TVや新聞の経済情報には、誤解を招くものも少なくない。まずは間違いがちな知識を改めよう。

Q1 住宅や家電は増税前の今が買い時?

A1 駆け込み需要後に値下がりするケースも。

価格の高い住宅や家電といった耐久消費財ほど、増税前に買っておきたくなるもの。しかし、「駆け込み」が起きた後は必ずその反動で需要が減るため、販売側は値下げしてでも買ってもらう必要が生じます。97年4月の消費税の増税時は、耐久消費財の価格は4月をピークとし、以降1年以上も下がり続けました。需要動向に大きな影響を受けたのです。耐久消費財ほど需要によって価格が変動します。今回も同様のことが起きる可能性があります。

●97年の増税後は物価が下落

97年の増税後は物価が下落

97年の増税後は物価が下落

前回の消費税増税後は1年以上にわたって耐久消費財の価格が下落した。

山田

駆け込み買いで得をするのは、定期券や回数券、新幹線や飛行機のチケット、映画や演劇の前売り券など限られますよね。

Q2 消費税10%で国の借金は減る?

A2 10%でも1円も減らない。

消費税による税収は、法律で社会保障だけに充てることが明文化されています。社会保障費は主に、医療・介護・年金という「高齢者3経費」に加えて、現役世代の医療・子育ても含めた「社会保障4経費」というものが主体となっています。その額は3経費で22.1兆円、4経費では32.0兆円にも上ります(2011年度)。これに対して、消費税の税収は1%で約2.5兆円。現在の5%では12.8兆円の税収です。つまり、現時点で19.2兆円、消費税にして約8%相当もの税収が足りておらず、仮に消費税が10%へと、現時点に比べ5%上がったとしても、実は国の借金は1円も減らないのです。

●消費税10%でも社会保障費を穴埋めできない

消費税10%でも社会保障費を穴埋めできない

高齢化の影響で社会保障費は、国の負担分だけで毎年1兆円という規模で自然に増える人口構成になっている。

山田

社会保障費の今後の増大分を消費税でまかなうには15%の税率が必要とされています。税収の増額分は約25兆円です。

Q3 消費税UPで日本の消費は低迷?

A3 消費への影響は限定的。

消費税アップによる景気への影響は大きくない、と前ページで述べましたが、その論拠のひとつを具体的に見ていきましょう。左のグラフは、97〜12年度までの消費税、所得税、法人税の「税収の推移」を示したものです。この間、ロシア危機やITバブル、リーマンショックなどの影響を受け、日本の景気も好不況の時期がありました。しかし、ほかの2つの税収が山あり谷ありであるのに対して、消費税の税収だけはほぼ一定のままです。要は、どんな税率であれ、必要なものは必要で、消費が景気の影響を大きく受けないからこそ、消費税収も安定しているということです。

●消費税の税収は景気に影響されず安定

消費税の税収は景気に影響されず安定

前回の消費税の増税があった1997年から今まで、景気は世界経済の波に翻弄されていたが、国内の消費は驚くほど一定だった。

山田

逆に所得税や法人税の税収は変動が大きいため、国が依存度を高めすぎると安定した予算が組めなくなります。

Q4 日本の国家予算はムダだらけ?

A4 NO! これ以上、大きなムダは出にくい「小さな政府」の国。

日本の借金は、世界の爛錙璽好1瓩任△襪海箸和燭の人が知っています。確かに、OECD(経済協力開発機構、2012年発表)のレポートを見ると、日本の対GDP(国の経済規模)での政府総債務残高(=借金)は238%で、調査対象国中のダントツのワースト1。財政破綻危機にある、ワースト2のギリシャの157%を大きく上回っています。

狷本の借金はすごい瓩箸いηЪ韻広がった結果、日本政府が行なう国家予算について爛爛世多い瓩隼廚辰討い訖佑眩えているでしょう。しかし、それは現実とは大きく異なるのです。そのことが客観的に見えるように、日本政府がどのくらいのお金を使っているのかを、ほかの国との比較で具体的に見ていきましょう。

