香川が真ん中に入ってしまう現象について、これまで僕は、再三指摘してきた。ザックジャパンの一番の問題点。俯瞰で眺めたとき、いち早く目に飛び込んでくる違和感と言ってよかった。
 
 しかも、香川の右利きは「きつい」。癖が強い。その下で構える長友も右利きなので、日本は左サイドから奥行きのある攻撃ができにくい状態にあった。少なくとも左右対称では全くなかった。左サイドのスペースは、スカスカの状態にあった。

 これは、うっかりしていると、どのチーム陥りやすい現象だ。それは9人に1人と言われる、左利きの人数と大きな関係がある。スタメンに1人いれば良い方。その絶対数の不足も、左右対称のサッカーを実現させにくくさせている大きな要因だ。

 ザックジャパンの先発メンバーでも、左利きは本田ただ一人。だが彼は、左利きがきつい選手ではない。かつての中村俊輔や名波浩とは、同じ左利きでもタイプが異なる。真ん中で起用しても、進行方向を読まれにくいボールの持ち方をする。そのうえキープ力もある。ボールを収める力がある。

 さらには、キック力もある。左サイドではなく、むしろ切れ込んでシュートが狙える右サイドで起用したくなる選手だ。香川が左に回らざるを得なかった理由もそこにある。

 2012年11月、マスカットで行われた、アジア最終予選対オマーン戦。香川はこの試合に出場していなかった。4−2−3−1の3の左で先発したのは岡崎。そして、後半のなかばに行われた選手交替で、その岡崎のポジションに入ったのが酒井高徳だった。

 長友、酒井高徳。以降、2人のサイドバックが縦に並ぶことになったこの時の左サイドが、僕には、とてもバランスの良く映った。少なくとも陣形は、左右対称になっていた。

 右利きなのに、左利きのようなボール操作ができる酒井高徳のプレイスタイルと、それは大きく関係していた。日本は、交替を機に1トップの座に就いていた岡崎のゴールで、勝利をものにしたが、チャンスをお膳立てしたのも交替で入った酒井高徳だった。その左サイドからの折り返しが、この決勝点のアシストになった。

 ザックジャパンが挙げたゴールの中で、これは最も理想的なゴールとして、僕の中では記憶されている。

 右からのセンタリングと左からのセンタリング。ゴールに繋がりやすいのはどちらか。答えは左なのだという。データはそう語っているらしい。

 右回り(反時計回り)の攻撃より、左回り(時計回り)の攻撃に、相手の守備陣は意外性を感じている。右センタリングには慣れているが、左センタリングには慣れていない。これも、左利きの人数が少ないことと深く関係していると考えていいだろう。

 思えば、ブラジルW杯決勝対アルゼンチン戦で、ドイツが決めた決勝ゴールも、左からのセンタリングだった。左サイドを縦に抜けたシュールレの折り返しを、ゲッツェが胸とラップ&ボレーで蹴り込んだものだが、右利きのシュールレが、左サイドを縦に抜け、左足で上げる姿はごく自然だった。違和感のない動きだった。例のオマーン戦の酒井高徳的だった。

 ザックジャパンが解決できなかったこの問題に、アギーレはどう向き合うのか。

 注目されるのは、アギーレが今回、招集した田中順也だ。今季からスポルティング・リスボンでプレイするこの選手を、なにを隠そう僕は以前にも、代表チームに入れるべきだと書いたことがある。彼が4-2-3-1の3の左に入れれば、日本の攻撃は円滑になる。左右対称になる。得点の可能性はより高くなる。中に切れ込んでも、強いシュートが打てない香川より、ポジションの適性は遙かにあると思ったからだ。

 スポルティングは、今季もチャンピオンズリーグ本大会に出場する、ポルトガルの名門だ。ポルトガルリーグと言えば、たいしたことのないリーグに映るが、欧州のリーグランキングでは、スペイン、イングランド、ドイツ、イタリアに次ぐ現在第5位だ。来年には、イタリアを抜いて4位に上がることが確実視されている上り調子にある。