《緊急特別対談 細野真宏×山田真哉》2014年は激動の年になる! 「今こそマネー力をUPさせる最大のチャンスです」アベノミクスによって日経平均株価が大幅に回復した昨年は、経済に関する明るい話題が多かった。だが一転、2014年の先行きは不透明なまま。求められるのは発想の転換だ。

◎消費税の税収はすべて還流される

山田 本日は、学生時代から尊敬している細野さんと議論が交わせるということで大変楽しみにしておりました。

細野 こちらこそよろしくお願いします。まずは、やはり消費税の話からしましょうか。

山田 はい。税率アップがいよいよ迫ってきました。「駆け込み買い」の衝動に駆られている人も多いと思いますが、過去を振り返ると、必ずしもお得とは言い切れませんよね。

細野 駆け込み買いが起きた後は、必ず「買い控え」が起きます。記憶に新しいケースを挙げると、09年から11年に実施された「家電エコポイント制度」がある。制度終了前に駆け込みが起きましたが、その後は需要が落ち、液晶テレビなどは大きく値下がりしましたね。

山田 価格の高い耐久消費財ほど、需要の変化で価格が変動しやすいということですね。

細野 消費税自体の誤解も多いですね。代表的なものは、「今回の消費税の引き上げで国の借金が減る」とか「消費税の影響で景気が悪くなる」といったことです。

山田 そうした誤解の原因は、消費税が何のために使われるのかを正確に理解していないからですね。

細野 08年に、私も委員を務めた政府の「社会保障国民会議」の答申を受け、09年3月に成立した「改正所得税法」で、消費税収は増税分も含めて、全額を医療・介護・年金といった社会保障費に充てることになりました。ですから、消費税収は1円も国庫に残ることなく、すべて民間に還流されます。

山田 そこまで使途を限定している税金は日本では珍しい。

細野 増税で一時的に個人消費が減少しても、例えば国がその分を社会保障などで使えば国全体で回るお金の量は減りません。景気とは「世の中にどれくらいお金が回るか」ということですから、景気の影響は、駆け込み需要の反動が出る短期間ですむわけです。昨年の冬のボーナスが大企業で前年比プラス5.8%とバブル期以来の高い伸びとなり、すでに所得が上がり始めているので、今回はあまり影響が出ないかもしれません。

山田 前回、消費税が増税された97年は、確かに景気は悪くなりましたが、アジアの通貨危機で世界経済が大混乱したからですよね。

細野 そう、要はリーマンショックに匹敵する世界的な経済危機が不景気の主因で、消費増税が理由ではないのです。そもそも消費税は、法人税や所得税と比べても、景気との関連性が低い税金。実際、3つの税収の推移を見ても、法人税と所得税は景気に左右されていますが、この16年間ずっと消費税収だけはほぼ変わらない(46ページ参照)。消費税が上がっても消費が落ちない根拠でもあります。

山田 消費税は、景気の影響を受ける「利益」に対して税金をかけているわけではないですからね。国の借金の話をすると、たとえ消費税が10%になっても、社会保障費は消費税収を上回るペースで増大しているので、予算全体では当面赤字は増え続けることになる。

◎年金制度に対する誤解はひどい!

細野 日本の借金については、私も懸念しています。政府は2020年までに財政の「プライマリーバランス(基礎的財政収支)」を黒字化させることを国際公約としていますが、予断を許さない。実は、これも多くの人が誤解しているのですが、日本は世界的にも「小さな政府」の状態で、削る余地が非常に少ない。税収をアップさせる以外にプライマリーバランスを黒字化できる手段はないと言っていい。その有力な手段が、他国より低水準な消費税引き上げなのです。

山田 20年は東京五輪が開催される年です。オリンピック開催までは景気がいいという見方があり、そうであれば税収の伸びが期待できますが、それは楽観的すぎるでしょう。やはり消費税で安定的な税収を得ることが大前提ですね。

細野 長期的にみると、消費税引き上げにはプラス面が多い。医療・介護・年金など社会保障が安定し充実すれば、将来への不安が解消される方向に向かうので、消費が活発になる可能性もあります。

山田 特に年金不安が和らげば、日本人の資産運用が大きく変わるでしょう。貯蓄偏重が是正されて、「貯蓄から投資へ」が本格化しそうですね。

細野 でも、日本の年金制度に対する誤解ほどひどいものはない。

混雑する年末の築地

アベノミクスの影響からか、景気の動向を示す様々な指標が上昇傾向にあり、個人消費も力強く推移している。年末年始も大勢の買い物客でにぎわった(写真は東京・築地市場)。

NISA

世界的に見ても貯蓄偏重だと言われる日本人。「NISA」(少額投資非課税制度)はこの姿勢を是正することが期待される。証券業界のPRも熱を帯びている。

◎株式投資は物価上昇への対処法

山田 そうですね(笑)。細野さんの著書『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』で誤解が解けた人は多いでしょうが、いまだに不安を煽るメディアが後を絶ちませんから。その影響で、公的年金より民間の保険会社が販売する年金保険のほうが有利だと思っている人もいます(笑)。

細野 ビジネスマンが今後直面するリスクのひとつに物価上昇があります。アベノミクスのリスクの部分ともいえ、すでに様々なモノの値段が上がり始めています。これに対処する一つの方法として株式投資があります。幸いにして株価の水準もまだ低い。

山田 今年から「NISA」がスタートしました。年間投資金額に上限はありますが、株式投資で得られる配当金や値上がり益に対する税金がゼロという大盤振る舞い。今まで株式投資をしたことがない人が始めるには絶好のタイミング。

細野 今年は、給与が上がるとともに物価も上昇していく。つまり、収入にも支出にも大きな変化が出る年。それをどうコントロールできるのかによって、将来大きな差がつくでしょう。

山田 増税やNISAなど、今がマネーに関する知識を深め、力をつける絶好のチャンス。皆さんにも行動してほしいですね。

◎各種のデータ、スケジュールは取材時のものです。

細野真宏

「増税しても景気は悪化しない。
むしろ将来不安の解消につながる」

●世界一わかりやすいカリスマ講師
細野真宏

予備校講師。経済解説者。日本初の経済書ミリオンセラー『経済のニュースがよくわかる本「日本経済編」』などベストセラー多数。総理直轄の「社会保障国民会議」「社会保障改革集中検討会議」委員なども歴任。

山田真哉

「年金に対する不安が和らげば
日本人の資産運用は大きく変わる」

●ベストセラー公認会計士
山田真哉

一般財団法人芸能文化会計財団理事長。公認会計士・税理士。著書に160万部突破『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』など。本誌連載をまとめた『問題です。2000円の弁当を3秒で「安い!」と思わせなさい』も好評発売中。