 国の支出には、「教育費」「防衛費」「公共事業費」「警察・消防費」「社会保障費」などがあります。まずは、医療・介護・年金といった「社会保障費」を除いた支出を見てみます。

 次ページのグラフaをご覧ください。OECD加盟国の社会保障費を除いた予算のGDPに対する比率を棒グラフで比較しています。OECDは先進主要国が集まって構成されているので、経済状況を国際比較するのに適しているのです。そして日本は、ここで最下位なのです。

 つまり、日本は社会保障費を除いた状態では、世界的に見て根本的にお金を使っていない、ということです。「日本の予算はムダだらけ」といったマスメディアの論調がありますが、日本の支出は世界的な平均をはるかに下回る低さである、というのが現実なのです。

 また、その下のグラフbの、社会保障費も加えた爐垢戮討了拿亅瓩任△覦貳明府支出総額を見てみても、日本の支出の少なさは変わりません。OECD加盟国中、やはり、ほぼ最下位なのです。日本は「高齢化率が世界一の国」であることを考慮すると、驚くべき支出の低さではないでしょうか。

 となると、次の疑問が浮かびます。「それほど支出が少ないのに、なぜ日本の借金はダントツのワースト1になってしまったのか?」

 理由はハッキリしています。根本的に国の収入が少なすぎるからなのです。

 これは、いちばん下のグラフcをご覧ください。今度は、国の経済規模に対する税金の割合(=租税負担率)を表しています。このグラフも一目瞭然なのですが、日本は最下位水準。世界的に見て、圧倒的に税金の負担が少ない国であることがわかります。

 もうひとつ、付け加えておきましょう。民間が国に支払う税金と社会保険料を合計したものを「国民負担」といいます。GDPに対する国民負担の割合である国民負担率でも、日本は、「小さな政府」の象徴と言えるアメリカと同様の、ほぼ最下位となっています。

 さきほどの、社会保障費を加えた政府の「すべての支出」(グラフb)で見たように、日本は高齢者の割合が世界一の国であることを考慮すると、国民負担率の圧倒的な低さが際立ってきます。借金が増え続けるのも当然と言えます。

 要するに日本は、「国の支出が少ない」こと以上に、「国の収入が圧倒的に少ない」のです。これこそが借金が増え続けている根本的な理由であり、日本の予算について、「ムダが多い」というのは、過去の話が多く、現在ではかなり筋肉質な状況になっていて、誤解なのです。

[グラフa]社会保障費以外の支出は、圧倒的に少ない

[グラフa]社会保障費以外の支出は、圧倒的に少ない

日本の社会保障費以外の一般政府支出は、世界の先進国の中で最低水準となっている。

[グラフb]社会保障費を加えても支出の少なさは変わらない

[グラフb]社会保障費を加えても支出の少なさは変わらない

犢睥隹塾┐世界一瓩任△襪砲發かわらず、社会保障費を含む日本の政府支出は、世界の平均を大きく下回っている。

[グラフc]税金の負担はほぼ世界の最低水準

[グラフc]税金の負担はほぼ世界の最低水準

上の「租税負担率」だけでなく、税金に社会保険料を加えた「国民負担率」を見ても、日本は世界のほぼ最下位の水準だ。

山田

日本は、基本的に「低負担・低福祉」の「小さな政府」を選択している国です。しかし、高齢化が世界で最も早く進んだため社会保障費が膨れ上がり、「中福祉」となりました。にもかかわらず「低負担」を続けた結果、膨大な借金を背負ってしまいました。

Q5 少子高齢化で年金制度は破綻?

