自転車ブームといわれて久しい。流行は別として、都市部・地方を問わず便利な生活の足であることは間違いない。ただし、乗り過ぎは禁物のようだ。

 先月、英ロンドン大学の研究グループから男性機能とサイクリングに関する調査報告が出された。研究者らは2012〜13年に、男性サイクリスト約5000人を対象とした調査を実施。自転車に乗っている時間と、自己申告による勃起不全(ED)の有無、医師の診断による男性不妊および前立腺がんの発症との関連を調べた。

 調査結果では、自転車漕ぎの時間とEDとの関連は示されなかった。巷に流布しているペニスがサドルに圧迫されて生じる「自転車ED」は、この調査においては否定されたことになる。もともと自転車EDは、自転車競技の選手や長時間──週に24時間以上(!)自転車に乗っている米国の警察官などを対象にした調査結果が注目されたもの。日常生活で乗る程度では、あまり関係がないのかもしれない。男性不妊についても同様の結果だった。

 ところがだ。50歳以上の男性では、1週間あたりの自転車漕ぎ時間が長くなるほど、前立腺がんリスクが上昇することが判明したのである。例えば、1週間あたり8.5時間を超えて自転車を漕いでいる男性の前立腺がんリスクは、3.75時間未満の男性の6.14倍に跳ね上がった。1日あたりに換算すれば1時間強。50歳を超えて、自転車通勤を敢行している男性はハイリスク群に該当すると思われる。また、週に3.75時間以上〜8.5時間未満の自転車漕ぎでも、3.75時間未満よりリスクが約3倍高かった。

 先行研究から指摘されている自転車のリスクは、性機能に関するものが多く、前立腺がんとの関係について考察した調査結果は今回が初めて。もちろん、自転車=前立腺がんという因果関係が証明されたわけではない。しかし、がん年齢の40歳を超えたあたりから自転車漕ぎの時間を徐々に減らしていく方が無難だろう。

 せっかく、気持ちよく身体を動かしているのに、裏目に出ては元も子もない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)