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●漫画家のルーツは、島袋光年氏の『世紀末リーダー伝たけし!』『テラフォーマーズ』という漫画をご存知だろうか。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中であり、この秋にはTVアニメ化も決定している超人気作品だ。8月に発売となる単行本10巻、11月発売の11巻には、TVアニメに先がけてOVAが同梱されることが決まっており、こちらも話題を呼んでいる。

『テラフォーマーズ』はジャンルとしてはSFバトル漫画だが、その設定・世界観は実に斬新である。火星に特殊な苔とゴキブリを送り込み、その黒さで太陽光を吸収させて、人が住める環境にする「テラフォーミング計画」から500年。この計画の中で、予期しない出来事が起こった。火星のゴキブリたちは500年間で驚異的な進化を遂げ、駆除に向かった人間に襲いかかってきたのだ。ここに、人類とゴキブリの壮絶な戦いが幕を開けたのだった――。

個性豊かなキャラクターと迫力のバトル、そして何より読者の予想を裏切り続ける熱いストーリーで人気の本作。原作者はこれがデビュー作となる若干25歳の若手原作者・貴家悠氏だ。いったい『テラフォーマーズ』はどのようにして生み出されたのか。そして、デビュー作がアニメ化という快挙に対して貴家悠氏は何を思うのか。作家としての経歴から製作秘話まで、幅広い話を聞くことができた。

――早速ですが、まずはアニメ化について率直な感想をお聞かせください。

本当にありがたい限りですね。アニメ化はもちろん、ここまで続いたことすら想定外でした。単行本10巻、11巻にはOVAが同梱されるのですが、シーンの一つひとつをとてもよく再現していただきました。人がもがれるところなどをアニメで改めて見ると、なかなかキツイですね……(笑)。

――ここまで続いたことが想定外ということですが、連載当初はそこまで続けるつもりがなかったのでしょうか。

本当は6話で終わる予定だったんですよ。それで、5話目くらいですべての謎が明らかになるようなシナリオを書いていたんです。ところが、編集さんに「やっぱり続くから」って言われたので、火星の謎を解説していた知的キャラの首を飛ばして謎を残し、続けることになりました(笑)。

――本作は貴家先生のデビュー作ですが、そもそもどういった経緯で連載が始まったのでしょうか。

自分がもともとラグビーをやっていたこともあって、ラグビー漫画を描いて編集さんに見せたところ、「次は潜水艦か火星の話を持ってきて」って言われまして。それがきっかけでしたね。

――ということは、もともとゴキブリVS人間の話を描きたいというわけではなかったのですか?

そうなんです。特に虫に詳しいということもなかったですし、『テラフォーマーズ』を描くと決めてから図書館の昆虫コーナーに通い始めました。虫について調べるうちに面白いなと思い始めたんです。平日の図書館の小学生が多いコーナーで、ひげ面の男が昆虫図鑑を見ている見ているわけですからね。警備員さんに「何かお探しですか」って声をかけられたこともありましたよ。いやいや、探してるも何も、今昆虫の本をめっちゃ読んでるじゃないですか! って(笑)。どうも僕は、子供の頃から疑われやすいたちみたいなんですよね(笑)。

――ちょうど小学生のお話が出たので、漫画家になられた経緯をお聞かせください。

小学2年生くらいのとき、いとこが『世紀末リーダー伝たけし!』(島袋光年/集英社)をうちに置いていったんですよ。それを読んでからずっと漫画家になりたくて、でもそのためにどうしたらいいかはわからず、絵の練習もせずに過ごしていました。大学に入ってからようやく暇になったので、ラグビー漫画を描いて某少年誌に持ち込んだのですが、やんわりと全ボツになりまして……。それから『ヤングジャンプ』を見たところ、アシスタント募集って書いてあったので、まずは修行をしようと思って応募しました。それから橘先生(テラフォーマーズ作画・橘賢一氏)のアシスタントになったんです。

●人気が出たから殺すとか生かすとかではなく、予定通り死んでいく――作画の橘先生とは最初、漫画家とアシスタントの関係だったのですね。しかし、そこから原作と作画になるのは珍しいのでは?

