「テロとの戦い」で何十万もの市民が犠牲になった

 テレビのニュースを見ていた。イラク情勢だ。スンニ派の過激武装組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」と政府軍との戦闘は激化する一方で、拘束された政府軍兵士の多くが処刑されたという。とても憂慮すべき事態ですとコメンテーターが言う。今のイラクは国家崩壊の危機にある。そしてもしもそんな事態になったら、スンニ派とシーア派の争いはアラブ全域に連鎖する。

 イラクからの支援要請を受けたアメリカでは、空爆など具体的な手を打てないオバマ政権を、共和党が激しく批判している。ニュースを見ながらあきれる。そもそもこんな混乱をイラクにもたらした責任は誰にあるのか。共和党のブッシュ政権がイラクに武力進攻してフセイン政権を瓦解させたからじゃないか。

 このときブッシュ政権は武力侵攻の大義を、フセイン政権が大量破壊兵器を隠し持っているからと説明したが、その確たる証拠がまだないとして、ロシアと中国、フランスやドイツは激しく反対した。

 でもアメリカは武力侵攻に踏み切った。国連の場では多くの国が反対したけれど、テロとの戦いを支持する国もあったからだ。特に強く賛同を示したのはイギリス、オーストラリアとスペイン、そして日本だ。特に日本は態度を決めかねていた複数の非常任理事国に、アメリカ支持に回るようにとの裏工作まで行っている(結局はすべてに拒絶されているが)。

 時代は小泉政権。このときに北朝鮮の脅威を理由に、アメリカを支持することが日本の国益などと訴えた識者や大学教授の多くは、今は安倍首相の私的諮問機関である安保法制懇の主要メンバーとなって、集団的自衛権の導入を強く主張している。その理由として彼らが提示した仮想の状況は朝鮮半島有事で、日本のパートナーはアメリカ。論旨の骨格は11年前にブッシュ政権を支持したときと何も変わっていない。テロとの闘いを支持した帰結として、イラクでは何十万人もの市民が犠牲となり、現在の国家崩壊に近い悲惨な状況があるのに。嘆息するほどに同じことを繰り返している。

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