橋本聖子氏facebookページより

『週刊文春』(8月28日号)において、フィギュアスケート・高橋大輔選手が橋本聖子日本スケート連盟会長にキスされている写真が掲載された。その後、高橋選手が8月21日に、この一件は「パワハラ・セクハラではない」と語ったと報じられている。現在、Twitter上ではこの是非を巡って活発な議論が交わされている状態だ。

女性から男性へのパワハラ・セクハラに混乱している人も

いつもならば、比較的社会的な地位の高い/権力を持った男性から、地位の低い女性へという形が多かったパワハラ・セクハラであるが、今回はその逆、女性から男性へのパワハラ・セクハラだということで、混乱している人も多い。

特に、普段から、パワハラ・セクハラ問題に敏感に反応するフェミニストの女性たちと、そんなフェミニストを目の敵にしているミソジニストの男性たちにとっては大問題だ。

この件が報道されると、ミソジニスト(女性嫌悪症)の男性たちからは、

・男女の非対称性をいつも訴えている女性たちは、女性からのセクハラにはだんまりを決め込むだろう
・なぜ女性のパワハラ・セクハラに対しては、いつも男性にしているように糾弾しないんだ
・フェミ識者は新聞や雑誌などの公のメディアで橋本批判をするべき
・フェミなら、こんなこと男ならいつもやってるくせに文句言うなって言うんだろう

などという意見が出始めた。

男女が逆転しようが、地位や立場を利用したパワハラ・セクハラは許されない

しかし、実際のフェミニストたちは冷静で、橋本氏を擁護する声はほとんど見られず、男女が逆転しようが、地位や立場を利用して性的に不快なことを強要することは許されることではないとみて意見している人がほとんどだし、パワハラ・セクハラ被害を受けた高橋選手が謝罪とともに、「お酒が入ってはしゃぎすぎた。大人と大人が羽目を外しすぎた」と語ったことについても、立場的に弱いものの謝罪によって、パワハラ・セクハラがなかったことにしようとする圧力は、パワハラ・セクハラの二次被害であるとの声もあがっている。

また、フェミニストたちの中には、2013年の1月に、女子柔道強化選手が監督や指導者からの暴力行為やパワハラを告発した際に、橋本氏が告発した女子選手たちの名前を公表すべきと言ったことからも、橋本氏の権力に対する考え方を疑問視している人たちも多い。

しかし、本記事では、セクハラ・パワハラに対して声を上げている女性たちを「フェミニスト」と書いてきたが、彼女たちは本当にフェミニストなのだろうか。むしろ、パワハラ・セクハラを問題であると考え、意見することは単なる常識であり、それに対して声をあげることは、フェミニストに限らず、男女問わず行われるべきであるとも思える。

政府は2020年までに女性の管理職や役員に占める女性の割合を30%に引き上げる目標を掲げている。このことによって、女性の社会進出が進めば、こうした女性から男性へのパワハラ・セクハラ問題ももっと出てくるかもしれないが、女性たちはこの一件を、「Not All Women(すべての女性がそうでない)」と他人事にしないで、セクハラ・パワハラについて、今一度考えるきっかけにしているのではないだろうか。

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(芦沢芳子)