編集:それは私からお話させてください。橘先生はすごく温厚な方で、どんな下手な人でも使ってくださるんですよ。ところが、貴家先生の場合は3日くらいで橘先生から「ちょっとこれは……」と(笑)。だけど、貴家先生の作品はそれ以前からとにかく台詞のキレがすごかった。これはスケールの大きな話を描けるんじゃないかと思っていて、ちょうど『テラフォーマーズ』の1話のネームが上がってきたところだったので、橘先生にお見せしたんです。

――橘先生の反応はいかがでしたか?

編集:絵が下手すぎてよくわからない、というお返事でした(笑)。でも僕は面白いと思っていたので、騙されたと思ってこのネームを清書してみてくださいとお願いしたんです。それからしばらくして、橘先生から電話がかかってきて、「これ、超面白いんですけど!」と(笑)。橘先生の連載がちょうど終わったところだったこともあり、二人でコンビを組むようになったというわけです。

――なるほど。かなり偶然も重なって生まれた作品だったのですね。

普通の漫画家さんはまず新人賞を取って、その作品が掲載されて、その間に授賞式があったり、アシスタント時代の仲間がいたりするんですが、僕はそういうのがないので、新年会なんかに行っても友達がぜんぜんいないんです(笑)。

――改めてアニメのお話を聞かせていただきます。OVAをご覧になって、お気に入りの場面はありますか?

バグズ2号から車で脱出するシーンですね。メダカハネカクシの能力で飛び出すのですが、それがすごくかっこいいんです。メダカハネカクシの能力を説明するナレーションが微妙に中途半端に終わっているのが緊迫感にもつながっていて好きですね(笑)。

――キャスティングなどは貴家先生のイメージ通りでしたか?

キャスティングに関してはオーディションに参加させていただいて、ある程度こういう声が良いとか意見を出しました。当たり前ですけど、皆さん演技が上手で、納得の仕上がりです。漫画を描くときもある程度は声をイメージしているのですが、かなりイメージに近いですね。あとはアイキャッチのゴキブリですね。製作の方が気合を入れて描いてくれたらしく、すごくリアルな動きをするんです(笑)。

――思い入れの深いキャラクターなどは?

ミイデラゴミムシという虫をベースにしたゴッド・リーですね。あの能力は絶対にやりたかったんです。ミイデラゴミムシはインテリジェントデザイン説という、進化論反対派の人たちの反論理由にもなっている虫なんです。だって、体内で過酸化水素とハイドロキノンを合成して爆発させるんですよ! 進化論でそんなのありえないでしょって言われているくらいです。バグズ一発目のキャラクターということで、橘先生も気合を入れたデザインにしてくれました。僕も印象に残っていますね。

――物語を作る上で意識していることはありますか?

物語作りは最終的にキャラクターだと思っています。最初は半分モブのつもりで出したキャラクターのことが、描いているうちにわかってくることがあるんですよ。ああ、こいつはこういうやつだったんだとか、良い奴じゃん! とか。そういうときは描いていて面白いなと思いますね。

――キャラクターが勝手に動き出すということでしょうか。

そうですね。ただ、それによってストーリーが変わったりすることはありません。人気が出たから殺すとか生かすとかではなく、予定通り死んでいきます。ストーリー自体はもう決まっていて、そのストーリーに必要なキャラクターを出していきます。

――今後の展開も楽しみにしています。アニメから興味を持って単行本を買われる方も多いと思います。ファンにメッセージをいただけますか。

同梱のOVAで第1部をやってしまうという特殊な売り方ではあるのですが、実はアニメの1話を見逃しても、そんなに難しい話ではありません。ぜひ純粋にエンターテインメントとして楽しんでいただき、本を買うきっかけになればうれしいですね。

――最後に、ゴキブリは好きですか?

マジで無理です! 資料とかも遠ざけながら読んでいます!

アニメ化が決まり、絶好調の『テラフォーマーズ』。今後の展開にも期待できそうだ。

(C)貴家悠・橘賢一/集英社(C)貴家悠・橘賢一/集英社・Project TERRAFORMARS

(山田井ユウキ)