長友は開幕戦でスタメン落ち。本田にしてもポジション争いの渦中にある。長旅を強いて、親善試合に招集する必要性はあったのか。(C) SOCCER DIGEST

写真拡大 (全3枚)

『週刊サッカーダイジェスト』の人気コーナー「セルジオ越後の天国と地獄」をサッカーダイジェストWebで公開中!
 
※週刊サッカーダイジェスト9.16号(9月2日発売号)より
 
――◆――◆――
 
 アギーレ監督の初陣となるウルグアイ戦、ベネズエラ戦に臨む日本代表のメンバーが発表されたね。
 
 みなさんはどう感じたかな? 僕は、残念な気持ちでいっぱいだよ。この4年間の反省が生かされず、ザッケローニの時と同じように興行優先のメンバーになってしまった。
 
 欧州のリーグはまだ開幕したばかりだ。メンバー発表の時点で本田や長友がプレーするセリエAは開幕すらしていなかった。試合勘はベストとは言えないし、ポジション争いの真っ只中でもある。そんな選手たちを、なぜ、このタイミングで呼ぶ必要があるのか。
 
 それは、スポンサーや放映権を買ってくれたテレビ局のため。そして、観戦チケットを完売させるために他ならない。この4年間、欧州組を毎試合のように呼び戻したため、彼らが疲弊してコンディションを崩したり、クラブのポジション争いで厳しい状況に置かれたりしてしまった。当時のことをしっかり反省したとは到底思えないよ。
 
 この4年間とブラジル・ワールドカップでの結果から、もう代表に招集されるべきではないと思う選手まで選ばれている。こうした状況を見ると、結局、人気重視、知名度重視なんだと思わざるを得ない。ブラジル・ワールドカップの惨敗を検証し、新たな一歩を踏み出すのに相応しいメンバーとは感じられなかったし、強化ではなく「興行」が優先された印象だよ。
 
 また、スポルティングの田中が今回、招集されたけど、彼はこの夏に移籍したばかり。まだなんの結果も出していないわけで、リーグで素晴らしいインパクトを残してから呼んでも遅くない。それに、もし彼がレイソルに所属していたら、このタイミングで呼んでいただろうか。
 
 招集する予定だったという原口にしても同じだよ。なぜ、リーグで結果を残していない選手を招集するのか、僕には理解できない。こうしたことをするから、話題性を重視したと思われたり、欧州組至上主義だと言われたりするんだ。
 
 クラブで活躍している者だけに代表の資格がある――。この当たり前のことが、ザッケローニ時代から、どうもないがしろにされている気がしてならない。
 もっとも、このメンバーは本当にアギーレ監督が選んだのだろうか? 日本協会がメンバーの大半――特に欧州組に関しては――を選んだんじゃないのかなって勘ぐりたくもなる顔ぶれだ。
 
 4年前の9月に行なわれたパラグアイ戦とグアテマラ戦は、日本協会が代表メンバーを選び、ザッケローニはスタンドから観戦した。実はそれと似ていて、今回はスタンドではなくベンチから観戦する、という感じなんじゃないかな。
 
 今回のメンバーには坂井、松原、森岡、皆川、武藤と初選出の選手が5人いる。彼らはアギーレ監督の好みなのだろうけど、プロ2年目の坂井は今季たったの5試合、ルーキーの皆川にしても8試合、わずか328分しかプレーしていない。
 
 もちろん、彼らがこの先成長を続け、代表に定着していく可能性は大いにあるし、ポテンシャルを秘めた選手たちでもある。だけど、これまでの実績を考えれば、もう少し慎重に選ぶべきで、この選出はちょっと乱暴すぎやしないかな。活躍次第でこの先、いくらでも選出する機会があるわけだし、注目を浴びすぎて若い芽が潰れてしまうリスクだってあるわけだからね。
 
 欧州組に関してもそうだけど、クラブで活躍していない選手、しっかりとプレーしていない選手を代表に選んでしまうと、代表の重みや価値が著しく低下する。そのことを日本協会は理解すべきだと僕は思う。