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東京大学は8月25日、オリゴフェニレンビニレン(OPV)を炭素原子で架橋した構造を持つ「炭素架橋フェニレンビニレン(COPV)」と名付けた新開発の有機分子ワイヤ中を電子が通る速度(電子移動速度)が、既存の分子ワイヤに比べて840倍程度速くなることを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院 理学系研究科の助川潤平博士、辻勇人准教授(JST さきがけ研究者兼任)、中村栄一教授、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学のグルディ教授らによるもの。詳細は、「Nature Chemistry」に掲載された。

COPVの高速化の要因としては、分子ワイヤで連結されている電子供与体(電子を提供する物質)と電子受容体(電子を受け取る物質)間の電子的相互作用(電子的カップリング)の増大と、非弾性トンネリングと呼ばれる非線形効果の関与を示唆する結果が挙げられるという。特に、非弾性トンネリングのような効果は、これまで量子ドットなどの無機半導体やカーボンナノチューブ(CNT)などの炭素クラスタ(炭素原子で構成される物質)などでは観測されていたが、有機分子ワイヤでは、基板上に固定した分子を-270℃の極低温などの条件下で観測した例に限られていた。

今回、設計可能な有機分子ワイヤで常温駆動する初めての例として、基礎科学的重要性とともに、常温駆動する単分子エレクトロニクス素子などさまざまな方面への応用も考えられ、高機能・省電力な分子コンピュータの開発や早期実現に貢献することが期待されるとコメントしている。