『媚薬の検証』(データ・ハウス)

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 覚せい剤取締法違反で逮捕されたASKA被告の初公判が開かれ、起訴内容を認めたASKA被告に対し、検察は懲役3年を求めた。だが、オヤジ系メディアがこぞって注目しているのは、むしろ、愛人・栩内香澄美被告の公判だろう。栩内被告が無罪を主張していることもちろんだが、もうひとつ、56歳にして愛人と「ギンギンでビンビン」のセックスを繰り返していたASKAの「キメセク」の実態に興味津々だからだ。

 体力・精力が衰えてきたオヤジたちにとって、どうやら「キメセク」は憧れらしい。とはいえ、覚せい剤の使用は法律違反。一般人が真似することは不可能なのだが、考えてみれば、世間には合法的に「絶倫」や「快感」を得ることができるという触れ込みの薬が山ほど存在している。世に言う「媚薬」である。ひょっとしたら、我々も法律を犯さない範囲でASKAのように「キメセク」をする方法があるのではないか?

 そんな疑問に答えてくれるのが『媚薬の検証』(川口友万/データ・ハウス)。サイエンスライターで、あの「と学会」の会員でもある著者は、「性欲は男の人生なのである」「性欲のない人生なんて、想像もできない」と断言し、そのうえで精力にまつわるさまざまな薬の効用を大真面目に調査・研究している。ちなみに著者は「精力剤」も「媚薬」も、お互いを補完しあう存在だとして特に区別はしていない。

 その"人体実験"は、なかなかに壮絶だ。サソリの唐揚げから始まり、マムシ酒、蟻酒、ニンニク、朝鮮人参と、定番の精力剤とされる食材を片っ端から試していくのだが、漢方や専門料理店をめぐり、漢方店や製薬会社を取材し、専門業者やインターネットを通じて実物を手に入れ、すべて自分の身体で試したという「体当たりデータ」に加え、含まれている成分やその効用といった論理的・化学的な根拠もしっかりと示されており、説得力は抜群だ。

 ネット通販で大量のサソリを取り寄せ、油で揚げてバリバリと食べてみるが、一日2匹を2、3日程度食べたくらいでは即効性がないことにガッカリ。ウナギの200倍の効力といわれるマムシ酒を追っていくうちに、黒焼きと蒸焼きの効能の違いを知り、プラシーボとは思えない「蛇とスッポンは効く」「シマヘビの血を飲んだら一発ですよ」といった証言に納得。伝説のAV監督・村西とおる氏がプロデュースした「ナイ酢ニンニク『村西とおるが作ったパワー酢ニンニク 朝起ちの素』」を購入するも、あまりのニンニク臭さに断念するといった失敗も重ねながら、検証は続いてゆく。

 食べ物からたんぱく質を作り出し、筋肉に変えるアナボリック作用を引き起こすエクジソン(別名イソイノコステロン)を含む蟻がいいと聞けば、100g1万1000円で乾燥黒大蟻を取り寄せ、酒に漬けたグロテスクな蟻酒を作って飲んでみる。ちなみに蟻酒や蟻の粉末を飲み続けた著者は「オシッコが透明に」しかも「力強く出る」ようになり、長年悩まされた腰痛が治ったという。
 
 有名な植物系にも挑戦しており、「マカ」「ガラナ」の成分は「人によって効く人もいるだろうというレベル」と分析した上で、ソロモン諸島に自生する「スカイフルーツ」を個人輸入し、タイ原産の絶倫植物「ソフォン」を調べるために製薬会社を取材して、自分でも服用。ただしこれらはいずれも劇的な効果は見られなかったという。

 ハッキリ言えば、巷で有名な精力剤のほとんどに覚せい剤のような即効性はないのだという。気の持ちようはともかく、化学的に言えば、毎日継続して摂取することで体質が改善されるという、ごく当たり前の効用があるだけだ。中には猛烈に効く薬もあるようだが、たとえば漢方使用をうたう中国産精力剤の多くは、バイアグラの主成分であるクエン酸シルデナフィルを含む"インチキ"で、過剰摂取をすれば命の危険もあるという。

 それでも著者の探求は続く。ヒトフェロモンを使った「フェロモン香水」を使うと急に全身が元気になり、戦いのホルモン・テストステロンが上昇していることを実感。さらにヨーロッパから取り寄せた「次世代の媚薬」と呼ばれる夢の催淫剤点鼻薬「PT・141」をAVの現場に持ち込み、女優男優双方に試してもらうという実験まで行っている(もちろん自分も使用)。ただし結果は、いつもより気持ちよかったという女優に対し、男優や著者には効果はなかったという。

 こうして見ると、どれも「効く時は効くが、効かない時は効かない」というボンヤリとした結果ばかりだが、では果たしてこの世に実効性のある媚薬は存在するのか。大学時代には合法的にトリップする方法を模索してコディンやエフェドリンを含む咳止め薬・ブロンを飲み、ピーマンを吸い、ナツメグで泣くほど吐き、また、インド旅行では大麻をキメまくった経験も持つ著者は、長い探求の果てにこう結論を出している。

「媚薬はあるといえばあるし、ないといえばない。煮え切らないのは、それが違法だからだ」

 2000年代に入ってから麻薬の代替品として大流行したトリプタミン系の合法ドラッグや、ロータスやバカバなどのハーブをベースに人工カンナビノイドを合成した合法ハーブの効き目は平均的なマリファナに匹敵するそうだが、現在、これらも「危険ドラッグ」として規制を受ける方向にある。

 つまり媚薬は、現時点ではまだまだファンタジーと法律の外の世界にしか存在しないということのようである。
(時田章弘)