U-16世代を率いて、今回が3度目のアジア選手権となる吉武監督。ポゼッションサッカーの進化形は見られるか。(C) Getty Images

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 前回2013年のU-17ワールドカップで、吉武博文監督率いる「96ジャパン」はベスト16止まりながらも、圧倒的なボール支配をベースにしたサッカーで、世界に大きなインパクトを与えた。あれから1年。来年のU-17ワールドカップへの出場権を勝ち取るべく、再び吉武監督が指揮を執るU-16日本代表「98ジャパン」が9月6日からのU-16アジア選手権に臨む。5大会連続出場を目指すチームを、4つのテーマから見ていきたい。
 
1)吉武監督が標榜するサッカーとは?
 端的に言えば、「全員でボールを保持するサッカー」となる。吉武監督自身がこう説明する。
「極端な話、90分のうち、75分間はボールを保持して、相手が疲れてきた残り15分で勝負をかけていい」
 
 圧倒的なポゼッションによって、相手のスピードやフィジカルの強さを打ち消す狙いがあるのだ。その背景には、日本のウイークポイントと言われるフィジカル面での勝負を避け、ストロングポイントである運動量と俊敏性、技術の高さで勝負する、という方向性がある。
 
 個々が的確なポジションを取り、テンポよく相手陣内でパスをつないでいく。重要なのがこの「相手陣内」というところ。自陣に引いた状態で安全に回すポゼッションのためのポゼッションではなく、相手陣内でリスクを負ってパスをつなぐ。ゴールという最終目標を実現するためのポゼッションという意味が、「相手陣内」という言葉にある。
 
 このスタイルは、吉武監督がずっとコンセプトに掲げているものだ。U-17ワールドカップで8強入りした94ジャパンは本大会前から、96、98ジャパンはチーム立ち上げ時から追求しているが、アジア予選前の完成度という面では今回の98ジャパンが一番高いと言える。
 
 吉武監督は併せて、96ジャパンではU-17ワールドカップ本大会前から取り組んだ浅い最終ラインのコントロールに、すでに着手している。指揮官は言う。
「ロングボールに恐れることなく、できればセンターライン付近までラインを押し上げる気持ちでやってほしい」
 
 吉武監督の要求レベルは間違いなく上がっている。それを実践できるかがポイントだ。
 2)98ジャパンの長所と短所は?
 前回の96ジャパンに比べ、180センチ超のフィールドプレーヤーと左利きが多い。これが今回の98ジャパンの長所になっている。
 
 96ジャパンの最終ラインは180センチオーバーの選手がひとりだったのに対し、今回は、185センチの麻田将吾、180センチの富安健洋と森岡陸の3人がいる。前回のアジア選手権ではロングボールに苦しみ、出場権の懸かった準々決勝・シリア戦ではヒヤリとする場面を多く作られた。やはりアジアを勝ち抜くには、それなりに高さは必要だ。
 
 そして、「11人中半分が左利きでもいい」と吉武監督が語るように、左利きの選手が重宝される。左利きの選手を多く配置すれば、左右に偏りなくボールを動かせるからだ。なかでも麻田、藤本寛也、菅大輝といったセンターラインに精度の高い左足を持つ選手が揃うのは強みだ。
 
 短所は運動量が少ない点か。もっとも、標高の高い菅平で直前合宿を組むなど対策はしており、問題はないだろう。
 
3)98ジャパンのキーマンは?
 攻撃面でのキーマンは、左SBの堂安、中盤の田中碧と菅、FWの佐々木、そしてCBコンビだろう。前線では、田中と菅と佐々木のトライアングルが、いかに高い位置でボールを支配できるかがカギを握る。
 
 菅平合宿で吉武監督は、最終ラインから前線への素早い縦パスをしきりに要求していた。その点でキーマンとなるのが堂安とCB麻田で、ともに前線に送るフィードは正確だ。ふたりからの縦パスを引き出すためにも、前線の動きが重要になる。
 
 守備に関しては、麻田の展開力を生かすために、CBでコンビを組むであろう富安、森岡、下口稚葉が守備のバランスを見て、ラインコントロールとカバーリングをいかにスムーズにできるかが、ポイントとなる。
 
4)ズバリ、予選突破の見通しは?
 日本は4大会連続でU-17ワールドカップ出場を果たし、吉武監督は過去2大会連続でチームを世界へと導いている。94、96ジャパンでの経験を踏まえ、着々と準備を進めており、チャンスは十分にあるだろう
 
 これまでやってきたことを100パーセント出し切れば、かなりの確率でアジアを突破できるはずだ。ただし、出場権を懸けた準々決勝の相手は、タイ、韓国、オマーン、マレーシアのいずれか。実力を考えれば、韓国か地元・タイになるだろう。
 
 どちらも難敵なのは間違いないだけに、やはりこれまで積み上げてきたものを出せるかが重要になる。
 
文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)