A5 現状の高齢化が進んでも制度は破綻しない。

今では日本は「世界一の高齢化率」で、世界で最も65歳以上の割合が多い国となっています。そして、国の年金制度は現役世代が高齢世代を支える「仕送り方式」なので、「将来に年金はもらえなくなる」という声がよく聞かれます。そこで、「現在の少子高齢化で、年金は破綻する」という論について考えてみましょう。

 まず、日本も含めて世界の先進国では、基本的に国の年金は、個人が自分のために蓄える「積立方式」ではなく、前述した「仕送り方式」となっています。そのため、テレビなどでは、次ページのいちばん上にある図aのようなイラストを使い、もっともらしく倏金破綻論瓩展開されています。

「今の年金制度は仕送り方式で、現在では現役世代2.6人で高齢者1人を支えている犁廓論鏃伸瓩、高齢化のピークの40年後には現役世代1.2人で高齢者1人を支える犖車型瓩砲覆襦こんな仕組みは破綻する!」

 これは一見、もっともらしく思えますが、実は単純な「ひっかけ問題」にひっかかっています。まず、国の年金制度は「仕送り方式」ではあるのですが、この「仕送り方式」にも「ひっかけ問題」が潜んでいて、多くの人は、「これまでの保険料が、すべて高齢者の年金に支払われている」と錯覚しているのです。ただ、現実には、そんなことになっているはずがなく、かつての現役世代が多かった時の保険料については、きちんと今後の年金の支払いに備えて国が「年金積立金」として保有しているわけです(図b参照)。

 そして、なぜ日本ではこのように極端な人口構成になっているのか、というと、「団塊の世代」の存在などの特殊要因があるためで、そのため「年金積立金」が世界一の水準にまでなっているのです。

 さらに、年金の財源は、保険料だけではなく、あくまで「国の保険の仕組み」なので、財源として「税金」も入っているのです。そのため、本来は図bや図cのような図解をしないと、ミスリードさせてしまうわけです。つまり、テレビなどで有名な図aのイラストは、人口構成の極端な部分だけを抜き出し、わざと人を錯覚させるようにしているのです。

 日本の出生率は2006年以降、堅調に上がり続けていますが、この先も上昇傾向が続くのかは未知数です。ただ、少なくとも、安定してきた、ということは言えるでしょう。ですから、先ほどのテレビなどでお馴染の図aは、わざと人を錯覚させるように単純化したもので、積立金の話を意図的に抜いているだけでなく、2050年以降の人口構成が安定する話も抜いてあるわけです。

 そもそも、国の社会保障制度は、民間のような商品ではなく、社会の仕組みであるため、財源に「税金」が入るようになっています。そのため、根本的に「現役世代」と「引退世代」といった単純な「年齢」という尺度で捉えるものではないのです。例えば、今は高齢者も元気な方が多く、年齢に関係なく働き続けている人も増えてきています。また、女性の社会進出も進み、女性が働きに出るケースも増えてきています。つまり社会保障は、あくまで「就業者」と「非就業者」という尺度で考えるべきものであって、実は、このような視点で見ていくと、いちばん下の図dのように、1970年も2010年も、さらには2050年も、あまり変化が出ないことがわかります。

[図a]大誤解を生んだ公的年金イメージ図

[図a]大誤解を生んだ公的年金イメージ図

単純に65歳以上を「支えられる人」、20〜64歳を「支える人」として計算すると、少子高齢化が破綻の原因になりそうに見える。

[図b]「積立金」は爐悗修り瓩量鯡

[図b]「積立金」は爐悗修り瓩量鯡

現役世代が払っていた保険料の総額が、その年の高齢者の年金総額を大きく上回っていたため、狎冦金瓩残されている。

[図c]予備の爐悗修り瓩蓮計画的に使っていく

[図c]予備の爐悗修り瓩蓮計画的に使っていく

2050年ごろには高齢化は落ち着く見込みで、積立金と保険料、税金を合わせて年金の支給が継続的にできる。

[図d]公的年金の本当のイメージ図

[図d]公的年金の本当のイメージ図

年齢ではなく、働いている人を「支える人」、働いていない人を「支えられる人」とすると、昔も今も犹戮┨腓き瓩離丱薀鵐垢呂曚榮韻検

山田

昔の「現役世代」が払っていた保険料のうち、当時の高齢者の年金額を上回っていた分は「積立金」として現在約124兆円残っています。今後の年金には、この積立金も活用される予定です。結果的に、過去の自分から現在の自分に仕送りするようなものですね。

Q6 公的年金より民間保険がお得?

