ハビエル・アギーレ監督を迎えた新生・日本代表がスタートし、8日が経過した。新監督が目指すサッカーの全貌を知るにはまだまだ時間が短すぎるが、それでも練習や試合をこなすごとに、その一端が少しずつ見え始めている。

 なかでも9月7日に行なわれたトレーニングは、まさにそれを知る絶好の機会となった。これまでの練習(あくまでメディアに公開された範囲でしかないが)は基礎技術的なメニューが中心だったのだが、この日は戦術的なものが多く含まれていたからだ。

 攻撃でいえば、DFラインからどうボールを動かし、ゴールへ向かうのか。守備で言えば、ボール保持者にどうプレスをかけ、周りの選手はどう連動するのか、といったことの徹底である。

 DF吉田麻也によれば、「ビルドアップは正確に、自分たちがボールを保持しながら攻撃していくことと、相手のカウンターを未然に防ぐこと」は、これまでの非公開練習でも強調されてきたことのようだ。

 この日の練習中、指揮官が盛んに口にしていたのは「テンポを上げろ」という言葉。ボールを止めずにどんどん動かし、相手ディフェンスがスライドし切れないスキを突いて、縦にスピードアップする。そんなイメージだ。

 攻撃に関して特徴的だったのは、一度縦にスピードアップしたら時間をかけずに攻め切ること。そこで重要な役割を担うのが、センターバックである。DF水本裕貴は言う。

「アンカー(1ボランチ)がDFラインに落ちてきたときに、センターバックのどちらかがフリーになれると思うので、そこでうまく数的優位を作ったり、攻撃にアクセントをつけたりできればいい」

 確かに先のウルグアイ戦でも、アンカーの位置に入った森重真人がふたりのセンターバック(吉田と坂井達弥)の間に下がり、3人でボールをつなぐところから攻撃を組み立てる場面が多かった。

 そうして相手の前線からのプレッシャーを外したところで、自ら前にボールを持ち出す。縦パスを入れる。あるいは前線にロングボールを入れるといったように、センターバックが攻撃の起点となるわけである。

 水本は「長い距離のパスだと、どうしても精度が落ちたり、相手の寄せが早くなったりしてしまうので、なるべくコンパクトにした状態で縦パスを入れるのが理想」だと語る。

 ところが、実際には後ろでのパス回しのテンポが上がらず、なかなか縦にスピードアップするタイミングをつかめない。結果、中盤の田中順也、細貝萌も高いポジションを取ることができずに間延びしてしまい、孤立した3トップにボールを入れても次の展開にはつながらなかった。細貝は「FWのサポートもしなければいけなし、(ボールを)もらう位置も考えなければいけない」と前の試合を振り返り、こう語る。

「今日の形を見ても分かるとおり、センターバックが持ち運んで展開していく形(を練習している)なので、(FWに縦パスやロングボールが入った後の)セカンドボールを自分がうまく拾っていければいい。自分のポジションが(攻撃に)どんどん絡んでいかないと厳しいので、そこは意識してやっていかなければいけないと思う」

 この日の練習では、メニューの後半に敵をつけずに攻撃のパターンを繰り返す練習や、紅白戦も行なわれていたが、その間、ふたつに分けたチームのメンバー構成は一度も変わることがなかった。

 ウルグアイ戦の前日、前々日に非公開で行なわれた練習でもメンバーは固定されていたといい、それがそのまま先発メンバーになったことを考えると、おそらくベネズエラ戦の先発は以下のような顔ぶれが予想される。

 ウルグアイ戦では攻撃がテンポアップせず、チャンスらしいチャンスをつくることができないまま90分間を終えてしまった。それだけにアギーレ監督の指示も、自然と熱を帯びてしまうのだろう。選手の名前を呼びながら身振り手振りをまじえ、「テンポを上げろ!」「もっと速く!」「いいぞ!」といった声をかけ続けていた。

 ベネズエラ戦での先発出場が予想される水本は言う。

「(ウルグアイ戦を)ベンチで見ていて、もう少し自分でボールを前に運んで、高い位置でプレイしたいと感じた。中盤や前線はプレスが厳しいので、だからこそ後ろでうまく数的優位を作って攻撃に厚みを加えることができれば、もう少し中盤も楽になっていくんじゃないかと思う。もう少しボールを速く動かして相手のスキをつければいい」

 徐々に明らかになってきたアギーレ監督が目指すサッカーの姿。次の試合では、それがゴールという結果になって現れるのだろうか。

 ベネズエラ戦は「テンポアップ」と「コンパクト」をキーワードに、ウルグアイ戦からの進歩を確認したい。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki