メガバンクが8月の住宅ローン金利を引き下げた。主に10年固定型で、三菱東京UFJ銀行は0.1%引き下げて年1.3%へ。みずほ銀行は0.05%の引き下げで1.3%に。さらに、つねに頭ひとつ抜きんでている三井住友信託銀行は、0.05%引き下げて1.05%とした。これは同行の過去最低水準だという(日本経済新聞より)。

 引き下げの背景にあるのは、10年固定型の金利が指標としている10年物国債の長期金利が、7月に0.5%台前半の動きになったことだ。今年前半にも同様の動きとなっていたが、足元の住宅ローンの需要は減退しており、銀行間の競争はいちだんと熾烈になっている。その影響が、過去最低水準の金利に表れているといえそうだ。

一方、変動型は変わらない。三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行は0.775%、三井住友信託銀行はやや低く0.725%のままとなっている。この水準は十分低いのだが、ネット銀行などと比べると見劣りする。例えば、ソニー銀行の変動セレクト住宅ローンは0.589%となっているし、イオン銀行はさらに低い。取扱期間は14年12月31日までとなっているが、なんと0.57%。おそらく、変動型では、過去も含めて最低水準であろう(ちなみに10年固定型は1.25%とメガバンクとほぼ同じ水準)。

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■イオン銀行に注目すべき理由

私は、現在、このイオン銀行を非常に注目しており、当面、住宅ローンでは同行の優位が続くと予想している。以下にその理由を述べたい。

まず、この低金利(特に変動型)を提供できる理由は、イオン銀行が高い収益性を有しているからである。銀行の財務情報の中に「資金運用利回り」という項目がある。調達した資金を最終的に何パーセントで運用したのかというデータで、利回りが高ければ高いほど、運用力が高いことを表している。イオン銀行の2014年3月期の資金運用利回りは3.15%となっている。これは、他行と比較して、ズバ抜けて高い数値となっている。

例えば、同じく2014年3月期のメガバンクの場合、1%以下のところが多く、高くても1%台前半にとどまっている。また、ネット系銀行をみても、高いところでも2%台後半だ。3%台がいかに高いかが理解できよう。

なぜイオン銀行が、ダントツの資金運用利回りを確保できているのか。おそらく、消費者向けローンが急増しているためと考えられる。同行の14年3月末のキャッシング残高は3227億円と前年比で約4割増えている。貸出金残高が1兆141億円なので、貸出金に占めるキャッシングは3割強。これはあくまで推測だが、このキャッシングで得られる利息収入のおかげで、3.15%という資金運用利回りが確保できているのだろう(ちなみに銀行全体の貸出約定平均金利は14年5月で0.779%しかない)。

このように、イオン銀行が個人向けキャッシング残高を増やせている要因には、2013年1月に、イオンクレジットサービスと経営統合をしたことも関係していると思われる(現在は金融持ち株会社イオンフィナンシャルサービスに移行)。銀行のディスクロージャー資料をみると、クレジットカード債権の運用などで、資金運用利回りが改善したことを公表しているからだ。

たしかに、イオン銀行の貸出金に占めるキャッシングの比率は、標準的な銀行としては偏っているといえる状態。それをリスクとみるかどうかだが、イオン銀行自体がリテール(個人取引)ビジネスをメインとしているだけに、王道を行っていると言えるのではないか。ソニー銀行は、貸出のほとんどを住宅ローンが占めている。メガバンクも小口融資を強化する方針と伝えられているし、すでにネット系銀行はかなり力を入れている。

イオン銀行のキャッシング残高は、今年度に入ってからも伸びている模様。したがって、利鞘の改善は続いていると想定される。それを原資として、銀行間の熾烈な住宅ローン競争を引っ張っていきそうだ。当分、同行が台風の目となるだろう。

文/松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。最新刊に『人生を楽しむマネー術』(共編著)。