S2D

写真拡大

金メダル本気で狙える、手応えアリ!

バレーボール全日本女子、火の鳥ニッポンの素晴らしい戦いが終わりました。ワールドグランプリ決勝ラウンド最終日。日本はロンドン五輪金メダルの絶対女王ブラジルと対戦。2セット以上とれば、史上初のワールドグランプリ金メダル、主要な国内大会では37年ぶりとなる金メダルへの挑戦。惜しくもセットカウント0-3で敗れ、金メダルは逃しますが「金メダルマッチ」に進出したこと自体が素晴らしい一歩。希望はさらに大きく広がりました。

2010年の世界選手権で32年ぶりの銅メダルを獲得。2011年のワールドカップでは8勝3敗という成績で3チームが並び、その中で日本はセット率でもっとも上位だったものの、「3-0もしくは3-1での勝ちに勝点3、3-2の勝ちは勝点2、2-3の負けはセット失うと勝点1」という順位決定方式が採用されたことで4位に。2012年のロンドン五輪はご存じの通り28年ぶりの銅メダル。2013年のワールドグランドチャンピオンズカップでも12年ぶりに3位銅メダルを獲得。そして今大会、2014年のワールドグランプリでも2位銀メダル。

「●年ぶり」を繰り返してきた近年の女子バレーの躍進は、ロンドン五輪を頂点として終わることなく、さらに大きな目標に向かって上昇カーブを描いている。そのことを実感させてくれた大会だったように思います。なにせ、銀。これまで4位以上になったことのない大会で銀。過去になかったことを実現したのですから、そりゃ希望も広がるというもの。足かけ5年に渡り、主要な国際大会でメダル獲得orメダルに限りなく近い成績を残してきたチームなのですから、金メダルを狙わないのは逆に不自然です。「夢」「目標」「意気込み」を超えて、「チャンス」としてとらえなくては。

確かに大目標は来月の世界選手権です。その意味で、他国は「練習試合」としてテストや強化が中心だったかもしれません。しかし、それは日本も同じこと。むしろ日本は「hybrid6」なる自分たちもハッ?となるような戦術にトライした中での好結果。これは相当に期待できるのではないでしょうか。過去の実績から、単純に日本の女子は「普通に」メダル圏内にいる上で、どうやら新戦術はプラスの上積みがありそうなのですから。銅は現実圏内、銀は射程圏内、そして金はチャンス圏内。この上昇カーブが2020年東京五輪につながったらと思うと、楽しみで仕方ありませんね。

ということで、「コレを倒せば五輪でも金」という相手に惜しくも敗れた、24日の「女子バレー・ワールドグランプリ日本VSブラジル戦」をチェックしていきましょう。


◆強い!面白い!美しい!この30年くらいで最強の全日本女子誕生だ!


大会最終日。有明コロシアムは満員のお客さんで埋まりました。大会前半は、平日開催ということもあって正直スカスカだったスタジアム。プレイガイドでは大量の席が余っていました。しかし、全日本の強さが世間を動かした。破竹の連勝劇を前に、残席は一気にはけ当日券が出ないという人気ぶり。銅メダルを獲得した2010年の世界選手権でもこんなことはありませんでした。

観衆の期待はもちろん「金メダル」。しかし、立ちはだかる相手は金メダルホルダー・ブラジル。ブロック名人ファビアナ。あらゆる意味でデカイ、190センチ台後半の身長とサオリン以上の胸を持つタイーザ。そして最強ブラジルの象徴、「ミスMVP」シェイラ。リオ五輪で金メダルを狙う気マンマンのメンバーが、ガチガチに勝つ気で待ち構えていました。「誰か、有料練習試合だって言っておけよ」「ありがたいが、空気読め!」「先に2セットくれ!話はそれからだ!」と、だいぶぶっちゃけた要求もノドから出掛かります。

↓世界には化け物がたくさんいるが、ブラジルは全員がバケモノだ!

大林素子よりデカイのがゴロゴロいるんだぞ!

アリャ大森林だ!アマゾンの大森林だ!

