2018-1121
日本フランチャイズチェーン協会は2018年11月20日に、コンビニエンスストアの同年10月度分統計調査月報を、同協会公式サイト上で公開した。その内容によると協会加盟コンビニの同月度の売上高は既存店前年同月比でマイナス1.5%となり、5か月ぶりのマイナスを示すこととなった。今回月はたばこ価格の引き上げがあったことから引き上げ前の特別需要(特需)の反動が大きく生じ、相変わらず堅調な中食商材でも支えきれず客単価はマイナスを示し、結果として売上もマイナスを計上した(【日本フランチャイズチェーン協会公式ページ】)。
今調査の概要、調査対象企業などの詳細、分析記事のバックナンバーは、過去の記事をまとめたページ【コンビニエンスストア(日本フランチャイズチェーン協会発表)】上で解説済み。詳しくはそちらを参照のこと。

主要項目における前年同月比は次の通りとなる。

●店舗売上高:既存店は5か月ぶりのマイナス、全店は68か月連続のプラス
全店ベース……+0.6%
既存店ベース…−1.5%

●店舗数(前年同月比)
+0.9%

●来店客数:既存店は2か月ぶりのプラス、全店は2か月ぶりのプラス
全店ベース……+2.5%
既存店ベース…+0.5%

●平均客単価:既存店は43か月ぶりのマイナス、全店は16か月ぶりのマイナス
全店ベース……−1.8%(610.8円)
既存店ベース…−2.0%(602.2円)

●商品構成別売上前年同月比(既存店ベース)
日配食品……+0.7%
加工食品……−1.0%
非食品………−3.9%
サービス……−5.4%
合計…………−1.5%

※既存店……1年以上営業中の店舗を指す(店舗増加による底上げでの数字上の誤差を防げる)

2018年10月はたばこ税の引き上げに伴うたばこ価格の値上げが実施されたため、前回月にたばこをまとめ買いした特需の反動が大きく発生し、たばこ単価の引上げ効果をはるかに上回る客単価の減少が生じた。継続的にカウンター商材や冷凍食品、調理麺、総菜、調理パンなどの中食商材は好調に売れ、客単価を大きくけん引したものの、たばこの売上減を相殺するまでには至らなかった。

来店客数は前年同月比でプラスを計上しているが、これは多分に前年同月において台風21号と22号がそれぞれ別の週末にかけて日本を縦断する形で上陸した影響を受け大きなマイナスを示しており(全店マイナス2.4%、既存店マイナス4.9%)、この影響によるところが大きい。

商品構成別の売上高(既存店ベース)の動向を確認すると、淹れたてコーヒーなどのカウンター商材の堅調ぶりで全体をけん引する日配食品はプラス0.7%、菓子類やソフトドリンク、冷凍食品、アイスクリームなどの加工食はマイナス1.0%、たばこや雑誌などが含まれる非食品はマイナス3.9%となった。いずれも前年同月の前年同月比はマイナスを計上しており、その反動の影響があってなお加工食品と非食品がマイナスを示しているのを見るに、たばこ特需の反動が来店客のついで買いの上でも表れていることがうかがい知れる。

最近堅調さが続いていたサービスは今回月ではマイナス5.4%とマイナス値を計上。これもたばこ特需の反動の影響を受けたのだろう。

ここ数年来懸念されていた雑誌の売上の減退、集客力の縮小は継続中で、歩みを止めるようには見えない。もっとも最近では下落ぶりは小休止、あるいは底打ちの状況にあるようで、報告書の言及に雑誌の売上が著しく落ちたなどの文言は見られなくなった。

数年前まではコンビニの集客と客単価の主軸であった雑誌とたばこ。これらは時代の流れの中で、その勢いを確実に減じている。双方とも業界全体、商品そのものの特性や周辺環境の変化に伴う勢力の変化であり、今後復権の可能性も低い。それぞれ単独の動向を知りたいところだが、日本フランチャイズチェーン協会の月次レポートではそれを推し量ることはできない。ただし年次ベースなら、紙巻たばこは大手コンビニが発表しているアニュアルレポート、雑誌ならば「出版物販売額の実態」を通して概況を推測することはできる(【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる】)。

たばこは機会あるたびに税負担の上乗せが論議されている。健康志向による忌避圧力も勢いを増すばかりとなり、今後も縮退する方向性に変化は無い。ただし加熱式たばこが現時点ではその減少分を補っている雰囲気があり、今後の動向の見通しはつきにくい。

一方雑誌に関しては価値観の多様化や電子雑誌の進出、すき間時間の活用の仕方の変化を受け、やはり規模の縮小は避けられそうに無いが、コンビニにおける同じ印刷物として今件月次報告書では取り上げられることはまず無かった書籍に関して、一部チェーン店で新しい動きが生じている。

セブン-イレブンの街の本屋さんプロジェクト詳しくは【コンビニの出版物販売額をグラフ化してみる(前編:各社編)(2016年)(最新)】で説明しているが、スリーエフで書籍を中心としたミニ書店化形態が売上・集客の点で成果が出たことから、今後さらにそのスタイルの拡大が明言されている。またローソンでも1000店舗をめどに書籍中心の専用棚設置が計画されており、今後非食品項目に影響を及ぼす可能性が出てきた。

一時期は総撤退の気配すら見受けられたコンビニの雑誌群も、一部で戻し、再配置の気配もあり、コンビニ側も手探りの状態であることがうかがえる。駅の売店がコンビニ化(コンビニチェーンによる運営店舗の展開)するに伴い、鉄道利用者による雑誌へのアプローチの仕方も変化を遂げており、今後の動向に注目が集まっている。セブン-イレブンが継続的に「街の本屋さん」を自称し、ネット経由で書籍の調達をする受け皿を推進し続けているのも注目に値する。

ただし直近の各報告書ではこれらの好意的な成果報告のような続報は確認できず、目立った成果は出ていないようだ。また【セブンが雑誌の取り扱いをごりごり減らすという話】にもあるように、一部大手コンビニでは内部レイアウト刷新に併せ、雑誌の取り扱い(店内展示)をあからさまに減らす姿勢も見せている。

各種サービス(情報端末やカウンター経由)の提供や、カウンターで提供されるいれたてコーヒーをはじめとする新鮮味あふれる日配食品(昨今のセブン-イレブンやファミリーマート、ローソンにおけるドーナツもよい例)は順調に成長を続けているが、今なおあくなき探求は続けられている。昨今の報告書におけるコメントでも好調さに関する言及が常連化しているように、中食に関する需要はこの数年大きく増加しており、それが具体的な形で小売各方面に現れるようになっている。高齢化や少数世帯化による需要の増加、技術進歩などによる提供商品種類の多様化が相乗効果を示し、ポジティブな意味でのスパイラル現象を引き起こしている。時間や手間を簡略化し、より楽しい食生活を受給する対価としてコンビニやスーパーの食品を選択するという、新しいライフスタイルの浸透といえる。エンゲル係数の上昇は、この要因が大きい。

イレギュラー的要素によって生じた軟調な環境の中でも、コンビニは堅調な売上を維持できる軸の模索を多方面で進めている。関連他業界を巻き込む形で、さらには生活様式の変化まで起こしながら、今後も多様な動きが見られそうだ。例の某社におけるビールサーバーの試験導入も、その動きの一つだったのかもしれない。