急造チームの東京都U−12、バルサ相手に見せた個々の「成長力」に期待

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ジュニアサッカーワールドチャレンジの決勝戦に残ったのは、前年度王者のバルセロナと東京都U−12の2チームだった。

 東京都U−12は、都内各ブロックのトレセン活動を通じて評価された選手たちが集まった、いわば「東京都の代表チーム」(米原隆幸監督)。19名の選手たちは、横河武蔵野FCのような強豪クラブから、小学校単位のスモールチームまで多彩な所属先を持つ。それだけに教えられてきたサッカーの哲学もバラバラで、戦術的な統一感は持たせづらい。

 前回大会でもチームを率いた米原監督は「去年は『ポゼッションでもバルサを上回るチームを作ってやる!』くらいの気持ちで始めたけれど、やっぱり寄せ集めのチームなのでコンビネーションには限界がある。無理があった」と苦笑する。今回は選考の段階からある程度割り切って、特に攻撃は“個”の強さを押し出す形でチームを組んだ。結果として誕生したのは、快足ウイングの栗原祥太(国分寺第五小SC)ら前線の選手がゴリゴリと仕掛けていく、日本勢の中ではちょっと異彩を放つチームである。

 バルセロナを率いるマルセル・サンス・ナバーロ監督もそれは感じていたようで、「日本の他のチームとはかなり違うスタイルを持っていて、一番の特長は縦への速さがあることで、ダイレクトプレー(後方から前線に直接放り込むプレー)を使ってくる。この大会はポゼッションを重視するチームと当たってきただけに、選手たちにはこの相手と当たったときに起こり得るリスクについて十分に説いた」と言う。

 試合前のミーティング時間はこれまでで最長だったそうだが、何も相手対策だけに費やしたわけではないだろう。それは試合に臨む彼らの空気感でよく分かった。気迫充溢。立ち上がりからのラッシュで東京を圧倒的に押し込んだ。「これまでの試合と違った。もう少し、のらりくらりと来るのかと思っていた」と米原監督も面食らう、いきなりのトップギアである。思い出すのは昨年の決勝。ここでもバルサは“ギアが違った”。リバプール相手だったからと思われたその光景は、どうも違ったようだ。ファイナルだから、彼らのギアが違ったのだ。

 開始早々に失点した東京は17分にも追加点を許し、これでほぼ勝負の行方は決まってしまった。攻撃でも守備でも良さを出すどころではない状態で、前半はまさに完敗。プレーの意図がバラバラになってしまった選手たちの様子には「チームとして立ち帰るモノがない」(米原監督)急造ゆえの悲哀も感じられた。

 ただ、東京の選手たちもハーフタイムを挟んで持ち直した。国際試合の経験がほとんどない彼らにとって未知の時間だった前半25分を経て得た経験値を後半のピッチに反映させる。「こいつら学習能力あるな」という米原監督の実感どおり、守備での間合いの取り方一つをとっても進歩を感じさせる。善くも悪くも、攻守で個がさらされる急造チームだからこそ、小学6年生個々の「成長力」は確かに実感できた。

 激戦を終えて、米原監督は「相手が本気で来てくれて、この経験は相当に残ると思う。観ている人たちも、『普段やっている選手たちがこんなにできないのか』ということが感じられたと思う。これが本当の生きた経験」と総括した。この経験を糧とした彼らの今後の成長に期待したい。

文=川端暁彦