そして始まった試合。全日本のメンバーは好調の流れを汲んで、2〜4戦と変わらず。サーブ権のない状態から始まる第1セット、セッターが前衛レフト側に入るS4のローテーションから始めるのも変わらず。日本はライト攻撃の連発、バックアタックなどhybrid6らしく攻撃を散らしていきます。

しかし、ブラジルはサーブで日本を攻めてきます。日本ではリベロ、木村沙織、新鍋理沙の3人がレセプション(サーブカット)を行なうわけですが、そのうち前衛にいる選手(木村or新鍋)の取らせるようにサーブで狙ってきます。厳しいサーブで体勢を崩したり、準備に時間が取れなくなれば、攻撃でその選手を遣うことが難しくなる。選択肢が少なくなれば、日本のアタッカーよりも遥かに高いブラジルのブロックが日本を捕らえるのは必定。日本のレセプションとブラジルのサーブ、勝負をわけるポイントがここにあることは間違いありません。

そしてブロックでもブラジルはさすがの動き。中央のミドルブロッカーの動きは早く、日本の配球に合わせてしっかりとサイドまでついてきます。さらに、日本が得意なブロックアウトを狙う攻撃をサイドのブロッカーが意識的に塞ぎ、日本の攻撃陣にプレッシャーをかけてきます。決まってはいても、「それは知っているぞ」という対応をされると怖いもの。頼りの木村沙織も、相手がよく見えるぶんフェイントを選択することが多くなります。エースがズドンとやれず、フェイントで点を取るというのは、決していい流れの攻撃ではありません。

結局第1セットはテクニカルタイムアウトも取れず、15-25の大差で失います。途中でイチかバチかのコミットブロックや、速攻で空振りに近いミスショット、お見合いなども飛び出し、だいぶやられたなという印象。コミットしてどうこうなるブロック陣なら、そもそもhybrid6などど言わなくてもいいところ。ブロックは「止める」のではなく「スピードを殺す」。そのぶん、得意なディグで頑張る。この相手にhybrid6がどれだけ通用するか測るためにも、もう少しらしさを出していきたいところです。

↓こんな配置で日本が構えているS2ローテ時は、執拗にサーブで新鍋を狙ってくるなど、ブラジルは日本の試合を見てしっかりと対策してきています!

前衛からレセプションに加わる新鍋を狙う

レシーブしてから攻撃の準備をするので、忙しい

いいレシーブが出来ていないと余裕がない

セッターも新鍋に上げにくくなる

攻撃は自然と真ん中から右側(長岡のライト攻撃、中央からのバックアタック)に偏る

サイドのブロッカーは長岡をしっかり見る

中央のブロッカーはバックアタックを警戒しつつ日本のトスを見る

このパターンだとほぼほぼ長岡に出すことになるので、それを止める

日本困る

汚いぞブラジル!

サーブはリベロを狙え!

【1000円以上送料無料】いじめは、やめて!/スーザン・アイコブ・グリーン/上田勢子

価格:1,620円
(2014/8/25 11:43時点)
感想(0件)



第2セット、日本側からは「サーブで前衛レフトを狙えていない」というレポートも。ブラジルが第1セットでキッチリやっていたことと同じ狙いですが、それを実行できないのは日本側の物足りない面でもあります。サーブで攻める、レセプションで頑張る。何をするにあたってもサーブの攻防こそが日本の生命線。逆のことをやられていては、タダでさえ厳しい試合が、どうにもならない試合になってしまいます。

しかし、ブラジルはそこがまた強い。これまで相手チームを苦しめてきた日本のサーブも、まるで何の変化もしていないかのように軽々とオーバーハンドでキャッチする。そして、たまに相手を崩すいいサーブが出ても「セッターが2アタックで日本のサーバーがカバーする想定のエリアを狙って落としてくる」という具合に、常に1枚上を行かれている感触。

セット終盤にはキャプテン木村沙織を下げて、高田ありさを投入するという策も講じますが、第2セットも17-25と大差で失います。始まる前は「2セット取れば金」と思っていたものが、あとがないところまで追い込まれてきました。負けてるセットの終盤はレギュラーをどんどん下げて体力を温存する、というある意味で割り切りのいい日本の作戦は、第3セットで実るでしょうか。

↓木村沙織に代わって入った高田ありさもレシーブ、スパイクで奮闘!


カワイイ選手OUT!

カワイイ選手IN!

日本もブラジルに負けず劣らず層が厚いぞ!

そして迎えた第3セット。日本はセッターが前衛中央から始まるS3のローテーションからスタート。ローテーションを変えてきました。身長が低いセッターの中道を前衛に置くのはなるべく避けたいリスクです。それでもあえてこのローテーションからスタートするのは、日本の最初のサーブを木村沙織に回すため。一番サーブの効果が高い木村のサーブで、序盤から走っていこうという寸法です。

日本は最初のレセプションの場面、後衛に回ると基本的にはリベロと交代する長岡をセッター対角の位置でコートに残し、バックアタックで相手サーブを切ります。この試合ではほとんど見せていないはずなので、ブラジルも「ほぼない」と思っていた選択肢だったでしょう。こうした形で、布陣を変えながらいろいろなことをできるのもhybrid6ならでは。相手方は日本選手の特徴を頭に叩き込んでおかないと、全方位攻撃には対処できないはず。アナリストの伝令が間に合わないくらいグチャグチャに変化していけたら、もっと日本の攻撃は機能するはず。その片鱗が見えた大きな1点でした。

↓実況は「やってきたな!」と理解して驚いているが、解説は「?」となっている第3セット日本の1点目!



