『オタママ充! オタクなママでい〜じゃないっ!!』(KADOKAWA)

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「オタク」。一昔前まではアニメ好きな男性を差していた言葉だが、いまや男性だけに限らず女性のオタクも多く、興味の対象もマンガ・アニメはもちろん、鉄道やアイドル・イケメン俳優、ゲームとどんどん広がっている。

 そんな中で女性オタクを悩ませるのが、リアルな生活との両立だ。好きなものをとことん追求したいという気持ちはある一方、結婚、ましてや出産して子持ちともなると、行動に物理的・体力的・経済的な制限がかかり、独身のころのように自由を謳歌できなくなるのでは、と不安を抱かずにはいられない。オタク活動と実生活を両立するためにはどうすればいいのか。GLAYやイケメン俳優、アニメ・ゲーム・同人活動など好きなものをとことんおいかけながら子育ても楽しむ、漫画家アサナ氏の『オタママ充!』(KADOKAWA)から、そのポイントを学んでみよう。

 まず一つ目は「子どもがいる立場を楽しみ、利用する」ということ。コンビニエンスストアでミュージカル『テニスの王子様』のオリジナルグッズがあたるくじが発売すると聞けば、1番に店に乗り込み、すべてのくじをお買い上げ。景品はベビーカーに乗せて持ち帰るのだ。アサナ氏は、友人と同人誌を貸し借りするときもベビーカーを使う。子どもがいるから荷物を運ぶのが難しいと思いきや、子どもがいるからこそ持っているベビーカーを最大限に利用するのだ。

 戦隊モノの素面ショー(被りものではなく、演じている役者が登場するショー)には、まだ戦隊の意味もわからない息子を連れていく。これは「子連れだと高確率で俳優が近くに」来てくれるという計算あっての行動。子どもがいる立場を最大に生かした戦術を考えれば、よりオタク活動が楽しくなるもよう。

 二つ目のポイントは「無理をしないこと」。出産予定日の1カ月前に、大好きなGLAYが野外ライブを発表するも、アサナ氏は体のことを考え「あ無理だ☆ こりゃ行けないわ☆」と即決。ところがその後、ライブ・ビューイングが決定したため、そちらに参戦することに! もちろん、目の前でメンバーを見たいというのが本音だろうが、優先順位を間違えないことも大切なのだ。

 外出も無理をしないことが大切。見に行きたいと思っていた「エヴァンゲリオン展」、赤ちゃん連れで行くことにためらいながらも、事前に運動させ、ご飯をいっぱい食べさせ、息子を眠らせる作戦が成功したタイミングで入場! 途中で息子が起きて泣きわめいたために帰ることにしたが、過剰に落胆しないところが潔い。子育ては一生続くわけではなく、子どもは年々「できること」が増えていく。「今」できないことは無理をしないというのは正しい「オタママ」の姿勢だろう。

 3つ目のポイントは「家庭サービスも怠らない」。アサナ氏はライブの日は、夫の食事や息子の離乳食の準備はもちろん掃除・洗濯も終わらせてから出かけるため、夫も「ここまでちゃんとしてると突っ込めなくて送り出しちゃうんだよなあ......」と不満を持つことなく妻を見送る。ライブから帰ったときも、「子供産んでもこうやって特別なライブに行けてすごく幸せ これも旦那ちゃんのおかげだね」と感謝の気持ちをちゃんと伝える。また、夫の好きなゲームが発売したとあれば、「今日1日陽ちゃん連れてでかけるからゆっくりゲームしなよ!」と自由な時間を作ることにも協力的だ。趣味を楽しみながらも、寛容な心で協力してくれる家族への感謝も忘れない。こういったアサナ氏の姿勢が、趣味と家庭の両立を支えているのではないだろうか。

 本書はアサナ氏という女性の視点から描かれているが、実はこのノウハウはそのまま男性にも適用できる。家庭を持っても、自分の趣味や生きがいをあきらめたくない。そんな思いを持っている人にこそ、手にとってほしい1冊だ。
(江崎理生)