餃子を看板に全国展開している中華料理チェーン店「餃子の王将」(以下、王将)と「大阪王将」。関西では有名な話だが、両店の間には熾烈なる“のれん戦争”があり、その戦火は今、関東地方にも広がってきているという。

まず動いたのは大阪王将。昨年秋に、大衆中華チェーンとしては異例の「代官山出店」で注目を浴び、この6月には恵比寿・広尾エリア、世田谷エリアに宅配専門店をオープンさせるなどの攻勢をかければ、対する王将も7月、関東に拠点工場を作り、今後5年以内に首都圏300店舗構想を発表。バチバチと燃えているのだ。

では、そもそもなぜこの両チェーンに“のれん戦争”が起こったのか? 外食産業に詳しい『Food Watch Japan』編集長の齋藤訓之(さとし)氏に経緯を聞いてみた。

「『餃子の王将』を運営する王将フードサービスは、1967年に創業後、京都を拠点として店舗展開していました。そんななか、大阪を拠点として出店したいという親族にのれん分けする形で生まれたのが現在の『大阪王将』。当初は同じ『餃子の王将』を名乗っていたのですが、現『大阪王将』がチェーン展開し京都にまで出店したのをきっかけに、名称をめぐって裁判に。結局『餃子の王将』『大阪王将』と店名を分けることで和解に至りました」

でも、出店地域などの約束事はのれん分け時に決められていなかったの?

「当時はまだ外食産業界でチェーン化がそれほど一般的でなく『店舗数を増やしすぎると倒産する』という考え方が常識だった時代です。大阪と京都でそれぞれ営業すれば問題はなく、お互いにナワバリ争いをするほど店舗数が増えるときが来るとは想定していなかったのでしょうね」

ちなみに、外食産業ではこの“のれん戦争”がけっこうあると聞くけど、ナワバリ争い以外の理由でもトラブルが起こるケースはあるのだろうか?

「のれん分け後に経営方針がズレたり、味が変わってしまうことが原因で争いになることもありますね」(齋藤氏)

そこで調べてみたところ、「ラーメン二郎」からのれん分けして運営していた「ラーメン二郎武蔵小杉店」にそうした過去があったようだ。“「ラーメン二郎」の看板を掲げる店舗は本店で修業を積んだ店長が常に厨房に立たなければならない”という経営方針を守らず破門となり、現在は「ラーメンこじろう 526」の名で関東にて複数の店舗を構えているそう。

さて、「王将」と「大阪王将」の話に戻すと、気になるのはこの両チェーンが現在、お互いをどう思っているのかということ。裁判では和解という形で落ち着いたようだが……。

早速「王将」広報に問い合わせてみると、

「他店と比較する記事を書かれてしまうと困りますので、お答えすることはできません

とシャットアウト。詳細を聞き出すことはできなかった。

対する「大阪王将」広報は、

「当ブランドは食品メーカーと外食産業のふたつの顔があるのですが、食品メーカーとしての目標は『味の素』さん。外食産業としての目標は『餃子の王将』さんと考えています。関東進出につきましては、現在関東で約40店舗であるところを、3年以内に100店舗まで拡大したいと考えています」

と、「王将」をはっきり意識していると明言。さらに、王将に負けじと、関東拡大計画も宣言される形となった!

“のれん戦争”の行方は興味深いが、われわれ消費者にとって重要なのは、どちらのほうがうまいのか? 安いのか? コスパがいいのか? といったところ。

『WEB 本の雑誌』で餃子の連載を持つ、定食評論家の今柊二(こん・とうじ)氏が、両店のオススメメニューと「これを食べたいならこっち」という住み分けを提案してくれた!

「王将と大阪王将の違いはひと言でいうと“王道”と”流行”。王将は瓶ビールを傾けつつ、昔ながらの中華を楽しみたいときに行くといい。大阪王将は流行に乗った革新的なメニューが多いです。具にポルチーニ茸を入れて、塩レモンダレで食べる餃子などは画期的でした。“今風”の中華レストランの雰囲気を求める人にはぴったりです」

なるほど。では看板である、餃子については?

「個人的な意見ですが、焼餃子に関しては王将のほうが好み。餃子は皮が命なのですが、王将の餃子の皮はやや厚めで『パリッ』と『モチッ』が同時に味わえるのが素晴らしい。大阪王将では、揚げ餃子(*地域限定メニュー)がオススメ。これをテーブルに置いてある『鉄らー油』につけて食べると、ビールによく合う。なかなか揚げ餃子を食べられるお店ってないですから、重宝しますよ

ほかにオススメは?

「大阪王将だと天津飯ですね。あの卵のとろとろ感をどうやって出しているのか不思議なくらい。?あん?と混ざり合うとまるで流動食です(笑)。するするっと入ってくるので、飲んだ後のシメにもピッタリ。王将ではぜひ焼そば(醤油)を食べてほしい。コストパフォーマンスが素晴らしく、400円ちょっとで満腹に。生ビールを頼んでも1000円以内なのは驚きですよね」

ライバルの両者が切磋琢磨し、より安く、よりおいしいメニューが生まれるなら“のれん戦争”も歓迎すべきところ?

(取材/黄 孟志)