄した「※ただしイケメンにかぎる」という言葉はよく聞くが、女性のほうがよっぽど「※ただし可愛い/きれいな子にかぎる」というシチュエーションは多い。
そうした価値観の中では、「外見が優れた人間が高い評価を受ける」ことは違和感がない。特に恋愛に関することならなおさらだ。
ただしその逆、「外見がさほど優れていない人間が高い評価を受ける」ことには疑問や反発が生まれやすい。
オタサーの姫は、外見が優れていないのに、複数人の男性にちやほやされている。汚い言葉で言えば「なんでブスのくせにモテてんの?」「ブスのくせに調子乗ってる」になるだろうか。「私のほうがカワイイのになんであんなブスよりモテないの」と発展することもあるし、「そこまでして男にモテたいの? 必死だな」となることもある。このような反応は男性にも見られるが、女性の目のほうがより冷たい。

ちなみに、私もオタサーの姫にいい感情を持っていない。なぜなら、私も似たような条件を持っていたのに、まったくサークル内でモテなかったから。「なぜ私はモテなかったのにこいつらはモテているのだ!?」という逆恨み感情がある。「なぜ私はオタサーの姫になれなかったのだ!?」も。

では、なぜオタサーの姫はオタサーの姫になるのか? 寂しさ、承認欲求、自己顕示欲、天然、計算などさまざまな理由があるが、「姫と呼ばないで」では1つの答えが描かれている。
女の子たちから「すっごいブス」と呼ばれ、きれいな女子からイヤなあだ名をつけられた美也子は、サークルの部室で男の子たちに囲まれながらこう思う。
「ここでは 楽しいことだけでいい」
「比べる女の子たちなんかいない」
「ここに来れば元気になれる そういうのがいい ずっとこのままでいたい」
ここにいるのは、コンプレックスの裏返しからオタサーの姫と化した女の子だ。……ただし幸せは続かない。第1話のラストでは、彼女にとって衝撃的な展開が待っている。
(青柳美帆子)