「ぼーっとする」のが脳にとって大切な理由

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何かに意識を集中させていない「アイドリング状態」時に、脳の一部は活発に活動している。このことが、意識的な脳活動にとって非常に重要であることがわかってきている。

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神経科学者たちは長年、脳を「ニュートラルな状態」にする最善の方法は、スキャナーにかけた被験者たちに、小さな十字をじっと見させることだと考えてきた。しかし、近年の研究成果によると、これはとんだ間違いかもしれない。

実際、何かに集中しないよう指示された人の脳は、「静寂とはほど遠い」とマックス・プランク研究所のダニエル・マーグリーズは述べる。「脳活動はオフ状態にはならない。たとえわれわれがそうしようと思ったとしても」。

何かに集中しておらず、ぼーっとしているときの脳を調べた既存の研究では、そのような状態にあるときに、別の活動中のときと比べてはるかに活性化する部位があることが明らかになっているのだという。しかも、そうした状態は、周期的に発生するようだ。

スウェーデンのマルメで8月18日〜22日の日程で開催されているカンファレンス「The Conference by Media Evolution」に出席したマーグリーズ氏は、脳の活動においては、集中力を失ってぼーっとする時間が、一定かつ予測可能なタイミングでやってくるのだと説明する。

「この種の脳活動の変動は、何をしていようと関係なく発生する」とマーグリーズ氏は述べる。

人間の脳活動では、ふたつのニューラルネットワークがきわめて重要であることが明らかになっている。ひとつは、われわれが周囲の世界に反応することを可能にしている「外界へ向けられたネットワーク」。もうひとつは、特に何もしていないときに活性化する「デフォルトモード・ネットワーク」(DMN)だ。

DMNは、脳内のさまざまな神経活動を同調させる働きがあり、自動車のアイドリング状態のように,さまざまな脳領域の活動を統括するのに重要な役割を果たしていると考えられている。

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DMNは意識的な行動をするうえで重要な役割を果たしており,ある実験では,DMNの活動を観察することによって,被験者がミスをするかどうかを30分前に予測できたという。また、アルツハイマー病患者で顕著な萎縮が見られる脳領域は,DMNを構成する主要な脳領域とほとんど重なっているとされている。

「これらふたつのネットワークは、常に反相関の状態にある」とマーグリーズ氏は述べる。人間の脳は、常にこのふたつの状態の間で変動し、振動している状態にあり、その変化のペースは最低30秒と非常にゆっくりしている(ニューロン発火の世界では、これは長時間にあたる)。その力学は、人間が周囲の世界とどのようにかかわっているかという問題の大きな手がかりを含んでいるという。

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課題の実行に関する脳の研究データを見てみると、課題をうまくこなすためには、課題の実行に関する脳の領域が活性化するだけでなく、それ以外の領域が不活性化されることも重要な役割を果たしていることがわかる。しかし、ふたつのネットワークはさまざまなかたちで相互作用するうえ、それが時間とともに変化したりするため、話はいっそう複雑になるのだという。

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