A6 公的年金がお得。民間には「元本割れ」のリスクもある。

国民年金には税金が投入されていて、厚生年金の保険料の半分は会社が負担しています。したがって、国民年金、厚生年金ともに、支払った保険料よりももらえる年金額が少なくなるという「元本割れ」が起こることは基本的にありません。一方、民間の年金保険は、元本割れが普通に起こり得ます。民間の保険は「商売」なので、決して低くない販売手数料や、割高な運用手数料などがかかるからです。仮に保険料の運用利回りが0%だとすると、販売手数料や運用手数料の分だけ元本は減っていくことになるわけです。

 また、国の借金が原因で国債価格が暴落するなどして、ギリシャのような財政破綻危機が日本で発生した場合、「公的年金が支払われなくなるのでは」という点についても、民間の場合は、もっと危ない。なぜなら民間の保険会社は保険料のかなりの部分を日本国債で運用しているからです。日本で財政破綻危機が発生したら、たちまち民間の保険会社は経営危機に陥るでしょう。

 さらに、公的年金は物価が上がると、基本的にはそれに合わせてもらえる額も上がる仕組みとなっています。Q5で説明したように、公的年金は「仕送り方式」で、主にその時代の現役世代の保険料から年金が支払われる仕組みです。ですから、物価や賃金が上がっても、その状況に合わせて年金額を引き上げることができるようになっているのです。

●民間が公的年金に比べて不利な理由

●民間が公的年金に比べて不利な理由

民間の年金保険は公的年金に比べ運用手数料も高く、販売手数料も徴収されるため、実質的には犖桔楹笋讚瓩両態で保障がスタートすることに。

山田

死亡するまで年金が受け取れる「終身型」である公的年金は、民間の保険会社にはなかなかマネできないお得な保険です。

Q7 40代で貯金ゼロ!老後は大変?

A7 焦る必要は全くなし!

昨年公表された2人以上世帯の1世帯当たりの貯蓄額は1658万円。ただし、これはあくまでも「全世帯」の平均額。下のグラフでわかるように、20代は290万円で、60歳以上は2171万円と大きな差があります。しかも、40代までは貯蓄額よりも負債額のほうが多い。つまり、40代で貯蓄よりローンが多くても不思議はなく、標準的な世帯と言えます。50代は子育ても落ち着き、教育費などが減るため貯蓄額も増えます。60代は退職金も入り、貯蓄が負債を大きく上回ります。大切なのは、こうした世代ごとの平均を知り、自分の家計の状況を客観的に把握することなのです。

●40代は貯蓄額と借金額はほぼ同じ

●40代は貯蓄額と借金額はほぼ同じ

このグラフのデータは、2人以上世帯の51.9%を占める勤労者世帯のもの。

山田

40代まで貯蓄よりも負債のほうが大きいのは、住宅ローンと教育費がかさむため。貯蓄する余裕がないのは当たり前です。

Q8 株式投資はリスクが高い?

A8 長期的に見ればリスクは低い。

長期的に株式投資をすればリスクが低くなるという、象徴的な例があります。日経平均株価が過去最高値の3万8957円をつけた1989年の年末から、日経平均株価に毎月1万円ずつ継続して投資したとしましょう。その積立投資の評価額と、累計の投資額を比較してみると、昨年前半までは投資額を下回ることが多かったのですが、昨年後半には評価額が累計投資額を大きく上回り、今後もその傾向が続く見込みです。実際の日経平均株価は、まだ最高値の半値水準にも到達していませんから、単純に損をしているだろうと考えがちですが、結果的には儲かっていることになります。

●バブルのピークから積立投資をしても今はプラスに

●バブルのピークから積立投資をしても今はプラスに

89年12月から24年間、毎月1万円ずつ投資したケース。投資信託の中には日経平均株価に連動する商品もある。

山田

上のグラフの結果は株式投資で得られる配当金が除外されているので、これを加味すればプラス幅はさらに拡大しますね。