マクロスライド初適用へ 年金はどうなる?

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来年から本格的な年金支給額の抑制が始まる

「厚生労働省は来年4月、年金の伸びを物価の伸びより低く抑える制度(マクロ経済スライド)を初めて発動する。同省は26日、同スライドによる減額分を織り込んだ来年度の年金予算10兆9587億円(一般会計)を概算要求した」。8月27日、このように毎日新聞が報道しました。

来年から本格的な年金支給額の抑制が始まり、その影響は公的年金受給者4,000万人に及びます。現況、デフレ時の支給額減額を行わなかったための調整で、平成25年10月から▲1%、26年4月から▲1%(2013年の名目賃金変動率が0.3%のため▲0.7%に修正)を実施、27年4月から▲0.5%年金金額を下げます。

2014年も景気回復と消費増税により、物価と賃金が上昇するとの判断から、27年4月に懸案のマクロ経済スライドを実施するとしています。厚生労働省は財政悪化分を▲1.1%と試算していますので、27年の改定幅は▲0.5%+▲1.1%=▲1.6%と予想されますが、最終的には、名目賃金変動率と物価変動率を踏まえて、減額率が決定されます。


少子高齢社会の深化からマクロ経済スライドの実行は必要施策

マクロ経済スライドとは、本来の年金支給改定率に加え、将来の年金財政が改善するまでの間、年金支給額を調整します。一人当たり賃金の伸びや物価の変動を基礎としながら、現役人口の減少(現役全体でみた保険料負担力の低下)や、平均余命の伸び(受給者全体でみた給付費の増大)の分だけ、スライド調整率で給付額を抑制する方法。毎年1〜2%程度、受給者の年金を減少させる仕組みです。

日本の年金制度は少子高齢社会の深化から、公的年金受給権者は平成24年末3,942万人になり今後も増加します。一方、公的年金加入者(被保険者)は毎年減少しています。家計であれば収入は減少し、支出は増大する構図です。

将来の年金給付は現在から大きく下がり、現役世代の所得代替率50%を上回る水準を目指しています。人口は1億人割れが必至で、高齢者比率も増大しますので長い調整期間が必要と思われますが、目標達成のためマクロ経済スライドは実行しなければならない施策と考えます。

ただ、仮に来年実施されると、平成25年度上期の公的年金支給額からは、▲1.0%+▲0.7%+▲0.5%+▲1.1%=▲3.3%の減額になります。全人口の3分の1の収入が▲3.3%減少しますから、支出も▲3.3%減ります。日本のGDPの60%は個人消費が占めていますのでGDPへの影響は▲1%下がる効果があります。消費税5%増税と合わせて、景気の腰折れ要因になる懸念がぬぐえません。このため、遅々として進まない3本目の矢「民間投資を喚起する成長戦略」実効に向け、TPPの成立、岩盤規制の撤廃などの早期実現を切に願っています。


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