思わず二度見してしまう、大人のためのシュール&ブラックすぎる絵本8選

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子どもの時に読んでもらった絵本って、どこか教訓めいたものだったり、「明日もきっといいことがある」と信じられるような、幸せな気持ちになるものが多かった気がします。

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しかし!この世には、たっぷりと皮肉が効いている、ブラック&シュールな絵本もたくさんあるってご存知ですか? 読んでいてイヤ〜な気持ちになるのに、なぜか人々を惹きつけてやまない魔力を持っているのが特徴です。

今回は、思わずニヤリと笑ってしまう、ブラック&シュールすぎる絵本の魅力をお伝えしたいと思います。

■きみはパンダの秘密を知りたいか!?

まずご紹介したいのは、第6回MOE絵本屋さん大賞2013で第6位も受賞した、ポップな色の魔術師tupera tuperaさんが描く『パンダ銭湯』(ブロンズ新社)という絵本です。

皆さんは、あの愛くるしいパンダたちが、大きな秘密を抱えていることをご存知ですか?
見ているだけで癒されるパンダですが、その可愛さを保つために、毎日●●をしたり、血のにじむような努力を重ねていることを知っていますか?

その秘密は、パンダ以外入店禁止の「パンダ銭湯」をのぞけばわかります!

パンダ銭湯は、一見普通の銭湯ですが、こだわりなんかも見え隠れしていて、備え付けのシャンプーは「スーパーワイルドシャンプー」、脱衣所にはえいようまんてん「竹林牛乳」なんかがあります。パンダ同士の社交場にもなっているようで、飼育員さんの噂話も聞こえてきます。

あ、今どこからか「チャ!」という音が聞こえてきたような……。知らないフリ、知らないフリっと……。

ここでパンダの秘密を紹介すると、パンダ界の重い規約違反に該当しますので、秘密をどうしても知りたい方は、パンダ銭湯に極秘で潜入するか、絵本をこっそり読むかしてみて下さいね!

■一切の希望を捨てて読んでみて!

「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」これは、ダンテの『神曲』という本に出てくる銘文ですが、続いてご紹介したい絵本は、まさに「一切の希望を捨てて」読んで頂きたい絵本です。

皆さんは残酷で不条理な世界を描き続けた「エドワード・ゴーリー」(1925-2000)という、アメリカの絵本作家をご存知ですか?

独特の韻を踏んだ文章と、独自のモノクローム線画で、ユニークな作品を数多く発表し続けた作家です。また劇場の舞台芸術なども手掛け、幅広いジャンルで活躍し、その高い芸術性が「大人のための絵本」として、世界各国で熱狂的なファンに支持されています。

ゴーリーと言えば、ヴィクトリア朝に広まった、教訓めいた物語のパターン……「善は報われ、悪は罰せられる」という世界観を、涼しい顔でひっくり返した人物です。

例えば、名前にA〜Zまでの頭文字をもつ26人の幼い子たちが、ABC順に26とおりのかわいそうな死に方をしていく『ギャシュリークラムのちびっ子たち―または遠出のあとで』(河出書房新社)や、孤児になった女の子が、つらい寄宿舎生活に耐えかねて脱走し、無頼漢にさらわれ、さらなる不幸に突き落とされ続けていく……という、全く救いがない、各ページに悪魔が描かれている『不幸な子供』(河出書房新社)といった作品などを描いています。

ゴーリーの世界では、子どもは善であれ悪であれ、理不尽に死ぬほかはないようです……。

しかし描かれていたのは、残酷なものばかりでもありません。

例えば、A〜Zまで、26の不思議な生き物たちが集ったゴーリー版「幻獣辞典」である『まったき動物園』(河出書房新社)という絵本では、地球上の動物園では絶対に見ることができない、可愛い!キレイ!優しい!を一切排除した、おぞましい姿の、性格の悪そうな幻獣を次々に見ることができます。

動物たちの姿は思いきりシニカルで、笑いがこみあげてきてしまいます。ユーモラスな短歌形式の和訳で、一つ一つの幻獣が紹介されているのも、見所の一つです!

