ハビエル・アギーレ新監督は、いきなりサプライズを用意していた。9月上旬のテストマッチに、国際Aマッチ出場経験のない選手を6人招集したのだ。

 偶然が引き起こしたサプライズではある。香川真司と原口元気がケガをしなければ、皆川佑介と武藤嘉紀はリストアップされなかった。内田篤人や清武弘嗣が万全なら、松原健と森岡亮太も招集を見送られていたかもしれない。

 個人的に目を引いたのは、坂井達弥の抜擢である。

 プロ入り2年目の23歳は、ケガの影響などで今シーズンはリーグ戦に4試合しか出場していない。アギーレと彼のスタッフの来日後に限れば、8月23日の大宮戦に出場しただけである。「Jリーグのビデオもたくさん観ている」とアギーレは話しているが、大宮戦で発掘された可能性が高い。

 実績や経験を持ったセンターバックで、戦線離脱している選手はいない。その意味で、坂井の抜擢はアギーレの色が出た選考と言える。

 メキシコ人指揮官を惹きつけた、坂井の個性とは?

 最大の理由は利き足だろう。坂井はレフティーなのだ。

 3バックと4バックを問わずに、最終ライン左サイドにレフティーが入ることで、ボールの動きが広角になる。ロングフィードの資質を備えていれば、サイドチェンジもスムーズだ。「ピッチを広く使ったサッカーをしたい」とアギーレは話しているが、レフティーのセンターバックはそのために必要なパーツである。

 センターバックには人への強さ、球際の強さも求められる。世界のトップ・オブ・トップで戦っていくには、高さと速さも不可欠だ。

 ウルグアイ、ベネズエラを迎える今回のメンバーには、坂井のほかに水本裕貴、吉田麻也、森重真人がセンターバック候補として名を連ねている。実績と経験で劣る坂井が代表に定着するには、センターバックとしての基本的な資質を示したうえで、レフティーの特性を生かせるかどうかがポイントになる。

 アギーレの初陣を飾る23人で言えば、扇原貴宏もレフティーである。所属するセレッソ大阪ではボランチが定位置だが、若年層の代表ではセンターバックでもプレーしていた。

 スピードにやや難はあるものの、184センチの高さは水本、森重、坂井らを上回る。攻撃にスイッチを入れるタテパスを最終ラインから繰り出せば、ビルドアップの幅は拡がるだろう。最終ライン中央で、一度は試してほしい選手だ。

 J2を独走する湘南ベルマーレにも、左利きのセンターバックがいる。FC東京から期限付き移籍している丸山祐市だ。

 恐ろしくアグレッシブなサッカーをする湘南で、丸山は3バックの中央を任されている。長短のパスを使い分けてビルドアップに関わり、183センチとサイズもある。J2からの代表入りは現実的に難しいが、アギーレのセンターバック像には重なる。

 DFにも攻撃力を、FWにも守備力を求める湘南には、アギーレが好みそうな選手が何人もいる。3バックの左サイドを務める三竿雄斗も、激しいアップダウンと高精度のクロスを持ち味とするレフティーだ。J2でずば抜けた完成度を誇る湘南を、アギーレ監督にはぜひ視察してもらいたい。

 ブラジルW杯を戦った日本代表には、左利きのフィールドプレーヤーが本田圭佑しかいなかった。世界基準に照らして不足している部分に、アギーレは早くも手を加えたのだ。まずは坂井と扇原をどのように使うのかで、メキシコ人指揮官のチーム作りが見えてくるだろう。