タレント街歩き番組が増えるなか、鶴瓶の天才ぶりが光る『家族に乾杯』
 毎週月曜夜8時から放送中のNHK『鶴瓶の家族に乾杯』。司会の笑福亭鶴瓶がゲストとともに日本全国の地方へ赴いて土地の人々と触れ合う、笑いあり涙ありの王道バラエティです。そんな番組も毎年お盆の時期には海外へ出張。レギュラー放送とは違った楽しみがあるのですが、今年のニューカレドニアの旅は傑作でした(8月11日放送。NHKオンデマンドで8月25日まで有料試聴できます)。

◆言葉が通じなくても下ネタ一発で

 ゲストの竹内結子といつものように行動を共にしたのち二手に別れると、ここからが鶴瓶の独壇場。公園で休んでいた二組の男女に目星をつけた鶴瓶は彼らの間に座って話を始めます。お互いの関係やなれそめなどを訊ねていくうちに、その夫婦がフランスの球技・ペタンクをきっかけに結ばれたことが分かりました。

 そのとき、それまでは通訳を介して会話を進めていた鶴瓶のスイッチが切り替わります。夫婦・なれそめ・ペタンク。鶴瓶の中で、点と線がつながりました。片方の奥さんが「ペタンクをする彼は格好よかったのよ」と語ったそのそばから、手をパンパンと叩いて「ほんならペタンクペタンク仲良うなったんや」と正々堂々の下ネタで迎え撃ったのです。

 すると二組の夫婦、特に旦那が大ウケ。そこに通訳の解説は不要でした。それまでの会話の文脈と「パンパン」というエフェクトがあれば十分。こうなると完全に夫婦と鶴瓶が一体になります。その後の会話でもことあるごとに手を叩きながら「ペタンクペタンク」でみんな大笑い。

 下ネタでハートをがっちり掴まれたこの夫婦からは「公園に数多くいた人の中から私たちを選んでくれてありがとう」という、なんとも感動的なお礼が番組に寄せられました。

◆音とジェスチャーだけで笑わせる

 この限りなく手がかりの少ない状況から「ここだ」という取っ掛かりを見つけて笑いに変えてしまう鶴瓶の鋭さは、続く漁港での女子高生との交流でもいかんなく発揮されます。

 休み時間がもうすぐ終わろうかというのになかなか動こうとしない彼女たちの気だるさになかなか突破口を見いだせない鶴瓶でしたが、いくつか日本語を知っているというところから事態が動き出します。

「こんにちは」や「おはよう」といった挨拶や数の数え方を知っていると言われた鶴瓶は「数えてみぃ」と彼女たちにうながすのですが、どうやらあやふやな様子。しかしここでまた鶴瓶のスイッチがオン。「ちゃう! お風呂で数えるでしょ」と言って、女性っぽく体を洗う仕草をしながら、節をつけて♪い〜ち、に〜、さぁ〜ん、しぃ〜 とやりだしたのです。

 この姿に、気張ってアンニュイぶっていた女子高生の若さが一気にはじけます。少し首をしなだれ、おっぱいを隠すような格好をしながらソフトに体を洗う鶴瓶に笑いが止まりません。またその小唄のような節回しが、健康的でライトなエロであることのシグナルになっている。決して言葉でねじ伏せるように理解させるのではなく、絵と音で共有する笑いがそこにはありました。ふだん馴染みのある“お笑い”とは明らかに異なる色彩を放っていました。

 近年タレントが街歩きをする番組が急増しています。しかしその多くはタレントのペースに一般人を巻き込むことで笑いが生まれる“テレビ的”なものがほとんどです。また一般人の方も進んでそのステージに上がりたがるきらいがある。よくない傾向です。

 ニューカレドニアでの鶴瓶と現地の人たちが見せた屈託のない笑いは、そんな傾向に軽やかに抵抗するさわやかな涼風を運んでくれたような気がします。

<TEXT/沢渡風太>