『新・幻の性資料1 昭和名作 裏ビデオの軌跡』(イースト・プレス)

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「FC2アダルト」や「XVIDEOS」、「xHamster」など、このところ週刊誌や夕刊紙などのオヤジ向け媒体で、相次いでエロ動画サイトが紹介されているのをご存知だろうか。

「40歳からの無料&無修整「モロ出し動画」超速入門」(『FLASH』光文社)、「60歳からの「完全モロ見え」エロ動画」(『週刊現代』講談社)などと謳い、サイトの利用方法から、見たい動画の検索方法などにいたるまで、手取り足取り解説しているから恐れ入る。しかも「続・超入門」と称して3週連続で特集を組んでいたりするのだから、オヤジたちもさぞ小躍りしたにちがいない。

 アダルト業界の一部からは「違法にアップロードされたエロ動画視聴を煽るのはいかがなものか」といった批判も噴出しているが、タダで無修正動画が見られるなんて、オヤジ読者たちの青春時代には考えられなかったこと。使い方をマスターすべく、週刊誌を熟読する姿勢ぐらいは大目に見てもいいのではないだろうか。

 そんなオヤジたちの青春時代──あの頃も今と同様に、いやそれ以上に、無修正すなわち"裏ビデオ"を見ることに心血を注いでいたはずだ。その熱狂ぶりは、80年代初頭のエロビデオへの欲望と飢餓感を名作裏ビデオと共に収めた『新・幻の性資料1 昭和名作 裏ビデオの軌跡』(イースト・プレス)で知ることができる。

 ネット上には無修正動画がゴロゴロと転がっており、PCやスマホなど、指先ひとつで生本番を視ることができる昨今、数年前まで主役だったDVDはすでにその座を追われつつあるが、とうのDVDが追放した最初の王様は"ビデオ"であった。その生い立ちをAVライターの東良美季氏がこう解説している。

「一九八〇年のある時、会津若松のラブホテルに出入りするリース会社が、本来なら事後に自動消去されるはずのビデオデッキに細工。カップルの愛の営みが記録された三〇分テープを入手」
「これが裏業者の手に渡り、『福島モーテル消し忘れ』とタイトルが付けられ出回ることとなる」
「この出来事が、『ビデオとはポルノの画期的なアイテムである』と、ある種の人間に認識させたのは確かなようだ」

 70年代のエロといえば「女優と男優が白々しく腰を合わせてみせる日活ロマンポルノ」や「大きなパンツを履いた年増女のヌード写真」だったという。それが80年代に入り"ビデオ"の登場で一変したのである。この時点では家庭用ビデオデッキの普及率はまだ低かったが、"あの名作"の登場に、事態は急変する。

 そう、『洗濯屋ケンちゃん』である。

「現物を入手した週刊誌各誌は画面撮りを入れて紹介。それは観たくとも『どうやって手にいれたらいいのか?』『何処で売っているのか?』という飢餓感をも煽り、『ケンちゃん、観た?』はサラリーマンたちが酒場で交わす合言葉となった」(同書)

 またたく間に一般層に普及した『ケンちゃん』の売り上げは、「15万本とも50万本とも言われ」たというが、購入者がダビングして貸し、さらにまたダビングし......が繰り返され、視聴した人間の総数は「おそらく現在でいうダブルミリオン(200万人)を軽く越え、500万人に達していた」と推測されている。

 実は、家庭用ビデオデッキの普及は、『ケンちゃん』の大ヒットと同時期であったという。男性読者諸賢はなんとなくその理由を察しているだろうが、AVライターの沢木毅彦氏による解説がこれまた昭和的でおもしろい。

「ビデオデッキがまだ高値だった時代、この作品をおまけ商品とした電気屋が日本各地にあった」
「自室で和製のモロ見えのハードコアを一人で楽しめるのだ。『デッキを買えば"ケンちゃん"が見られる』口コミが広がった。インターネットなどはなく、地方都市にはアダルトショップもない。頼りは商店街の電気屋さんだけ」(同書)

 ビデオデッキの売上に多大なる貢献を果たした作品、『ケンちゃん』。それではお待ちかね、その中身をお教えしよう──。

 むっちり美人の人妻が、部屋で自慰に耽っている。剃り上げられた秘部にバイブを挿入、しばらく喘ぐと、腰を浮かせ絶頂を迎える。

 場面が変わり、洗濯屋のケンちゃんが登場。ケンちゃんは彼女をデートに誘い、草が生い茂る河原の土手へ連れ出す。そしてその場で人妻を押し倒し、丹念に愛撫する。

 そのまま2人は全裸になり、後背位と正常位のアオカンに突入。自然光で見る人妻の艶かしい裸体といやらしい喘ぎ声は、なかなかエロティックだ。

 後半は雰囲気がうってかわり、ケンちゃんが友達の彼女を騙してラブホテルでファックという展開。こちらも思いきりのよい生本番である。

 ......お楽しみいただけただろうか? 物心ついたときから無修正が氾濫している環境で育った20代が見たら、「なんて生ぬるい」と思うかもしれない。だが、そこに漂う、現代では再現不可能な昭和ならではの淫靡な雰囲気が、当時の熱狂ぶりを思い起こさせる。

 同書には他にも、名もなき美少女とゴン太いイチモツの持ち主がラブホテルでまぐわう『少女伝説』や、裏ビデオ初期のスター女優・宮地ヨシ子が新人OLに扮し、「やめて下さい、課長」という抵抗むなしくハメられ、正常位や騎乗位で積極的に乱れる『終冬』など、名作の貴重な画面写真と作品解説が収録されている。

 ワンタッチで簡単に無修正に辿り着くのもいい。だが、きっと一生忘れられないのは、こういった昭和の名裏ビデオたちだろう。
(羽屋川ふみ)