実況:「長岡の何と!バックアタックの幕開け!」
解説:「飛びましたねぇヘッヘッヘッ」(←驚くのはそこじゃない)
実況:「これセッター対角、オポジットのポジションですね長岡が」
解説:「ですねぇ…そうですね」(←今見た)

あいづちひとつで会話がとぎれない話し方のコツ66 (単行本・ムック) / 北原千園実/著

価格:1,296円
(2014/8/25 11:45時点)
感想(0件)



日本は序盤、うっかりブロックポイントが出たり、相手のサーブミスやタッチネットなどもあって8点のテクニカルタイムアウトを奪取。ようやく8点を先に取りました。さらに10-7と一時は3点をリードするも、そこから点が動かず10-11と逆転。特に同点にされる1点は日本側のアウトオブポジション(ローテーションで正しい位置にいない)という珍しい反則によるもの。瞬間がハッキリと見えませんでしたが、おそらくセッター対角に長岡が入ったことで、「左利きなのでライト側からスパイクを打ちたい長岡」がリベロよりも右に行ってしまったことによるものでしょう。

これはhybrid6の弊害と言えるミス。本来ミドルブロッカーの位置で試合に出ている長岡を、セッター対角の位置でハイブリッド起用したことで、いつもなら石井あるいは江畑という右利きの選手がいるはずのところに、左利きの長岡が入ったのです。そのため、普段の「右利きなのでレフト側から打ちたい」選手ではなく、「左利きなのでライト側から打ちたい」選手になり、微妙に位置取りの感覚が変わってしまった。長岡がリベロより後ろにいるのですから、そこはしっかりと調整が必要でしたが…まぁ慣れの問題ということで当面は諦めるしかありません。

↓アウトオブポジションはあまり見られない珍しい反則(2分30秒頃から)!


日本のコートが映ったとき、わずかに長岡の足がリベロより右に出ているように見えるので、それかな!

ハイブリッドミスや!

私たちはいまどこにいるのか [ 小熊英二 ]

価格:1,944円
(2014/8/25 11:48時点)
感想(1件)



その後、16点目のテクニカルタイムアウトの攻防では、「左利きの長岡がレフトに行っている」のに長岡・長岡と送り、2本つづけてシャットアウトされるハイブリッド選択ミス。たまらずベンチも長岡OUT石井INで形を戻しますが、木村沙織のバックアタックをブロック1枚が止めてくるなど、ブラジルのブロック陣の前に日本の攻撃が跳ね返される展開。

高田ありさの2連続サーブポイントで再び同点としますが、終盤には新鍋のスパイクが連続アウトになるなど、ブラジルが先にマッチポイントを握る苦しい展開はつづきます。このあたりは中央のミドルブロッカーの高い運動能力で壁を作られ、「ブロックアウト」という策を序盤からマークされ、打つところがなくなっていったという感じでしょうか。さすがブラジル手強いですね。

それでも粘る日本。22-24から石井のスパイク2本で同点に。24-25と二度目のマッチポイントでは、再び石井が今度はライトから決めて同点。その石井のサーブがアウトとなり、25-26と三度目のブラジルマッチポイント。粘った日本ですが、三度目の正直でブラジルが決め、残念ながら日本の金メダルはなりませんでした。

↓喜びすぎてブラジル整列しないwww整列しろよwwwwwwwwwwww


こんなに喜んでるブラジルなら、負けてもいいか!

次は喜ばせずに勝つ!

端的に言うと、向こうのほうが強かった。ブロック、スパイクは全然上。サーブ、レセプションでも向こうが上な感じ。しかも、日本が得意だと思っているレシーブでも、ブラジルは粘って拾ってつないできました。こりゃかないません。逆に日本は、hybrid6らしさを上手く出せず、最後は少し前までのような外・外へ逃げながら、エースに託すバレーに。まぁ、向こうは完成されたチームで、コチラは作りかけのチーム。その差を埋めるには2年という時間はちょうどいいもの。2年という時間、金メダルにロックオンして過ごせる、その資格があると証明しただけでも、今大会は大収穫だったのではないでしょうか。本当にリオが楽しみですね。

サオリン!ハルカ!サリ!リオが終わったら僕とハイブリッドしようよ!