また、ゴーリーがヒレア・ベロック(1870-1953)という作家の作品に、何とも傑作な挿絵を描いたエセ教訓物語『悪いことをして罰が当たった子どもたちの話』(河出書房新社)という絵本も、中々面白いです。

<ジム 乳母からにげてライオンに食われた子の話>から始まり、<ヒルデブランド 通りかかった自動車におびえて理をさとされた子の話>まで、「悪いことをした子供には残酷な運命が待つ」という訓話を、ゴーリー風味で味付けしたお話が描かれています。

絵本の中の悪いことをした子供たちには、残酷な運命が待ちうけていましたが、実際に悪いことをし続けてきて大人になった私たちは、今もこうして死ぬことなく、生き続けていますよね……。大人の痛い所をチクチク突いてくる、たっぷりと皮肉が効いたお話です(笑)。

エドワード・ゴーリーの作品は、まさに「大人のための絵本」で、子どもには見せてはいけない残酷さも確かにあるのですが、ごく細い線で描かれたモノクロームの質感のイラストと、救いがないブラックで奇妙なストーリーが、心のどこかに引っかかって、何度でも読みたくなる魔力を持っているのも事実です。

「絵本や教科書には“お手本のようなあるべき姿”がいつだって描かれているけれど、実際そんなお手本に従って生きている人って、この世にどれだけいるのだろうね?」

ゴーリーはそんな風に、私たちにニヤリと笑いながら、語りかけているような気がしてなりません。

■その脅し文句、怖がらない人には意味がない!

ラストは、子どもから大人まで楽しめる、少しだけシュールな3作をご紹介します。

皆さんは子どもの時、叱られたら、素直に謝ることができるタイプでしたか?

『おしいれのぼうけん』(古田足日・田畑精一/童心社)という絵本に登場する「さくらほいくえん」に通う男の子二人は、謝らない勇敢な(?)タイプです。

ある日「さとし」と「あきら」という男の子は、お昼寝の時間にミニカーを取り合って暴れて、先生に怒られて、押し入れに入れられてしまいます。
先生は押し入れの外で、「ごめんなさい」と二人が謝るのを待っていたのですが、さとしとあきらは、謝らず、暗い押し入れの怖さにも負けず、押し入れから異世界へ、ミニカーを握りしめて冒険に出かけてしまうのです!

園児二人が体験する冒険物語が魅力的なのはもちろんのこと、それ以後、保育園の先生が、子どもを押し入れにいれなくなった……というラストも印象的です。

また、せなけいこさんの「おばけえほん」シリーズである『ひとつめのくに』や『ばけものづかい』(ともに童心社)も、思わずニヤリと笑ってしまうお話です。

『ひとつめのくに』は、見世物師が商売のためにひどい手を使って、「ひとつめこぞう」を探しに行く内容ですが、最終的に見世物師である「ふたつめ(二つ目)」の男の方が、半泣きの顔で困る羽目になってしまいます。

場所が変われば「見世物にされる」立場が逆転してしまう皮肉が見事に描かれています。

また『ばけものづかい』も、ばけものが出ると評判の家に引っ越してきたおじいさんを、ばけものたちがおどかそうと、からかいに来るお話なのですが、ばけものなんか意に介さないおじいさんに逆にこき使われてしまう……という展開が待っています。

ひのたまであろうと、ろくろ首であろうと、全然怖がらない人の前では、何の効力も持たない様子が素敵です(笑)。

いかがでしたか?ブラック&シュールな絵本は、現実の良い面だけでなく、「悪い面」までをも、しっかり描き切っている作品が多いのが、魅力ではないかと思います。

大人でも十分に楽しめる内容の作品も多いので、時にはぜひ「非日常」の世界に足を踏み入れて、ドキッとしてみて下さいね!