明確となった監督主導の新体制、初陣はお披露目ではなくサバイバル

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 笑顔もあった、ユーモアもあった。しかし、8月11日の就任会見とは明らかに雰囲気は違った。表情こそ柔和でも、発せられる言葉は厳しさが増している。初陣を前にして、ハビエル・アギーレ監督は、はっきりと自身のカラーを打ち出した格好だ。

 今回のメンバー編成は、ブラジル・ワールドカップ出場組が12選手名前を連ね、初招集となった皆川佑介(サンフレッチェ広島)と武藤嘉紀(FC東京)に関しても、「2人とも他の選手のけがによって招集された」とのこと。招集予定だった香川真司(マンチェスター・U)と原口元気(ヘルタ・ベルリン)を考えれば、実のところはほとんどの選手が前体制で声のかかっていた選手だ。加えて、指揮官は「相手よりボールを持ち、相手より攻撃を仕掛ける。しかし、バランスの取れたチームを見せたい」と、就任会見に続いて前任者に通じるようなコメントも発している。

 とはいえ、独自色が大きく報じられているのには理由がある。何しろアプローチ方法がまるっきり違う。監督主導というメッセージを明確に発しているのだ。

 前任のアルベルト・ザッケローニ監督は、選手との対話を重んじていた。システムひとつとっても、ワールドカップ直前に「4−2−3−1の方が適していると思う。当然監督としては自分のサッカー観であったり哲学は持ってしかるべきだと思うが、それを選手に強要するのはいけない」と選手に合わせ、4年に渡った試行錯誤の末に3−4−3を封印した。

 一方、アギーレ監督である。

 就任会見で、「試合の状況に応じてフレキシブルにシステムを使っていきたい」と前置きしたが、既に「基本は4−3−3を考えている」と口にしていた。今後の選手選考についても、「走らない選手は呼ばれない」とはっきりと断言している。

 ただ、どちらが良い悪いという二元論ということではない。監督主導の場合は選手の声が指揮官より大きくなるようなパワーバランスが崩れることはないだろうが、選手が型にはまり過ぎるきらいが出てくるかもしれない。それでも今後は、いくら技術が突出していても求める基準に適わない選手は、招集リストに載らない可能性が示唆されている。

「選手は試合で88分はボールを持っていない。では、その88分の中でその選手は何をしているのか、その部分を私は見ている。チームに対するコミットメント、チームに対する責任、チームのことを考えるという、そこを見ている」

「若手なのか、ベテランなのか、 初招集なのか、すでに代表でプレーしたことがあるのか、Jリーグ組なのか、海外組なのか、そういった区別はしない」と、極めてフラットな選考を経てメンバーが決まるサバイバルは始まった。会見場に大挙した報道陣を前に、指揮官は「選手達がパスしないといけないテストでもある。6試合アジアカップの前にあるが、それをパスした選手達がアジアカップに進む」と、さっそく選手達をふるいにかける姿勢を明確にした。

 最初の選考に臨む23選手は決まった。激しい手振りと明確なメッセージで強烈な個性を発した指揮官の御眼鏡に適うのは、ワールドカップでもプレーした常連なのか、それとも抜擢を受けた新戦力なのか。9月5日に札幌の地で行われる一戦は、新体制のお披露目などではなく、選手が生き残りをかけたオーディションとなる。

文●小谷紘友