マスカット情景=マスカット/オマーン【撮影/安田匡範】

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チュニジア、エジプト、リビアと革命が続く中東。今でも毎日のように、テロや紛争のニュース が絶えません。なぜ中東では革命や政変がこんなに起こるのでしょうか。今回は、アラブ諸国内の富める国とそうでない国との複雑な相互依存関係を、中東研究家の尚子先生がわかりやすく説明します。

 まず、豊かな産油国とはどこの国のことでしょうか? なんとなく、サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、クウェートぐらいは想像がつきますか? では、石油資源をもたない国は? となると、正確に答えるのは難しいですね。

 たとえば、シリアでも石油は産出できるのですが、その量が僅かなために国内で消費してしまい、輸出するほどではありません。そうなると、産油国でも「豊かな」産油国のイメージとは異なってしまいます。

高所得国のほとんどは人口の少ない国々

 豊かな国か否かを判断するために、開発援助委員会(DAC:OECDの下部機関で途上国対象の開発援助を担当)の分類を利用してみましょう。国民1人あたりのGNI(Gross National Income:国民総所得)から算出したのが以下の結果です。

1)高所得国:UAE、カタール、クウェート、バハレーン、サウジアラビア、オマーン
2)高中所得国:レバノン、リビア、トルコ
3)中所得国: イラク、イラン、エジプト、ヨルダン、シリア、チュニジア、モロッコ、パレスチナ、アルジェリア
4)低所得国: イエメン

 高所得国についてはほとんどの方が正解!で、中所得国はかなり難しかったのではないでしょうか。中所得国定義では1人あたりのGNIが826ドルから3225ドルまでとかなり幅があるため、難しくて当然です(参考までに、日本のGNIは3万8491ドルで世界第24位、中東の高所得国の中ではカタールがトップで、10万260ドルで世界第3位です)。

 では、次の質問です。次の数字は何を意味しているでしょう?

バハレーン(131万)
カタール(205万)
クウェート(325万)
オマーン(331万)
レバノン(442万)
リビア(615万)
ヨルダン(631万)
UAE(920万)
チュニジア(1078万)
シリア(2240万)
イエメン(2385万)
サウジアラビア(2829万)
イラク(3258万)
モロッコ(3252万)
トルコ(7400万)
イラン(7642万)
エジプト(8072万)
オマーン?

 これは中東各国の人口を表しており、人口の少ない順に並べたものです。高所得国はサウジアラビアを除くと、1000万人以下の人口の少ない国なのです。逆に、イランを除くと、人口が多めの国はいわゆる「産油国」ではないという皮肉な結果になっているのがわかるかと思います。

 とくに湾岸諸国(バハレーン、カタール、クウェート、UAE、サウジアラビア、オマーン)の人口には出稼ぎの人々の人口も含まれているので、実際の「国民」の数はもっと少ないのです。たとえば、ドバイは日本でも旅行先として最近人気が高まっていますが、ドバイはUAEの連邦の一つを構成しています。そのドバイの総人口は170万人ですが、外国人労働者が150万人で、自国人はわずか20万人しかいないという驚愕の事実があります(ドバイだけではなく、カタールも8割が外国人です)。

 ですから、湾岸諸国の「国民」は上の数字よりもはるかに少ないのです。豊かな産油国では、「国民」には医療費、学費が無償であるのはもちろんのこと、国によって異なりますが、所得税や市民税といった税金はほとんど徴収されません。かたや人口の多い、非産油国には医療も教育もままならないという国も存在しているのです。

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