ハビエル・アギーレ新監督就任後、日本代表初の試合となるウルグアイ戦(9月5日、札幌)、ベネズエラ戦(9月9日、横浜)に向け、23名のメンバーが発表された。

 新指揮官が初めて選ぶ日本代表とあって大きな注目が集まるなか、発表された顔ぶれはかなりのサプライズが含まれていたと言っていいだろう。

 たしかに、海外組はブラジルワールドカップ組を中心とする従来の主力メンバーが順当に顔を揃えてはいる。だが、国内組はというと、かなり意外なメンバーの名が並んだ。

日本代表メンバー
GK
川島永嗣 スタンダール・リエージュ(ベルギー)
西川周作 浦和
林 彰洋 鳥栖

DF
水本裕貴 広島
長友佑都 インテル (イタリア)
森重真人 FC東京
吉田麻也 サウサンプトン(イングランド)
酒井宏樹 ハノーファー(ドイツ)
坂井達弥 鳥栖
酒井高徳 シュツットガルト(ドイツ)
松原 健 新潟

MF
長谷部 誠 フランクフルト(ドイツ)
細貝 萌 ヘルタ・ベルリン(ドイツ)
田中順也 スポルティング(ポルトガル)
森岡亮太 神戸
扇原貴宏 セレッソ大阪
柴崎 岳 鹿島

FW
岡崎慎司 マインツ (ドイツ)
本田圭佑 ミラン(イタリア)
柿谷曜一朗 バーゼル (スイス)
大迫勇也 ケルン(ドイツ)
皆川佑介 広島
武藤嘉紀 FC東京

 象徴的なのが、初選出組である。

 FW武藤嘉紀(FC東京)に関しては、最近のリーグ戦7試合で5ゴールを挙げるなど活躍が目立ち、代表入りを推す声も多かったとはいえ、それ以外の4選手はほぼノーマーク。なかでもDF坂井達弥(鳥栖)とFW皆川佑介(広島)は目立った活躍どころか、今季J1での出場試合数すら限られているのだから驚きだ。

 坂井は今季4試合(すべて先発)、皆川は7試合(先発1試合)に出場したにすぎない。クラブでの活躍から代表入りを予想するのは、ほぼ不可能。正真正銘のサプライズなのである。

 だからというわけでもないが、ここで初選出組を簡単に紹介しておこうと思う。

 武藤はスピードとパワーを兼ね備えたアタッカー。現役慶応大生(4年)という肩書きでも注目を集める。現在FC東京では2トップの一角を務め、得点を重ねているが、元々は左サイドでのプレイを得意とするウイングタイプである。アギーレ監督が掲げる4−3−3の布陣でもハマるはずだ。

 MF森岡亮太(神戸)はテクニックに優れたプレイメイカータイプのMF。相手の急所を突くスルーパスを得意とするが、自らの得点力アップを課題にミドルシュートにも磨きをかけている。以前、当コラムでも取り上げたように、マルキーニョス、ペドロ・ジュニオールという強力FW陣を生かす存在として、神戸オフェンスのカギを握る選手である。

 DF松原健(新潟)は日本には珍しい長身(180cm)の右サイドバック。今季大分から新潟へ移籍し、開幕からレギュラーとして活躍している。タイミングのいい攻撃参加が魅力で、年代別日本代表の経験も豊富。09年U−17ワールドカップに出場しており、今回選ばれた日本代表メンバー最年少で、唯一のリオ世代(リオデジャネイロ五輪の出場資格である1993年以降生まれ)でもある。

 皆川は今季中央大から広島入りした186cmの大型ストライカー。佐藤寿人、石原直樹と小回りが利くFWが多い広島にあって、DFを背負ってボールをキープできる強さがある。空中戦にも強く、細かなパスワークを得意とする広島では異彩を放つ武器となっている。J1では前節(8月23日第21節)リーグ戦初の先発出場を果たした新鋭だ。

 そして、最後に坂井だが、Jリーグは毎年かなりの試合数を取材しているが、正直彼のプレイを見た記憶がほとんどない。左利きのセンターバックだというが、プレイの特徴を説明できるほどの情報を持ち合わせていないというのが、率直なところだ。

 しかし、自分の不見識を棚に上げて言うわけではないが、だからこそ正真正銘のサプライズ招集なのだ。こうした選手がこのチャンスを生かして日本代表に定着すればおもしろい。ブラジルワールドカップでの惨敗で、日本代表の周囲に淀んだ空気が漂うなか、こうした新戦力がかき回してくれることを期待したい。

 また、彼らが活躍することで周囲に与える影響も見逃せない。

 皆川にしても、坂井にしても、彼らの出場試合数から考えて、多くのプレイがアギーレ監督をはじめとする代表スタッフの目に触れたとは考えにくい。おそらく彼らはワンチャンスを生かして代表入りをモノにしたに違いないのだ。

 だとすれば、同じことは他の選手にも起こりうる。いつ、誰が、どこで見ているか分からない。どの試合の、どのプレイが決め手となって日本代表に選ばれるか分からないのだ。その刺激たるや相当なものだろう。

 アギーレ色は予想以上に鮮明に表れていた。主力メンバーが固定され、メンバー選考にもマンネリの傾向が強かったザッケローニ前監督時代とは違う。そんな期待を高める意味で、初陣のメンバー発表としては悪くない。

 ブラジルワールドカップからの延長線上に新生・日本代表をとらえる報道陣の質問に対し、アギーレ監督は「これはゼロから始まる新しいプロジェクトである」ことを繰り返し強調して、こう語る。

「ワールドカップが終わって時間も経っており、ここからのスタートになる。(今回発表された)この23人のなかで最も状態のいい選手、また(ウルグアイ戦前の)3回のトレーニングセッションで私のやりたいことを理解する選手たちをスタメンに選びたい」

 果たして初招集組がウルグアイ戦のスタメンに名を連ねることにでもなれば、さらなるサプライズ。新たな船出に、いっそ、そんな日本代表が見てみたい。

浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki