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「好きなことを仕事にできてイイなあ」とよく他人のことをうらやましく思うことはありませんか? 確かにその通りです。例えばプロ野球選手やデザイナー、あるいはプロミュージシャンなど。もっとも、より価値の高い成果を社会に提供し、単価の高い仕事を受注できるようになり、仕事のできる範囲を拡大していったりといくという意味での「キャリアアップ」を目指すという点では、こうした職業の人たちも普通のビジネスパーソンとあまり大差ありません。

知人に、決してぜいたくな暮らしとまでは言えませんが、ギター講師を本職としているミュージシャンがいます。彼はレッスンだけでなく、他にもいろいろな仕事を受けられるように取り組んでいます。今回は「講師」としてのキャリアアップにどう臨んでいるかを、ひとつの例として紹介します。

最初はスタジオミュージシャンやツアーミュージシャンを目指していました。そのために、大学在学中からご両親には内緒でYAMAHAの「プロコース(=現在ではミュージックアカデミーに改称)」に通っていたそうです。ここを修了するとYAMAHAの講師になれます。もしも一般的な企業に就職してしまったら音楽活動に制限がかかるに違いない。でもギター講師としての仕事をしていれば、少なくとも楽器に触れる時間は確保できると考えたそうです。半年の留年を経て(笑)どうにかエレキギター講師の資格を取得できたそうです。そこからさらに、アコースティックギターとウクレレの講師資格も取得し、他の教室でもベースやクラシックギターなども扱うようになったとのこと。こうしてヨコ展開(自分がレッスンできる楽器を増やしていくこと)は、自分の仕事の幅を広げるという意味でひとつのキャリアアップだと思います。

楽器の講師ろいうのは、もちろん生徒さんに楽器を教えるのが仕事ですが、経験が伴った指導者でなければ内容が伴いません。バンド活動など演奏する機会を常に確保することは、仕事とは別にして楽しいことでもありますが、同時に自らが演奏の現場に立ち続けることで、ミュージシャンとしてのアイデンティティ確保やモチベーションの維持、演奏技術の向上などにも有効です。こうした長期に亘るモチベーションの維持と技術の向上が講師としてのキャリアアップにさらにつながります。演奏者としてのさえがあればこそ、指導としても生徒さんに説得力を持つことができます。また場合によっては、バンドでライブがしたい生徒さんに対して、自分の経験に裏打ちされた適切な指導も可能です。もしもこのミュージシャンが単に教室で生徒さん相手にレッスンをしているだけでは、他のミュージシャンなどとのと交流の機会も持つことは多くなく、なかなか仕事の幅も広がりません。

私のこの知人は現役ミュージシャンであると同時に、常に前向きに講師というビジネスの成功とは何かを考え続けています。どうすれば生徒数を確保できるか。そしてその生徒数を常に維持していけるか。例えば、自身がデモ演奏などで教室の宣伝活動を行い新規の生徒さんを募る。さらに担当できる楽器を増やしていくうちに、いろいろな楽器のレッスンを希望する生徒さんに触れていく。そして通ってくれる生徒さんに納得のいく指導を提供する。こうしてレッスンの継続へとつなげています。

もちろん人を相手にするビジネスですから、身なりや話し方などに気を使うのは他の業種の営業担当者がクライアントに商品やサービスの説明を行ったり、企画担当者が社内外でプレゼンを行ったりする時と同じことだと思います。

「好きなことを仕事にできてイイなあ」とよく他人のことをうらやましく思うことはよくありますが、意外とそういう人に限って、ごく普通のビジネスパーソンの感覚で日々の活動を淡々ときっちり丁寧に行っていたりもします。もしも「憧れ」の仕事をしている人が周囲にいるならば、一度、そういう視点でその人に接してみると、自分のキャリアについてのよい勉強になるかもしれません。

<著者プロフィール>片岡英彦1970年9月6日 東京生まれ神奈川育ち。京都大学卒業後、日本テレビ入社。報道記者、宣伝プロデューサーを経て、2001年アップルコンピュータ株式会社のコミュニケーションマネージャーに。後に、MTVジャパン広報部長、日本マクドナルドマーケティングPR部長、株式会社ミクシィのエグゼクティブプロデューサーを経て、2011年「片岡英彦事務所」を設立。企業のマーケティング支援の他「日本を明るくする」プロジェクトに参加。