【日本代表プレーバック】熟成と停滞の狭間で|日本 1-1 ベネズエラ(2012.8.15)

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 日本代表がベネズエラと対戦するのは、2年前のキリンチャレンジカップ以来だ。
 
 2012年8月15日、札幌ドームにベネズエラを迎えた当時の日本代表は、アルベルト・ザッケローニ監督の下、ブラジル・ワールドカップを目指すアジア最終予選の真っ只中にあった。
 
 約1か月後に控える最終予選のイラク戦を見据えたこのベネズエラ戦で、日本代表はどんな姿を見せたのか。
 
『週刊サッカーダイジェスト(2012年9月4日号)』のマッチレポートで振り返る。
 ベネズエラ戦の最大の焦点は、CBと右SBの代役探しだった。
 
【写真でプレーバック】日本 対 ベネズエラ|2012.8.15

(2012年)9月11日のワールドカップ・アジア最終予選第4戦のイラク戦でCBの今野泰幸と栗原勇蔵、右SBの内田篤人が出場停止となるため、ザッケローニ監督はCBに伊野波雅彦を、右SBに駒野友一をテスト起用。さらに現体制下で初の招集を受け、4年ぶりの代表復帰となった水本裕貴を、後半から伊野波に代えて投入し、終盤には槙野智章を右SBとして送り出した。
 
 結論から言えば、最低限の成果しか得られなかったという印象だ。駒野は1アシストと結果を残したが、伊野波はパスミスや不安定な守備が目に付き、水本も何とか及第点と言える内容。駒野はイラク戦の先発が「当確」ながら、CBの代役探しは宙に浮いたままだ。
 
 昨年(2011年)8月の韓国戦(○3-0)以来となる札幌ドームでの試合は、ほぼ満員となる4万人弱の観客を集め、日本は序盤からスピーディーな攻撃を展開した。6分にカウンターを浴びてピンチを迎えるも、川島永嗣が左手1本で弾く好セーブを見せると、徐々に日本がゲームを支配。両SBも積極的に上がり、サイドから崩しにかかるなか、14分に先制点が生まれた。
 
 ハーフウェーライン付近でボールを持った長谷部誠が、右サイドでフリーの駒野ではなく、あえて縦パスを入れる。このパスを合図に駒野が全速力でライン際を走り出すと、縦パスに反応した本田圭佑が絶妙なタッチで落とす。スピードに乗ってパスを受け取った駒野は、DFを抜き去りエリア深部にまで侵入してマイナスのクロスを配球。前田遼一が囮となって生まれた中央のスペースに遠藤保仁が走り込み、丁寧なインサイドキックでゴール左隅へ流し込んだ。
 
 長谷部のパスから遠藤のシュートまで、一連の流れは流麗かつスピーディーで、理想的と言える崩しだった。
 
 しかし、日本が主導権を握るなかで迎えた62分、香川真司のボールロストから鋭いカウンターを浴び、左サイドを崩されて失点を喫してしまう。守備の人数は揃っていたが、対応の遅れが命取りとなった。
 
 吉田麻也は失点シーンをこう振り返る。
「相手のショートカウンターに備えるなか、リスクマネジメントとしてボランチをうまく配置できなかった」
 
 74分に岡崎と前田を下げ、藤本淳吾を右MF、中村憲剛をトップ下に投入。本田を前線に上げて、実質「ゼロトップ」のような布陣となったが、最後まで攻撃陣の呼吸が合わず、機能しないまま終わった。
 
 67分、69分、75分と立て続けに訪れた決定機をモノにしていれば、日本が完勝していたはずだが、「攻撃のスイッチが入らず、スピードアップが難しかった」(香川)、「(攻撃に)精度、厚みがなかった」(本田)、「いつもより流れるような攻撃が少なかった」(遠藤)と、試合後には攻撃面の課題が多く聞こえてきた。
 
 いくつかのテストを実施したとはいえ、主力はほぼ固定されており、驚きや発見に乏しい内容だったのは事実だ。それは言い換えれば、ザックジャパンが熟成の道を歩んでいることを示すのだが、コインの表と裏のように、一方で停滞の危険性も孕んでいる。
 
 チームとしての熟成を図るなか、生まれつつある停滞感をどう打ち破るのか。指揮官のそんな苦悩を垣間見るような一戦だった。
 
取材・文:大木勇(週刊サッカーダイジェスト)