本田にプレッシャーをかけるアレバロ(右)。日本の中盤は、八面六臂だったこのボランチひとりに敵わなかった。 (C) SOCCER DIGEST

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 練習したのはわずか3日。フォーメーションを一新し、初代表を4人も起用。しかも相手は強豪ウルグアイ――。
 0-2の敗戦は、いくらでも弁解の余地がある。だが、それにしても見るべきもののない試合だった。

日本 0-2 ウルグアイ|マッチレポート
 
 ハビエル・アギーレ監督は試合後の記者会見で「満足している部分もある」と振り返り、「チームが戦っていたこと、失点しても落ち込むことがなかった。選手個々を見ても良かった部分があった」と語った。だが、この言葉をそのまま受け取ったら、日本が新監督に舐められるだけだ。
 日本代表は完敗した。ウルグアイに手も足も出なかった。
 
 まず、ふたつの失点に直結した坂井達弥のトラップミスと酒井宏樹のクリアミスについて考えたい。
 これらのミスは、日本代表レベルでは考えられないものだ。だが、偶発的に起きたわけではない。彼らはウルグアイのプレッシャーに気圧されて、慌ててしまったのだ。
 
 日本人の技術は世界でもそこそこ評価されているが、プレッシャーの中で発揮できなければ、それは本物の技術とは言えない。特に1点目につながった坂井のミスは、Jリーグのレベルの低さを証明するようなものだった。
 
 4-3-3も空回りした。
 このシステムが以前の4-2-3-1と違うのは、選手の距離が広がるということ。つまり集団戦によって局面を解決してきたザッケローニ時代と打って変わって、個人の力量がシビアに問われることになる。
 
 残念ながら日本は、その個人が至るところでウルグアイに敗れ続けた。
 
 最終ラインは少しプレッシャーをかけられただけで、駆け引きをする余裕がなくなった。
 パスをもらっても、すぐにキーパーに戻してしまう。敵を引きつけて、揺さぶるような芸当もできない。怖いから、すぐ縦に蹴り出す。こういう臆病な獲物を、試合巧者のウルグアイが見逃してくれなかった。
 
 中盤の3枚も、力不足は明らかだった。
 ボールは奪えず、展開力も乏しい。こちらも目の前の敵を外す度胸と技量がないから、サイドに散らすしかない。
 翻ってウルグアイのアンカー17番のアレバロは、ひとりで奪い、ひとりで敵をかわして、ひとりで好配球を見せていた。日本の中盤は、アレバロひとりに敵わなかったのだ。

 いいボールが入らなかったこともあるが、前線の3枚も機能しなかった。
 17分に岡崎慎司が左サイドを突破して皆川佑介のヘディングシュートを演出したが、ふたりがチャンスを創ったのはこれくらいだった。本田圭佑はしばしば強引なドリブルでファウルを誘ったが、フリーキックは不発に終わった。ボールを失う回数も多かった。
 
 ピッチに立った15人の中で、及第点に達していた選手はひとりもいない。システムを変えたことで、ザッケローニ時代に覆い隠してきた個人の弱さが暴露されてしまったのだ。
 
 アギーレ新体制は、文字通りゼロからの出発となった。
 
 冒頭に述べたように、この敗戦はまだ言い訳ができる。だが火曜日(9月9日)のベネズエラ戦では同じ失敗は許されない。少なくとも、この試合から進歩したところは見せなければならないだろう。
 相手がウルグアイより落ちるとはいえ、日本の選手が急に上手くなるわけでもない。この国の個人の弱さを、どうカバーするのか。新監督の手腕が試される。
 
取材・文:熊崎敬