「空飛ぶモンティ・パイソン Vol.1 」ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

写真拡大

伝説のコメディ集団「モンティ・パイソン」が再結成ライブを決行! この一報に仰天したファンも多いはずだ。なにせライブを行うのは約30年ぶり。それにメンバーは全員70歳をゆうに超えているのだから……。

しかし、8月24日(日)にBSプレミアムで放送された『モンティ・パイソン復活ライブ!』前編を見た人は、そんな心配は吹っ飛んだことだろう。出演しているメンバー全員、元気、元気。31日(日)に放映される後編では、さらにパワフルなステージをたっぷり堪能することができる(筆者は試写で一足先に拝見させていただいた)。

と、その前に、モンティ・パイソンとは何かということを簡単に説明しておこう。

モンティ・パイソンとは、1969年に結成されたイギリス人6人によるコントグループのこと。イギリスの公共放送BBCで放送された『モンティ・パイソン フライング・サーカス』でギャグの一大旋風を巻き起こした。日本でも『空飛ぶモンティ・パイソン』として吹替版が放映されている。

モンティ・パイソンの面々(以下、パイソンズと略)は、革命的な笑いを次々と生み出したこと、世界中の喜劇人に大きな影響を与えたこと、同じ国で同じ年に結成されたことから、“コメディ界のビートルズ”と称される。また、「復活ライブ!」の告知映像にはローリング・ストーンズのミック・ジャガーとチャーリー・ワッツが出演してコントを演じていた。パイソンズがいかに国民的、そして世界的な存在かがこのことだけでもわかるだろう。

彼らのやることはとにかくアナーキーだ。まったく無意味なビジュアルギャグも多いが、とにかくあらゆるタブーをめちゃくちゃにギャグにする。セックスネタ、差別ネタはもちろん、有名人、政治家、スポーツ選手、芸術家、哲学者、偉人、紳士・淑女、イギリス人、フランス人をはじめとした世界中の国・人種・民族、はては女王陛下、さらにはイエス・キリストまでも徹底的に茶化してしまうのだ。

今の日本に置き換えれば、安倍首相は女装趣味がある変態だったというコントや、明治天皇を競走馬に見立てた障害物レースのコントがNHKで放映されるようなものである(もちろん実名で)。大和魂も韓国人もネトウヨも日教組も平等にコケにする。(このたとえが合っているどうかわからないが)池田大作氏の生涯をパロディーにした映画を誰の許可も得ずに劇場公開してしまうようなものだ。いかに彼らがやってきたことがあり得ないかがよくわかるだろう。過激なだけでなく、一ひねりも二ひねりも三ひねりも加えてあって、それでいて爆笑ネタに仕立てているのだからすごいとしか言いようがない。

パイソンズのメンバーは、ジョン・クリーズ、エリック・アイドル、グレアム・チャップマン、テリー・ジョーンズ、マイケル・ペリン、テリー・ギリアムの6人。ギリアム以外の5人はオックスフォードとケンブリッジ出身の超エリートだ。チャップマンは1989年に48歳で早逝しているが、他のメンバーは全員健在。ギリアムは『未来世紀ブラジル』や『ブラザーズ・グリム』などの作品で映画監督として世界的に有名になったが、今回の「復活ライブ!」でも以前と変わらず嬉々としてコントに参加している。

「復活ライブ!」が行われたロンドンのO2アリーナは最大2万人収容のステージ。当初は1回のみ公演の予定だったが、40秒で全席がソールドアウトしたため、10回公演に変更された。いかりや長介が健在だった頃のザ・ドリフターズが、横浜アリーナで生オーケストラを率いて超豪華な2時間半のステージを10回行うところを想像すればわかりやすい。

基本的な構成は、過去の定番ネタに新ネタをミックスさせたもの。前編ではステージのうち36分間の映像が流された。

メンバーが正装で現れたオープニングは「撮影OKタイム」。その後はラテンスタイルで「ラマの面白い話」をするという呆れるほどの無意味さ。パーフェクトに下ネタの「イチモツの歌」を愉快に歌った後は、ローマ法王とミケランジェロが登場して「ローマ・カトリックは精液をムダにしないから子だくさん」という歌で壮大なミュージカル!(カトリック教会は人為的な避妊を認めていない) ちゃんと巨大スクリーンには精子が映し出され、はてはペニスそっくりの大砲からシャボン玉が吹き出るバカバカしさ。その後には避妊を認めるプロテスタントもギャグにする周到ぶりだ。定番ネタ、女装趣味のカナディアン・ランバージャック(木こり)の登場シーンでは会場から大喝采が巻き起こる。プーチンロシア大統領の顔も、とんでもないシーンで使用されていた。

31日放送の後編は、さらにハイテンションで突っ走る。定番ネタもてんこもりで、「死んだオウム」や「スペイン異端宗教裁判」、さらにはガンビーや「このお、ちょんちょん!」のオッサンも登場。ついでに特別ゲストによる新ネタ(日本でいうなら林修先生を乙武氏が車イスで轢き殺すような感じ)も披露されるのでお楽しみに。

70歳を超えるおじいちゃんたちが過激でバカバカしく壮大なステージを全力でやりきっている姿は、それだけで胸が熱くなる。番組テーマソング「リバティ・ベル・マーチ」が流れるエンディングでは、筆者も不意に涙腺がゆるんでしまった。番組で解説を務めた一人、劇作家の宮沢章夫は「奇跡を見ているようだ」とため息をもらしている。ファンは必見、日本のお笑いが好きな人もぜひ見てほしい。

なお、なぜ彼らがこんなことができたのか、他にどんなネタがあったのか、ネタの意味は何なのか(日本のお笑いと同様、時事ネタ、ご当地ネタが多い)を詳しく知りたい人は、須田泰成・著『モンティ・パイソン大全』を入手して読んでみてください。もちろん、発売中のDVDもぜひ!
(大山くまお)