写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●最強の「写っちゃった決定的瞬間」「写真甲子園2014」の本戦レポートも本稿が最終回。8月8日の結果発表と表彰式の様子を伝える前に、公開審査会で高く評価された写真を数点紹介したい。

■関連記事「写真甲子園2014」レポート (その1) - 「本戦」はライブだ! 撮影タイムは約2時間「写真甲子園2014」レポート (その2) - 1,000件の「いいね!」より価値ある審査講評「写真甲子園2014」レポート (その3) - 雨の中のファイナル撮影、そして作品提出

さて、写真甲子園の本戦では、3日間のファースト、セカンド、ファイナルの各ステージごとに出場各校が8枚組の作品を提出する。その8枚組作品に対して、審査委員が公開審査会で講評するのだが、その中から一枚の写真として絶賛されるものも出てくる。

「レポート その2」で触れたように、批判された作品がダメとは限らない。厳しい言葉は期待を込めた愛情の裏返しとも考えられるのだが、ここでは素直に公開審査会で好意的なコメントを得た作品について考えてみたい。(以下、作品写真すべて写真甲子園実行委員会提供)

○「写っちゃった決定的瞬間」

筆者が取材を開始する前日、8月6日のファースト公開審査会で絶賛されたのが、大阪府立成城高校の「足の裏」だ(※)。米審査委員が「音が聞こえてくるよう」と評したように強烈なインパクトを持つ一枚である。

「これは、"写っちゃった写真"のすごさ」という立木審査委員長のコメントがすべてを物語るが、偶然性もはらんだ決定的瞬間ならではの力強さを感じさせる。

また、「足の裏」への講評ではないが、米審査員の「撮ったときには意識していなかったものが、写っていることがある。そうした意外な発見が後から出てくることがあるのも写真の魅力」というコメントも印象に残った。

※以下、一枚作品のタイトルは関係者で共有されていた「通称」。

○「人の表情」と被写体にめぐり合う幸運

愛知県立津島東高校の「ヒサエおばちゃん」もファースト公開審査会での一枚だ。「困ったような、ちょっとうれしいような、16歳、17歳の少女のような初々しさが出た表情がよい」とは立木審査委員長。この作品に限らず、被写体のすばらしい表情を捉えた写真は好評を得たものが多い。

また、「この人たちに出くわした運の良さ」(立木審査委員長)というコメントがあったように、短時間決戦の写真甲子園本戦では、被写体を発見する力、被写体に出会える力も重要だ。さらにそこから表情や情景を捉えるには、「写真が上手く撮れる前に、きちんとコミュニケーションできること」(同)も大事になってくる。

○「高校生らしさ」と「チャレンジ」

一方、用意したアイテムを使ったり、自分たち選手の1人を演出して撮影した写真は、よほど完成度が高いか、独創的なものでなければ、厳しいコメントを浴びがちだ。そんな中、北海道江別高校がファイナルで提出した作品は"認められた"感があった。

この一枚は、雨の中、一脚の先にEOS Kiss X7を取り付け、セルフタイマーを使ってストロボ撮影したという。そんなチャレンジに引き付けられるのかもしれない。「女子が前のほうがよかったんじゃんない」という立木審査委員長の意見に筆者も同感だが、セルフィの一種なのに嫌味はなく、ソーシャル時代の今っぽさも感じられた。

●優勝から特別賞まで各賞が決定○優勝から特別賞まで各賞が決定

さて、すでに報じてはいるが結果発表である。選ばれるのは、優勝が1校、準優勝が1校、優秀賞が5校、敢闘賞が11校、町民が選ぶ特別賞が各ステージごとに1校(計3校)、新設のキヤノンスピリット賞が1校、同じく新設の選手が選ぶ特別賞が1校だ。

優勝は愛知県立津島東高校。ファーストの「ヒサエおばちゃん」をはじめとしたモノクロ作品、雨に濡れた風景のカラー作品ともに評価された。準優勝は埼玉栄高校。ディフェンディングチャンピオンというプレッシャーがあった中、しっかり実力を発揮した。優秀賞の5校には沖縄県立浦添工業高校、香川県立坂出高校、石巻市立女子高校、埼玉県立芸術総合高校、北海道江別高校が選ばれた。

