2012年6月のECB前。アンチ・グローバリズムの市民団体が広場を占拠していた  (Photo:©Alt Invest Com)

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 今年の6月、ブラジルワールドカップの時期にヨーロッパを旅行した。賞味期限が切れないうちにそのときの感想を書いておきたい。

 サッカーの試合を観ならがつくづく感じたのは、開催国との時差の問題だ。日本のようにブラジルとの時差が12時間で、平日朝の通勤時間に試合が行なわれると、盛り上げようにも限界がある。それに対してブラジルとヨーロッパとの時差は5時間で、グループリーグが行なわれる現地時間の午後1時、4時、7時は午後6時、9時、午前0時だから、まさにサッカーを楽しむのに理想的だ。スポーツバーだけでなくレストランやカフェもモニターを据えつけ、街じゅうがワールドカップ一色になる。

 2002年の日韓ワールドカップがヨーロッパで盛り上がりに欠けたのは、人気チームが早々に敗退したこともあるが、やはり時差の問題が大きい。サッカーはヨーロッパが中心だから、今後の開催地も欧州、南北アメリカ、アフリカが有利で、中国がワールドカップ出場国の常連になってサッカーの巨大市場に成長しないかぎり、次のアジア開催は難しいかもしれない。

ECB前のアンチ・グローバリズム運動は跡形なく…

 ワールドカップはドイツが決勝でアルゼンチンを破り4度目の優勝を果たしたが、そのドイツの試合はグループリーグのガーナ戦をフランクフルトで観戦した。

 フランクフルトはドイツの金融センターで、中央銀行ブンデスバンク(ドイツ連邦銀行)のほか、ユーロを統括する欧州中央銀行(ECB)の本部も置かれている。

 世界金融危機の連鎖によって引き起こされたユーロ危機では、ギリシアなど南欧の国々の財政状況が悪化し、共通通貨ユーロは解体の瀬戸際に追い込まれた。それを「ユーロの守護神」として支えたのがECBだ。

 世界的な景気後退で経済格差が広がり、社会の二極化が進んだとして、2011年9月にニューヨークでアンチ・グローバリズムの運動「ウォール街を占拠せよ」が始まった。ヨーロッパにおけるグローバリズムとは、各国から通貨発行権を取り上げてユーロを誕生させたことで、その象徴であるECBの前でも市民団体による占拠(「フランクフルトを占拠せよ」)が行なわれた。

 私はたまたま2012年6月にフランクフルトに立ち寄ったが、そのときはECB前の公園に多数のテントが並び、さまざまな集会や勉強会が開かれていた。

 それから2年たって、広場はきれいに片づけられ往時の痕跡はフェンスに貼られたビラだけになっていた。

 本家のウォール街占拠は、周辺住民から苦情を受けた公園所有者(不動産会社)の要請で11年11月に強制排除が行なわれている。フェンスに掲げられた抗議文からすると、フランクフルトでも私が訪れた直後に警察による排除が実施され、テントが一掃されたようだ。

 いまのECB前は、公園で市民がのんびり談笑し、観光客が巨大なユーロのシンボルを背景に記念写真を撮っている。フェンスには反TPPの主張やデモ参加者の寄せ書きなどが掲げられているが、関心を向けるひとは誰もいない。

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