覚せい剤取締法違反の罪で起訴された「CHAGE and ASKA」のASKA(本名・宮崎重明)被告(56)の初公判が204年8月28日、東京地裁で開かれた。ASKA被告は起訴内容全面的に認め、「大変申し訳ない」と謝罪した。

更生への決意を語る一方で、ASKA被告と一緒に逮捕・起訴された愛人である栩内(とちない)香澄美被告(37)については「大事な存在」と未練をにじませたという。こうした答弁が影響して、単なる執行猶予ではなく、「保護観察」が付くのではと専門家はみている。さらに、実刑の可能性もないわけではないのだ。

妻は手紙で「夫を支えていきたい」

ASKA被告は5月17日に覚せい剤取締法違反(所持、使用)の罪で逮捕、起訴された。法廷では起訴内容について異論を問われると「何もありません」と全面的に認め、20年以上前にロンドンで合成麻薬MDMAを初めて使用したことや、2010年夏に覚せい剤を使用し始めたことなどを説明した。

情状証人として出廷するとみられていた妻の洋子さんは「体調が優れない」として現れなかった。法廷では洋子さんから預かった手紙が読み上げられ、その中で「健康だった頃の姿に戻ることを願って、夫を支えていきたい」という主旨の思いが語られていたという。

最終意見陳述ではASKA被告自身も反省の言葉を述べるとともに、

「私はこの恐ろしい覚せい剤をやめたい。しかし、自分の意思だけではやめることができないと思っています。人として立ち直るためにも、しばらく時間を要することになりますが、引き続き医師の指導に従って治療していきたいと思っています」

などと更生への前向きな思いを語ったという。

法廷では冷静な受け答えをしていたASKA被告だが、検察側から栩内被告について質問された際には語気を強めることもあり、仰天発言も飛び出した。

報道によれば、検察側に栩内被告のことをどう思うか尋ねられると「大事な存在だと思っています」。さらに「大事で好きということか」と聞かれると「はい」と答えたという。今後の関係については「これから話さなければならないこともあるので」とした上で、ここで答えることはできないと言うにとどめ、断ち切れない思いをうかがわせた。

検察側は「長期にわたり違法薬物を使用し、常用性が高い」として懲役3年を求刑。弁護側は執行猶予を求めた。

「『大事な存在』と言っちゃだめと弁護側から言われていたはず」

判決では執行猶予が付く、というのが一般的な見方だが、専門家らは今回の公判によって猶予期間中に「保護観察」が付く可能性が高まったとみている。

元東京地検検事の田中喜代重弁護士は29日放送の情報番組「モーニングバード!」(テレビ朝日系)に出演。懲役3年という求刑に「重たいですね」と話した上で、裁判所は4〜5年の執行猶予をつけるだけでなく、保護観察をつける可能性を予想した。

保護観察は、執行猶予になった犯罪者らに対して保護司が定期的に面会して更生するよう指導することを指し、家族など身近な人が監督できない場合などにとられる施策だ。

田中弁護士は「法廷を見る限り、保護観察が付く可能性が大きく出てきてしまった」と指摘した。

そもそも検察側の質問で栩内被告について聞かれることは100%分かっており、弁護士との打合せも十分してきているはずだという。にもかかわらず、ASKA被告が「大事な存在」といった発言をしたことについては、

「それは言っちゃだめだと言われているはず。栩内被告については『交際しません、手を切ります』とか。『家族のもとに戻って家族の監督のもと、自分はしっかりやっていきます』と言えって絶対言われているはずですよ」

と推測した。

その上で、

「覚せい剤をやめるには自分の強い意志とサポートしてくれる人の存在が必ず必要であり、その一番近い存在であるはずなのが妻。だが、信頼関係がなければうまくいかない」

とし、今回の法廷によって妻が監督するのは難しいとみられたのではないかと分析する。

保護観察も決められた約束事を守りながら、家庭で生活して更生を図るケースがほとんどだ。家庭での生活が難しいとすると、保護観察もダメという最悪ケースも考えられなくはない。

「今までは執行猶予が付くかつかないかの話だったのが、今度は(法廷によって)保護観察が付くかつかないかまで来て、実刑の可能性も微妙に出てきている」と話した。

東京地検特捜部元副部長・若狭勝弁護士も複数のスポーツ紙上で保護観察の可能性が高まったと指摘している。妻など身近な人が裁判官に被告人を監督することを直接約束することが大事であり、書面だけでは弱いという。また、栩内被告についての証言も「妻の気持ちが引いてしまうと想像すれば、この証言も保護観察付きに傾くと思う」としていた。

ASKA被告の判決は9月12日の14時に言い渡される。