以下、優勝校と準優勝校は3日間の8枚組み作品とピックアップした3枚を、優秀賞校はピックアップした1枚を掲載する。(以下、写真はすべてクリックで拡大)

○優勝 愛知県立津島東高校

○【準優勝】埼玉栄高校

○【優秀賞】の5校

○【町民が選ぶ特別賞】の3校

町民が選ぶ特別賞は、ファーストステージ作品が埼玉県立芸術総合高校、セカンドステージ作品が沖縄県立真和志高校、ファイナルステージ作品が北海道江別高校の受賞となった。

○【キヤノンスピリット賞】と【選手が選ぶ特別賞】の各1校

キヤノンスピリット賞は、チャレンジしたチームをたたえるため今大会から新設された。受賞第1号となったのは「足の裏」の大阪府立成城高校だ。同じく新設の、選手が選ぶ特別賞には大阪市立工芸高校が。同年代から評価されたとあって、これもうれしい受賞だろう。

○【敢闘賞】の11校

そして、北海道名寄産業高校、宮城県泉館山高校、群馬県立藤岡北高校、埼玉県立浦和第一女子高校、中越高校、静岡県立伊東高校、大阪府立成城高校、帝塚山学院高校、大阪市立工芸高校、山口県立新南陽高校、沖縄県立真和志高校に敢闘賞が贈られた。

●写真甲子園で得たものは?○審査員からのメッセージ

表彰の後、審査委員の竹田津氏、米氏、審査委員長の立木氏から、選手たちにメッセージが贈られた。

竹田津氏は、「(例年にない)雨の中で、どういう写真を撮ってくるか楽しみだった」と切り出し、とくに印象に残ったチームとして埼玉芸術高校をあげ、「"私は高校生です"という写真を真正面から出してきてタジタジとした」と健闘をたたえた。同校を含め、8校が初出場という大会でもあった。

米氏は、「LINEなどをふだん使うことが多いと思うけど、大会で3日間、人の目を見てお願いしたりしましたよね。それが本当のコミュニケーションの基本。大事にしてほしい」と語りかけ、「最後は笑顔でね」と、泣いている選手たちを慰めた。

立木氏は、「(写真甲子園は)カメラマンの養成所じゃない。写真が上手、下手では評価が決まらない大会。その後(大会後、卒業後)のことがより重要で、撮った人、触れ合った人との関係性を大切にしてほしい。それは、写真の上手、下手を超えたものになる」と熱く語った。

個人的には、閉会式の締めに大会サポーターが撮影・編集した「思い出のスライド」がスクリーンに流されたのには参った。優勝校の記者会見直前というタイミングで筆者の涙腺が決壊し、ホントに困るので、ぜひとも来年以降も上映を続けていただきたい。

○写真甲子園で得たものは?

これだけ濃密に写真漬けの日々を送った選手たちは、きっとすばらしい体験をしたことだろう。静岡県立伊東高校の遠藤覚監督は、「最終日、審査員から出された宿題に対して、"やってやろう"と奮起して、力のある写真が何枚も出てきたのでうれしかった。3人とも3年生で受験生、もうこれで終わりってこともあって、みんな雨の中で最後まで粘って撮った。もうすごい成長!」と選手をたたえた。

優勝した愛知県立津島東高校の盛岡剛洋監督は、「とくに大会2日目、"巣立っていった"と感じた。本音を言うと寂しい気持ちもあるが、それが理想」と笑顔で答えた。同じく松井遥奈選手は「被写体と向き合うことで時間を忘れて、大会であることも忘れるほどカメラづくしの3日間だった。ここで経験したことを学校に持ち帰りたい」と語った。

本稿の最後は、写真愛にあふれた立木氏の言葉で締めとしたい。

「勝ったもの以上に敗者が何かを手に入れたかもしれない。まだ二十歳前、今後も写真を続けてほしいし、好きでいてほしい」

それでは、また来年、幸運に恵まれたら。

(阿部求己)