強烈なミドルはポストを直撃。惜しくも初ゴールは逃したが、百点満点のデビュー戦より得るものは大きかったはずだ。 (C) SOCCER DIGEST

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 人気先行──。現役慶応大生、イケメン、さらに日本代表の肩書きも付けば、メディアは放っておかない。実際、8月28日の代表メンバー入り後は、ちょっとした「武藤フィーバー」が起きていた。
 
 ただ、取り上げられるのは、当然ながら活躍した場面のみ。そうした映像などを見ると、虚像の武藤嘉紀が作られているように思えてしまう。
 
 たしかに中断明け後のJリーグでゴールを連発し、直近の鹿島戦では全2得点に絡む働きを披露した。とはいえ、若さゆえのミスがちらほら目につき、ここまで決定機を外すシーンが意外に少なくない。みずからも「シュート精度が課題」と口にしているように、実像はまだまだ未熟で荒削りなアタッカーなのだ。
 
 A代表デビューとなったウルグアイ戦で、上手さよりもミスが目立ったのは、ある意味、必然だろう。「軌道はイメージ通りだった」88分のミドルシュートは、ポスト直撃のたしかに惜しい一撃だった。だが、その前のくさびを入れ損なったパスミスはいただけなかった。
 
「やはり最初は緊張してしまいました」と振り返ったウルグアイ戦は結局、0得点・0アシスト。後半途中からピッチに入る際、ハビエル・アギーレ監督から具体的な指示がなかったうえに、63分過ぎから「練習でもやっていなかった」と言う4-4-2の右サイドを任されたこともあり、混乱したのだろう。持ち前のスピードと突破力を活かせる局面もなかった。
 
 ただ、メディア的にはおいしくなかったかもしれないが、本人にはいい試練になったはずだ。大学3年生の時に「ユニバーシアードの代表に選ばれなかった時点でプロになる決意を固めました」と言う武藤は今年、FC東京加入1年目にして堂々とレギュラーを張り、アギーレ新体制の初陣で代表デビューとプロ入り後はトントン拍子にきていた。その勢いのまま札幌で代表初ゴールまで決めていたら、本人も勘違いしてしまいそうなフィーバーになっていたかもしれない。
 
 その意味でも、札幌で“ひとまず”躓いたのはむしろ有意義だったはずだ。ここから這い上がっていく――そんな意気込みが、代表デビューに浮かれず、厳しい顔つきで記者団の質問に答えていた武藤の表情から見て取れた。
 
取材・文:白鳥和洋(週刊サッカーダイジェスト)

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